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ジェンガ!ジェンガ! 03


「あらら、やっちゃったね」
「・・・嘘でしょ。っていうか、クシャミしたの誰!?え?無効にならないの?」


あのままいけば絶対勝ててたという確信があっただけに、動揺させた犯人が恨めしい。恨めしそうな目で周りを見渡し、犯人を探そうとしたが。


「俺だわ。悪ィな」


全然悪いと思っていなさそうな表情で言う花巻くんに、ガクリと力が抜ける。


「タイミングが悪かったな」
「だな。じゃあ罰ゲームは高宮か」


もう嫌だ、帰りたい・・・。近くにあったクッションを拝借して抱きかかえる。現実逃避するようにクッションに顔を埋めて視界をシャットダウンした。


「うおっ、泣くのか?」
「大丈夫か?」


うぅ・・・本当に泣いたら勘弁してくれるのかな。いや、今からのことを考えるともの凄く泣きたい気持ちではあるんだけど。
大丈夫か?なんて心配してくれる岩ちゃんの優しさが身にしみるよ。


「負けは負けだろ」
「勝負だからしょうがない。はい、じゃあ葵ちゃん発表どうぞ!」


それに比べてこの男たちは・・・っ!
岩ちゃんの言葉を借りるなら、このクソ川っ!って言ってやりたい。本当に。

どうしよう・・・どうすればいい?どうするべき??もういっその事言ってしまおうか。片思いを卒業するいい機会だと思って。それでもし振られたらこの二人に責任とってもらってケーキバイキングでも奢らせようかな。


「やっぱり言いづらいだろ」
「じゃあ絞り込み方式にするか?」


悶々と考えている間にも本人を差し置いて話はどんどん進んでいってしまう。
松川くんが妥協案のように出したそれに皆も賛成したみたいだけど、私は断然反対だし!黙秘権があるなら全力で行使したい。


「じゃあ・・・好きなヤツって3年?」


質問・・・というよりも尋問タイムに切り替わり、とりあえずこのくらいなら。と思って一つ頷いた。


「同じクラスにいる?」


これだったら男子20人くらい居るし問題ないよね。そう考えてから、花巻くんの質問にクッションに顔を埋めたまま顔色を悟られないように頷くだけで返事をする。


「それはバレー部ですかー?」


ちょっ、待て。その質問は反則すぎるでしょ主将!
同じクラスでバレー部って言ったら、そんなの岩ちゃんしかいないもん。
どう答えたものか言いあぐねていると、残念ながらその無言の時間を肯定と捉えられてしまったようだ。


「はい、お察しお察し」
「帰るべー。岩ちゃん、また明日」
「じゃーな」


急な展開に思わずクッションから顔を上げると、3人の後姿がドアが閉められると同時に見えなくなった。


「え?」


何?まさかの二人きり?今更空気読んで出て行ったって事?
急な展開に頭が付いていかなくて一人で焦っていると、


「・・・はぁ、あいつら」


隣から聞こえた声。聞き取れるかどうかの微かな声量だったけれど、それすらもビクッと過剰反応してしまう。

おそるおそる岩ちゃんの方を見るが、さっきから動いてないせいで自分が思っていたよりもかなり近かったので、逃げるようにズルッとお尻を動かして距離をとった。


「っ、」


瞬間。逃がさないとばかりに腕を掴んで引き寄せられ、胸の中に抱かれる。
半ば強引にその温もりを与えられることになって、状況を把握する事が出来なくて動けずにいた。


「なぁ・・・」


耳元で囁くように出す声は、岩ちゃんじゃないみたいで。心臓だけがバクバクと早鐘を刻んでいる。


「さっきの・・・都合よく取ってもいいんか?」


さっきの、とは及川くんがした最後の質問であることは間違いないだろう。
だけどこの後に及んでもまだ言う勇気が出ないチキンな私は、瞬きを繰り返しながら視線を彷徨わせることしか出来ない。

岩ちゃんは待っていてくれているのか、しばらく無言の時間が続く。
シンとした部屋に聞こえるのは外を走る車の音だけ。
緊張のせいで浅くなる呼吸を何度かくりかえしながらも、三年間の想いに決着を付けようと意を決した。

ごくん、と息を飲み込んでから発した肯定の言葉は自分で思っていたよりもとても小さくて。それでもお互いの呼吸音さえ聞こえそうな距離にいる岩ちゃんにはちゃんと伝わったらしく、抱き締める腕に力が入った。


「俺もずっと葵の事が好きだ」
「っ、嘘!?」


予想だにしていなかった岩ちゃんの言葉にびっくりして、思わず彼から距離をとる。
二人きりになってから初めて彼の顔を、目を見た。


「嘘じゃねーよ。あいつらの葵への罰ゲームのふっかけ方だって俺の事煽ってたんだぜ」


ま、葵の好きなやつは想定外だったみたいだけどな。

そう言って少し照れたように笑う彼の顔を見て、やっと実感が湧いてきた。私は岩ちゃんが好きで、岩ちゃんも私の事をその・・・好きで居てくれてるんだって。自覚してしまうと嬉しさが溢れてきて緩む顔が抑えられない。

岩ちゃんの手が私の頭の上に置かれて、そのまま優しく髪を梳くように撫でられる。今までには無かった甘い空気に恥ずかしくも嬉しくなったその時。彼が私の後ろに視線を移して、その顔を険しいものへと変える。

何かと思って私もそちらを見やるがそこにはドアしかなく、首を傾げた。


「チッ、あいつら」


おもむろに立上り大股でドアまでいく岩ちゃんの背中を不思議に思いながらも見つめていると、何故かドアを思いっきり開け放った。


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ちょっと短めですが区切ります。
いや、ここで終わるはずだったんですが・・・もうちょっと続きそうなので。


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