036:輝かしいほどの【才能を持つ友人】 ‘幽助がさらわれた’。 その事実に戸惑いながらも、桑原とぼたんは蔵馬の元へと急いだ。 私立盟王高等学校へ――。 「蔵馬ァ――!! どこだァ――!?」 目的地に着くと、なりふり構わず校内へ入って行き、蔵馬の名を叫ぶ桑原。 「ちょいと桑ちゃ〜ん。思いっきり目立ってるよぉ〜」 周りの生徒の視線をもろに受けて居心地が悪いのか、泣きそうな声で訴えるぼたん。 「目立たなきゃ見つけてもらえないだろうが!」 桑原は焦っていた。 早く蔵馬に会って、飛影も見つけなければ浦飯の命が危ない。 走り回って適当な扉を乱暴に開けたところ、運よくそこに蔵馬がいた。 問題が解決したわけではないが、桑原は少しホッとした。 蔵馬がいれば、きっと何とかなる。 そんな風に感じたからなのかもしれない。 蔵馬に事情を説明し、どうやって飛影を見つけるのかを話し合う。 焦る桑原とぼたんは支離滅裂な発言が多かったが、やはり蔵馬だけは冷静だった。 霊界七つ道具を使用することに決まり、それをぼたんが取りに行くということで話はまとまった。 「集合場所はどうすんだよ?」 「そうだな。公園にしよう。ここからならそう時間はかからない」 「決まりだね!」 蔵馬の提案で、化学室を出る桑原とぼたん。 少し経ってから、蔵馬も出てきた。 「それじゃ、あたしは霊界七つ道具を持ってくるから先に公園行ってて!」 「気をつけて」 桑原達に見送られ、櫂に乗ったぼたんは勢いよく窓から出ていく。 「さて、俺達も急ぎましょうか」 ゆっくり行ってもぼたんより先に着くだろうが、早く辿り着くのに越したことはない。 2人は歩き出した。 周りがざわざわとしている。 男子生徒、女子生徒に関係なく、蔵馬と桑原を見てこそこそと囁き合っていた。 「南野くん今日もカッコいい! でも、隣の人…誰?」 「知らないよ〜。っていうか、制服違うし、何で他校の人がいるんだろうね」 「何か怖そうだな……。南野の知り合いなのか?」 「いやいや、そんなわけないって。あんなガラの悪そうな奴」 「あの人って不良じゃない? 南野くん大丈夫かなぁ……」 「ねぇ、先生に知らせた方がいいんじゃないの?」 不審者である桑原を怖がり、蔵馬を心配する声がほとんどだった。 学校のアイドル・南野秀一と他校の桑原和真が並んで歩いていれば、目立たないわけがない。 良くも悪くも対照的な二人の容姿は生徒から注目の的となっていた。 勝手に入ってきたのだから自業自得と言ってしまえばそれまでだが、実に居心地が悪い。 (はぁ〜〜〜、さっきは焦ってたから気にしなかったが、今ならぼたんの気持ちがわかるぜ) 心の内で深いため息を吐きながら、桑原はちらっと蔵馬の方を見た。 さっきからじろじろ見られているが、特に気にしていないようで平然としている。 桑原と違って悪口は言われていないので気にならないのかもしれない。 それにしても、飛影は見つかるだろうか。 見つからなかったらまずい。 ‘あの’浦飯があっさりさらわれたのだ。 想像がつかないが、強敵であることには違いないだろう。 敵はおそらく校門で会ったあの三人。 彼らは人間で強そうには見えなかったが、凄い能力を隠し持っているのかもしれない。 一刻も早く飛影を探し出して救出に向かわなければ、と自然と足が速くなった。 「ん?」 廊下を早足で進んでいた桑原は壁にある掲示物に目を止めた。 そこには‘新テスト(二年)上位五十名’と書かれており、生徒の名前が羅列されている。 ある一点をじーっと見つめる桑原。 「どうしました?」 桑原がついてきていないことに気づいた蔵馬が後ろを振り返った。 壁を見つめている桑原をみとめて近づいていく。 「これ……‘南野秀一’って、お前だよな?」 「そうですけど」 「頭いいだろうな〜とは思ってたが、ここまでとはなァ」 蔵馬の人間としての名前、南野秀一は一番右にある。 盟王高と言ったら有名な進学校だから桑原も名前は知っていた。 そこに蔵馬が通っていると知った時は、それなりに勉強ができる奴なのだろうと思ったし、実際彼は頭脳派だった。 「おめーってニガテな教科あんのか?」 「文系と理系を比べて、どちらかと言えば文系が苦手かな」 「この点数じゃ説得力ねェけどな」 桑原の返しに蔵馬は苦笑した。 十教科の合計点数996点。失点4点。 逆立ちしても桑原にはとることの出来ない成績だ。 (頭良し、顔良し、運動神経良し。ここまでだと怒る気も失せるぜ……) 感心するどころか、少々呆れてしまったほどである。 「‘天は二物を与えず’ってウソだったんだな」 「大げさだよ。……さあ、急ごう」 蔵馬に促されて、桑原も再び歩き出した。 (勉強教えてくれって頼んだら、教えてくれっかなー) 日々の宿題だけで苦労している桑原には、勉強を教えてくれる存在がいれば非常に助かる。 頭のいい人は教えるのが下手と言われているが、蔵馬はどうなのだろう。 教え方が上手いかは知る由もないが、機会があったらお願いしてみようと思った。 実際に桑原が蔵馬から受験勉強の面倒をみてもらうようになるのはもう少し先の話である。 END. 2014.02.09. Title List Story(YUHAKU de Title) Story(YUHAKU/TOI-R) Site Top 【しおりを挟む】 |
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