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ジェンガ!ジェンガ! 02


「えぇ!?ちょ、まっ・・・む、無理だから!」


いきなりの提案に動揺が隠せない。
ありえないよ、どうしてそっちの方向に話が行くの?だったら全員に奢った方が数倍マシなんだけど!


「あ、その反応は好きな人いるんだ?いいじゃんいいじゃん、負けなきゃいいんだよ」


反論は受付ないといわんばかりに、もうジェンガの準備に入っている皆。
ちょっと待って。もし負けたとしたら本当に皆の前で好きな人言うの?好きな人、隣にいるんですけど!
え、公開処刑じゃんかこんなの。やばいやばい、なんかもうジャンケンする体だし勝手に決定事項にされたっぽいぞ。


「ちょっと待ってよ、本当に無理だって!」
「よし、じゃあ10回勝負でいくよー!」
「10回って多くね?」
「人数多いしすぐ勝負つくだろ」


私の意見は完っ全に無視されてちょっと心が折れた。
こうなったら絶対勝ってみせる!勝ってご飯奢ってもらうんだから。そう意気込んでジャンケンをすると、何回かのあいこの末勝ったのは松川くん。


「えーっと、勝った人から左回りでやるって書いてある」
「へぇ。じゃあ俺は葵の次に取るって事だな」


右隣に座る岩ちゃんが座りなおしながらそう言った。
左回りだと順番は松川くん→及川くん→花巻くん→私→岩ちゃんになるわけか。

え?なんかもう順番から不公平感が漂ってる!及川花巻コンビの次ってやばそう・・・。凄いエグイ感じに攻めてきそうな二人なんですけど!


「よし、始めるぞー」


松川くんの合図でついに始まってしまったジェンガ。
1巡目だからか早く順番が回ってきて、私も難なく真ん中のブロックを抜いて上に積む。問題は2巡目から。及川くんに回った時点で既に多少のグラつきを見せていた。


「ん〜・・・ここかな?」


つん、つんと色々なブロックをつついて抜けそうなところを探していく。
動いたブロックを慎重に抜いて上に積む。


「おぉ、結構やべぇじゃん」


不安定なタワーを色々な角度で見ながら花巻くんが呟く。

倒れろ倒れろ倒れろ倒れろ。色々な意味でいっぱいいっぱいの私は心の中で必死にそう祈るが、それは通じなかったようで現実ではするりとブロックを抜いてしまう。

コン、と優しく上に置くとそれだけでグラッと揺れるタワー。揺れつつも倒れることなく、私の番に回ってきてしまった。

右手の人差し指を使って、なんとか抜けそうなブロックを探していくが、どれもキチッと嵌ってしまって中々緩んでいる箇所がない。皆が固唾をのんで見守るなか、一つのブロックに手を掛けたが案の定、抜けることなく倒れてしまった。


「はい、葵ちゃん一回負けだね。一々ジャンケンするの面倒だから倒した人から次行くべ」


再び積みあがったタワー。
さっき倒したのが悔しかったので、一番最初なのをいいことに一番下のブロックを抜いてやった。


「おい、一発目でそこ行くか?」


私の次の岩ちゃんが何ともいえない表情で見てくるが、彼もまた一番下の逆側のブロックを抜く。これで一番下は真ん中一本のみで支えているわけだから、かなり不安定になってしまった。


「二人とも攻めるねぇ」


楽しそうに及川くんが言う。

正直私はこの時、10回勝負だし真剣にやれば負けないと高をくくっていた。岩ちゃんと松川くんはこういう繊細さを求められるものは不得意だと思っていたし、私は逆に得意だったからだ。

でも、その考えは及川くんと花巻くん・・・二人のコンビネーションに覆される事になる。


ガシャン、と積み上げたタワーが音をたてて崩れた。


「あーらら。葵ちゃんこれで3回目だね」
「王手だな、王手」


最早ジェンガも終盤戦。
かつてない程真剣にやっているのにどうしても勝てない。


現在の成績としては私が3回でワースト。続いて2回で岩ちゃんと松川くん。花巻くんが1回で及川くんはなんと0回。
トップ2は予想通りだったが、他は予想外。

二人のえげつない攻撃がモロに私に降りかかってきて、私がそれを堪えれば岩ちゃんや松川くんが犠牲になる。といった構図が出来上がっていた。


「あと2回か」
「俺、今月ゲーム買って金ないわ。負けるとやべぇな」
「この時点で俺とマッキーは勝ち確定だね。それで・・・葵ちゃんがもし次倒したら負け確定」
「えっ!?嘘!」


まだギリギリ大丈夫かと思ってたのに、その言葉で一気に焦りが走る。


「岩ちゃんか松つんが倒したら、葵ちゃんと倒したやつで勝負だな」
「じゃあもう次の勝負3人でやればいいべ。俺らは勝ち抜けってことで」


よし!ナイスだ花巻くん!君たちが抜ければ私にも勝機はあるとみた。
あと2回、倒さなければいいんだもんね。


「はい、9回戦始めるよ」


緊張からか手汗が凄く、一度太腿で軽く擦る。
さっき倒した私からだ。

ふぅ、一度息を吐いて真ん中あたりのブロックを抜く。
ここで負けたら岩ちゃんに告白、ここで負けたら岩ちゃんに告白。絶対負けないようにそう言い聞かせて挑む。

戦局はすでに3巡目に入っていた。タイミング良く緩いブロックがあったので、難なくそれを引き抜きそっと上に置く。次の岩ちゃんは上の方に狙いを定めたらしく、一つずつブロックを触っていた。


「お、ここイケそう」


その言葉の通り、ブロックをゆっくりと抜いて上に置く。が、グラッと多少揺らいだことでその不安定さが露になった。


「うわっ結構やばそう」
「松川ファイトー」


傍観者となっている二人が輪の外から声を掛ける。
悠長に構えているのが何だか腹ただしいのは私だけだろうか。


「ん〜・・・どこがいいかな」


揺れる傾きをみて、揺れているのと逆のブロックをそっと触って確かめている松川くん。

正直、私は彼を侮っていたようだ。だって、揺れる向きを計算してるとは思わないじゃないか!普通にそこらへんのブロックに手を掛けると思っていたのに。
松川くんは中々に計算高いって部活のノートにメモっておこう、うん。

そんな事を考えている間に彼はクリアしたようで、安堵の息を吐いていた。えっ、ちょ・・・私の番だよね。

手を擦り合わせて緊張を解してからタワーに挑むように手を伸ばした。少し力を入れると揺らめくタワー。これはかなり慎重にいかないといけないみたいだ。でも、時間は設定されてないし、とことん丁寧にやったって誰も文句は言わないだろう。

慎重にブロックを触っていくと、難しそうだけど少しだけ動くものがあったのでそれをゆっくりと引き抜いていく。

半分ほど抜いたところで机に身を乗り出した。ちょっと行儀が悪いけど、片手しか使えないって中々に不便だ。再びブロックに手を掛けたその瞬間。


「ックシュン」


誰かのくしゃみが鳴り響き、部屋の中は静かだった分過剰に驚いてしまった。

その驚きは手にも伝わって、無残にもタワーは崩れ落ちた。


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お、終わらない・・・だと。
わちゃわちゃ感を出したくて書いてたら予想外に長くなりすぎました。
もう少し、お付き合いください。


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