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“絶対徹ちゃんの彼女になる”

そう決意してからは、事あるごとに徹ちゃんに会いに行った。・・・と、言いたいところだけど、鬱陶しがられたら元も子もないのでなるべく自重している。
昼休みにバレー部の皆と食べているところに時々お邪魔してお話したり。バレー部は毎日見学に行ったけど、邪魔にならないように話しかけたりはしなかったし、帰りも迷惑にならないように終わる直前に一人で帰っていた。

徹ちゃんの都合も考えずに纏わりついていたんじゃ、あの頃と何ら変わりない。ただでさえ2つ歳が離れてるんだから、子供っぽいとか思われたくないし。自分から話しかけに行くのはなるべく最低限に留めて、でも徹ちゃんに気にかけてもらえるように視界に入るようにしていた。

そんな日が続くと、次第にバレー部の皆の顔と名前が一致するようになって。はじめくんを筆頭に3年の先輩達が私の事を応援してくれるようになって。段々追い風になってきた時に、暗雲は突如訪れる。


「高宮さんっている?」


突然教室に来た名前も知らない女の・・・多分先輩。特に思い当たる用件も無かったので、不思議に思いながらも先輩の方に足を向けた。その時、不意に腕を掴まれて必然的に足が止まる。


「どした?国見くん」
「いや、及川さん絡みかと思って・・・大丈夫なのか?」


心配そうにこちらを見てくる国見くんに笑顔を返した。なるほど、徹ちゃん関係ね。


「大丈夫だよ。ありがと」


徹ちゃん関係なら尚更負けるわけにはいかない。

でも複数人で来られたり実力行使されても嫌だから、いざという時の為にワンタッチではじめくんに電話が掛けれるようにスマホを操作する。こういう時は徹ちゃんよりはじめくんだよね。はじめくんに睨まれると割りと本気で怖いし。

脳内でそれを想像するだけで何となく背筋が冷える。・・・うん、目の前の先輩よりもはじめくんの方が怖いや。そう思ったら何てこと無い気がしてきて、先輩の目の前に立った。


「私が高宮ですけど、何ですか?」
「ちょっとコッチに来てもらってもいい?」


私の警戒を酌んでか、ふわっと柔らかく微笑んで敵意を全く見せない先輩。


「ここでいっか。急にごめんね?」


先輩の後を着いていくと、人気のない階段の踊り場へ案内された。
見る限りでは先輩一人みたいだし、複数人でどうこうって事はない・・・かな。


「何か、お節介かとは思ったんだけど・・・聞いちゃったからさ」
「何をですか?」


特に自分が誰なのか名乗ったりはせずにいきなり本題に入る先輩。とりあえず一定の距離を保ちながらその続きを待った。


「私、及川くんと同じクラスなんだけど。最近その・・・高宮さんの名前を聞いてね。クラスの男子と話してるのが偶々耳に入ってきて」
「・・・はぁ」
「正直困ってるって。高宮さんがいつも纏わり付いてきて迷惑だって・・・でも、及川くん女の子にはそんな事直接言えないしどうしよう。って言ってたの」


ほら、彼って優しいから。そう節目がちに語る先輩を見て、頭にズーンと石が降ってきたようなショックを受けた。・・・わけでは勿論無く、そんな表情をワザと浮かべただけ。

内心ではこうだ。嘘くさっ。
こんな茶番みたいな先輩の戯言を聞かされるくらいだったら、それこそ複数の先輩達に囲まれて「お前調子ノってんなよ」「及川くんに近づくな」くらいのパンチがあったほうが良かったかもしれない。


「そ、そうなんですか」
「そうなの!だから、ねっ」


ねっ、じゃないわ。大体この先輩は知らないだろうけど、私はちゃんと徹ちゃんに告白している。そんな返事待ち状態の私なんだから、嫌だったらまず告白を断ってくると思うんだよね。
それでもまだ私が纏わり付いてたら・・・困らせる可能性だってあるけど。

とりあえず今の状況から判断すると、先輩の言ってる事はほぼ嘘だと思う。教室で私の名前が聞こえてきた、くらいは本当なのかもしれないけど。
う〜ん・・・どうしようか。相手は先輩だし、変に出るとある事無い事広められそうで嫌だな。


「でも私、皆がバレーしてるところ見るの好きですし。これからも見学したいです」


何でこの先輩にお伺い立てなきゃいけないんだとも思うけど・・・。とりあえず事実を織り交ぜて返答した。つまり、徹ちゃんに会わないようにするつもりは無いって事。


「えー?そんなにバレー好きならやればいいじゃない。女バレの主将知ってるし、紹介してあげよっか?」


・・・どうしてそうなるんだ。どこまでも身勝手な先輩に頭を抱えたくなった。


「いや・・・私バレー出来ないので」
「そんなの分からないって!練習すれば上手くなるよきっと。頑張れっ」


グッと両手で拳を作って訳の分からない応援をしてくる先輩。
話が違う方向に逸れているのを気付いているのかな・・・。兎に角、この先輩は私と徹ちゃんを接近させたくないんだろう。いつまでもこんな茶番に付き合うのも面倒だし、こうなったら直球勝負だ。


「あの、そうじゃなくて。怪我でもうバレーが出来ないんですよ。だから私は応援する事しか出来ないので、やめるつもりはありません。及川先輩が迷惑してるって言う話は本人から直接聞きます」
「何、それ。どういう事?」


先輩に向かって言い切ったのに、答えが返ってきたのは第三の闖入者。
背後から掛かるその声にまさかとは思たけれど、振り向いて目に入ってきたのは今まさに話題の中心人物だった彼。


「・・・徹ちゃん」


一番知られたくなかった人に聞かれてしまった―――。


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どうでもいい先輩とどうでもいいやりとりごめんなさい。
もうちょっと引き伸ばそうかなーって思ってたんですけど
この話そんなに伸ばしても・・・って事で、王道にて。

本当は冒頭で及川抜きの3年ズとLINEで相談室とか色々書いてたんだけど
わちゃわちゃさせてたら本当に長くなったんで止めました。。
次でラストです。


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