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ジェンガ!ジェンガ! 01


月曜日のお昼休み、スマホを確認すると何通かのメッセージが来ていた。

《男バレ3年専用部屋!》と表示されているトークルームには部長の及川くんからで、その内容は実に彼らしいものだった。


《みんな今日ヒマ?ヒマだよね!学校終わったら岩ちゃん宅に集合〜(^o^)/》


一体今度は何を思いついたのか。及川くんの急な発案は特に珍しい事でもないけれど、岩ちゃんの家っていうのは初めてだな。
皆も同じことを思っているのか、続々とメッセージが続いている。
思わずクスッと笑ってしまったのは最後の岩ちゃんの一言。


《何でいきなり俺ん家なんだよ!クソ川説明しろ!》


と、まるで今にも声が聞こえて来そうなものだった。
っていうかコレ私も含まれてるのかな?一応マネージャーだし、月曜日の今日は部活もオフだ。岩ちゃんの家とか行ったことないけど…かなり興味ある!

1年の時から片思いし続けて今に至るけど、ほぼ部活メインの毎日。家にお邪魔する機会なんて無かったし、好きな人の部屋とかちょっと見てみたい。なんて思うのは変かな。


《私も行っていいの?》


メッセージを送ると、続々と既読が増えていく。少し期待しながら返事をまっていると、スタンプと一緒に返ってきた。


《もちろんだよ!》
《葵ちゃんは岩ちゃんが逃げないように捕まえててね!》


皆も乗り気になってきたのか、参加のメッセージが入ってくる。
その後も次々入ってくるメッセージやスタンプに目を通していると、予鈴がなったので腰をあげた。

既に皆で岩ちゃんをからかう場になっているトークルームを閉じて、自分の教室である5組へと戻ると、中へ入った途端に自席に座ってた岩ちゃんがこちらを向いて目があった。ドキッとしたのも束の間、ギロリと睨まれて背筋が冷える。

及川くんじゃあるまいし、岩ちゃんに睨まれる事なんて普段はない。邪な心があるだけに、その睨みが心に刺さる。さっきの事怒ってるのかな…安易に参加するとか言わなきゃよかったかな。なんて、そんな風にぐるぐると考えてると、彼は一つ溜息を吐いて視線を逸らしてしまった。


その態度に焦って慌てて謝ろうとしたが丁度よく先生が来てしまい、それも出来ずに終わってしまう。怒らせるくらいなら行くなんて言わなきゃ良かったかも。

そんな後悔を抱えたまま、遂にHRまでもが終わってしまった。皆が続々と帰り支度をする中、意気込んで岩ちゃんのもとへと向かう。


「岩ちゃん…あの、さっきはごめんね。やっぱり私、行かない方がいい?」
「あー…もう決まっちまったし仕様がねぇよ。今更お前が来ないとか言うとアイツうるせえし」
「そっか、ありがとう」


やや煮え切らない返事だったけど、許可をもらえてようやく胸のつかえがとれた私は、その後迎えにきた及川くん達と一緒に岩ちゃんのお家に向かう。

結局花巻くんと松川くんも参加するらしく、3年のレギュラーが揃った。及川くんの収集力、恐るべし。だな。


「急だし片付けてねぇから散らかってるぞ」
「大丈夫大丈夫!ちょっとのスペースがあれば出来るし」
「そういえば何すんだ?何も聞いてねぇけど」
「及川だし、どーせロクでもない事だよ」
「ちょ、マッキー酷くない?」


さっきから何をするのか皆が及川くんに聞いていたけど、話を逸らしたりかわしたりと結局詳細は聞けずじまいのまま岩ちゃんのお家に着いてしまった。


「おじゃましまーす」


緊張のせいでやや小声になってしまったが仕方ない。
だって男の子の家に遊びに行くのって小学生くらいが最後だったような気がするし、それも皆でリビングでって感じだから、部屋に行くのなんて実質初めてのようなものだ。

ドキドキしながらも皆の後に続いて部屋の中に入ると、岩ちゃんらしいシンプルな部屋だった。散らかってるといっても雑誌や服が床に置いてある程度で、それらをしまうと綺麗なものだ。


「はい、じゃあこのテーブルを囲むように座ってー」


慣れた動作で立てかけてあった折りたたみ式のテーブルを広げる及川くん。

言われた通り、真ん中に置かれたそれを囲んで腰を下ろすが、そんなに大きいものでもないので偶然にも隣に座った岩ちゃんとの距離がかなり近く、右半身がやけに緊張して固まってしまった。


「これ、この前姉ちゃんに貸してもらったからやろうよ!」


ドン、とテーブルの真ん中に置かれたのは木のかたまり・・・と思いきや。


「ジェンガじゃねーか。やっぱロクでも無かったわ・・・」


はぁ・・・と及川くんと私以外の三人が落胆を見せる。


「いーじゃんいーじゃん!ジェンガ楽しいって。皆知ってるだけでやった事なくない?」
「・・・まぁ、確かに」
「私、やった事無い!楽しそうだね」


綺麗に重なった棒を見て、それがジェンガだと分かるとちょっとテンションが上がった。UNOとかはやったことあるけど、ジェンガは初めて。


「じゃあルール説明するよ!え〜っと・・・ブロックを抜いて上に乗せるだけだけど、片手しか使っちゃいけません。上に乗せてから10秒間はそのプレイヤーが責任も持ちます、だって。一度触っても無理そうなら元に戻していいってさ」


へぇ。片手しか使っちゃいけないんだ。とりあえず抜いて上に積んでいけばいいってことだね、よし。


「普通にやるだけじゃつまんねぇから罰ゲーム科せようぜ」
「花巻、余計な事いうなって!」


松川くんが止めるけど、時既に遅し。及川くんの目が輝きを増した・・・ような気がした。


「うんうん、マッキー流石だね!ジェンガは一人負けだし・・・どうしようかな」
「何回勝負か決めて、負けたやつがメシ奢るとかでいいんじゃねえ?」


面倒臭そうに岩ちゃんがそう言うと、皆も頷く。


「駅前の食べ放題の店にしよーぜ。金額決まってた方がいいだろ」
「ま、確かに」


そうだね。食べ盛りの皆だもんね。ファミレスとかにしたって、満腹になるまで食べたら負けた人破産しそうだし。1人が4人に奢るんだったら、それが一番いい案かもしれない。


「でも・・・高宮どうすんだ?俺、女に奢らせるのはちょっと・・・」


松川くんが困ったように私を見ると、皆の視線も私へと向いた。


「私もそれで大丈夫だよ。っていうか、負けないし!」


グッと握りこぶしを作って訴えるけど、皆は浮かばない表情のまま。
それは暗にダメだと言っているようなもので、やはり女子に奢られるというのは気分的にいいものでは無いらしい。


「え〜と、じゃあ葵ちゃんだけ別にするとして」
「もう何でもいいべ。秘密暴露とかさ」
「あ!それいい!松つんナイス」


何だろう・・・私の方をみる及川くんのこの顔、嫌な予感しかしないんだけど。


「じゃあ、葵ちゃんは好きな人暴露って事にしよう」

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予想外に長くなってしまったので区切ります・・・


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