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小さい頃から徹ちゃんのバレーを見ていた影響で、引っ越してから自分も始めた。今までは見ていただけだったバレーは、実際にやってみると難しくて・・・でも凄く楽しくて、すぐにのめり込んだ。

プレーするからには花形のポジションに憧れたけど、残念ながら身長には恵まれずにリベロになる。それでもボールをコートに落としてはいけないバレーにおいて、花形はリベロなのかもしれない。そう思ってからは更に練習に励むようになって。

地味かもしれないけど、難しいボールを拾えた時やサーブやスパイクを上手くあげれた時の感動はひとしおで、リベロというポジションにやりがいを感じていたし、自分に合っているとも思った。

練習すればする程上手くなるのが分かって、楽しくて楽しくて・・・自主練も積極的にした。それが、いけなかったのかもしれない。

成長期に無理しすぎたせいか、私の膝には思っていた以上の負荷がかかっていたらしく中学最後の夏大直前に事は起こる。練習中に激しい痛みに襲われて病院にいくと、そこでドクターストップが掛かって結局大会に出る事は叶わずに、チームも負けてしまった。
診断結果は最悪なもので、日常生活に支障はないものの選手として本格的にやるのは控えたほうが良いと言われ、受け入れるまでにかなりの時間を要した。その間は喪失感に襲われてバレーを見るのも嫌だったけど、半年以上たってようやく元に戻りつつある。

そんな状況を知る由もない彼等の問いかけに、笑顔を貼り付けたまま答えた。


「でも、色々あって。・・・中学で辞めちゃった」


変な雰囲気にならないように軽く言い放つと、何ともいえないような顔をした2人。
同じような表情を作る二人に内心苦笑する。


「で、何かするの?降りてきちゃって大丈夫?」


あまりこの話を追求されても困るのでなるべく自然に話しを逸らした。
現役の2人には中々にして話し辛い内容だし、変に気遣われても嫌だから。


「いや、バレー出来るんなら一緒にどうかと思って。上で見てても暇でしょ?」
「嘘っ!?本当に?やるやるっ、やりたい!」


思っても見なかったお誘いに過剰に反応すると、またしてもはじめくんの笑う声が聞こえた。
その笑いが言わんとすることが分かったので軽く睨むが堪える様子は無いのが悔しい。けど、こんな美味しいチャンスを逃す手は無い。


「ねぇ、サーブレシーブやりたいっ!徹ちゃんサーブ打ってよ」
「えっ・・・それはいくら何でも」
「やめとけ葵。吹っ飛ぶぞ」
「えー」


2人から拒否を示されて思わず口が尖る。勢いに押されて後ろに転がることはあっても、さすがに吹っ飛びはしないと思う。まぁ、転がろうが吹っ飛ぼうがボールは意地でも上げるけどさ。

でもそういう風に言うって事は、やっぱり徹ちゃんはサーブに自信持ってるんだな。私なんかに返されるなんて微塵も思ってないだろう。見るだけだと回転とかがイマイチ分からなかったから絶対とは言い切れないけど、何本か受けたらちゃんと上げれそうなんだけどなぁ。

徹ちゃんの本気のサーブ、受けてみたい・・・。あっ、そうだ!いいこと思いついた。


「じゃあさっ、徹ちゃんのサーブ、ちゃんとレシーブ出来たら私と付き合って!」
「また突拍子もない事言い出して・・・おい、どーすんだ?」
「んー・・・、別にいいけど」
「いいの?やったぁ!」


思わず手を上げて喜ぶ。
ナイスアイディアだよ私!
だって、手加減したサーブを打ってくれたらレシーブ出来る自信あるし。そうしたら付き合ってくれるでしょ?本気サーブ打たれたら、絶対付き合いたくないって言われてるみたいで若干悲しいけど・・・。でも本気サーブをレシーブしてみたい私からすればメリットあるし。

足取り軽く逆コートまでいって、センター後ろに位置取りする。


「いつでもいいよー!」


徹ちゃんにそう合図してレシーブの構えをとった。

この感覚・・・久しぶり。湧き上がる高揚感に思わず口許も緩む。


「無理なら避けなよー?」


心配そうに言う徹ちゃんに向かって一つ頷いて、その手の中にあるボールに集中する。コース・回転・スピード・・・全てを見極めるために。

ボールの感触を確かめるように手の中で回してから、軽い助走をつけて放たれたサーブ。もの凄いスピードで向かってくるそれに、一瞬でコースを判断して足を動かそうとした時だった。
ビィン、と白帯にぶつかって勢いを殺されたボールは、コースを変えてネット際の方へと落ちていく。


「っ、」


後ろ寄りに居た私にそれは致命的で。腕を伸ばして飛び込むけれど、無常にも目の前にボールは転がっていった。


「うぅ・・・酷い」


打ちひしがれながらドンッと床を叩いて悔しがっていると、後ろから国見くんの声がかかる。


「ちょっ、スカートで飛び込むなって。パンツ見えたよ」
「うっさい。国見くんのえっち!」
「は?」


スカートを押さえながら立ち上がって、国見くんに向かってそう言い放つと徹ちゃんの方へ足を向ける。周りの先輩達が面白がって国見えっちー、なんて言ってからかっていたけど今はそれどころじゃない。


「徹ちゃん、酷いよ」


ズンズンと彼の前まで行ってボールを渡すけど、当の本人は首を捻っている。そうやって惚けた顔して!・・・そんなところもカッコいいけど、って違う!


「ワザと狙ったでしょ?もう一本お願い!」


持っていたボールを強引に渡して、人差し指を立てる。きっと徹ちゃんは失敗してもいいつもりで狙ったんだと思う。サーブミスしたらどうっていう約束はしていなかったから。
それでも、狙って白帯にぶつけるなんて流石っ!って普段なら手を叩いて褒めるところだけど、今はそうはいかない。不完全燃焼すぎて納得いかないよ。


「ダーメ。あの一回でおしまい」
「うぅ・・・はじめくん・・・」
「そんな目で見られても・・・。サーブ以外で勝負すればいいんじゃね?」
「っ、成る程!」


サーブレシーブだけがバレーじゃないもんね!色々勝負したら、何か一つは勝てるかもしれない。もちろん私が勝ったら付き合ってもらうっていう条件は絶対付けさせてもらおう。
バッと徹ちゃんの方に目を向けると、嫌がっているかと思いきや笑顔で。


「俺は負けないよ?」


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及川さんがチャラくない〜!!
ヒロインがぶっ飛びすぎててどうしても。。


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