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「う〜・・・全然勝てなかった」

「だから俺、負けないよって言ったじゃん」


あれから色々な勝負を挑んだけど、悉く惨敗。最後の方なんかは面白がって先輩達まで応援してくれたけど、勝つことは出来なかった。

ほぼ遊びのようなものだったけど、久しぶりにやるバレー・・・それも好きな人とやっていたから凄く楽しくて、もっとやりたかったけど。思いのほか遅い時間になっていたので渋々切り上げて、こうして徹ちゃんと2人で帰っている。
ちなみにはじめくんも誘ったけど、皆とラーメンを食べに行くらしく断られた。久しぶりに3人で帰れると思ったのに・・・ちょっと残念だ。


「あーあ。折角徹ちゃんと付き合えるチャンスだったのになぁ」
「さっきからソレ言ってるけど、本気なの?」


そう聞いてくる徹ちゃんに、思わず足がピタッと止まる。彼の方を振り向くと、どうやら本気で疑問に思っているらしく不思議そうな顔をしていた。
え?ちょっと待ってよ。アレ全部冗談とか思われてるの?あんなに猛プッシュしてたのに・・・。

いや、でも待てよ。思い返してみれば私告白って・・・してない。なんたる事だ!それは伝わらなくて当たり前だよ!
再会してからというもの、喜んで舞い上がってしまって己がままに突き進んでしまっていた事に気付く。気持ちも伝えないままに、勝負を吹っかけて勝ったら付き合ってくれなんて・・・何かコイツまた変なこと言ってるぞ。くらいにしか思われてないんだ。


「・・・本気だよ」


この想いが冗談なんかじゃないって伝えなきゃいけない。

足を止めたまま、きちんと徹ちゃんに向き合って表情を引き締める。小さい頃からずっと心に秘めてきたこの思いが伝わるように。


「徹ちゃんのことが好き。小さい時からずっと好きだった」
「・・・うん」
「今日会えて、色々な徹ちゃん見れて・・・もっと好きになった。だから、あの・・・私の事ちゃんと女として見て欲しい、です」


好きな人を目の前にして告白をするってこんなにも緊張するんだ。小さい頃の軽く口に出せる好き、じゃなくて。想いの籠った好き、を伝えるのは人生で初めて。
さっきまでは普通だったのに、今は彼に聞こえるんじゃないかっていうくらい心臓がドキドキしていて呼吸も浅くなる。本当はもっと伝えたい事があったのに上手く言葉に出来なくて、もどかしかった。


「ふはっ」


それでも自分なりに精一杯の言葉を伝えたつもりだった・・・のに。口許を押さえて吹き出すように笑い出した徹ちゃんを呆然と見る。

何か今笑うとこあった?私、何か変だった!?


「ははっ・・・ごめん。何か昔の事思い出しちゃって」
「え?」
「小学生の頃もこうして好きって良く言ってくれたよね」


懐かしい。なんて言って笑う徹ちゃん。そんな彼とは逆に、私の中にモヤッとした感情が渦巻いた。
必死で想いを伝えたのに、まさか小学生の頃と比較されて笑われるなんて。それってつまりマトモに取り合ってないって事でしょ。確かにあの頃から好きだったけど、小学生の時の気持ちと今では全然違うのに。
やっぱり全く脈なしなんだろうか・・・。いつまで経っても近所の女の子から抜け出せないのかな。そう思ったら胸が熱くなって、込み上げてきた涙を唇を噛んでグッと我慢した。


「葵?」


そんな私に気がついたのか、背中を折り曲げて覗き込んで見ようとする彼から、顔を見られないように逸らした。


「泣いたらちゅーしちゃうぞ」
「えっ」


予想外の言葉に驚いて、逸らしていた視線を徹ちゃんに合わせると当の本人は「あ、泣いてないか」なんて言って悪戯な笑みを浮かべていた。

しまった。折角キスしてもらえるかもしれなかったのに、驚きすぎて涙が引っ込んでしまった。あー、バカ。私のバカ。
ペチペチと自分の頬を軽く叩いていると、頭の上にポスンと乗せられた大きな手。


「笑ってごめん。昔から変わらない事が嬉しかったから」
「・・・うん」
「ちゃんと考えるよ。今日はまだ会ったばかりだし、ね」


確かに徹ちゃんの言うとおり、今日数年ぶりに私達は会ったわけで。久しぶりに昔良く遊んであげていた女の子と再会して、急にこんな風に言われても今日の今日で何か変わるわけじゃないだろう。それでも、ちゃんと考えてくれるって言ってくれたのが嬉しかった。

髪を梳くように緩く撫でてから離れていったその手を視線で追いながら、改めて決意する。

絶対、徹ちゃんの彼女になってみせる。


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及川さんのユルさを出そうと思ったら、チャラさの方が出てきてしまった。
ちょい短いですが区切ります。


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