HQ | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




嘘から始めた真実 07

「だからココにコレを当てはめて・・・・」
「あー!わかったー!」
「ねぇねぇこれはー?」


そんな声があちらこちらであがる男子バレー部の部室。ただいまの時刻は朝の8時半だ。
夏休みなのに朝も早くから勉強に励むようになって今日で5回目。

合宿から帰って来た日、何となく私が心配した通り殆どのメンバーがまったく宿題に手を付けていないことが判明。3年もさすがに宿題はやり出してはいたが受験勉強までは手が回っていないらしく、みんなが焦った表情を浮かべたのだ。

研磨くんは計画的にやってたみたいだけどね。で、お前はって聞かれたので宿題は終わってるし、受験対策もかなり進んでいると言った結果


「よし!高宮、いや高宮先生。俺らを助けてくれ」


そんなテッちゃんの思い付き発言から、みんなの勉強を見るという家庭教師ポジションを与えられたのだ。若干…いや、かなりめんどくさいと思ったが、ふと引き受けたら研磨くんと会えることに気づき了承してしまった。恋って怖い。
とくに昨日まで研磨くん不足していた私にとっては相当魅力的に聞こえたのだろう。普段なら絶対引き受けないけど。

しかも練習後ではみんな疲れて絶対やらないからと、練習前の朝っぱらからやることになったのだ。何が悲しくて夏休みの朝から学校に行かなくちゃいけないのか。朝の方が私も夏季講習とかと重ならなくていいんだけどね。

予定がない日はそのまま部活を見学したり、少しボール拾いやドリンク作りなどをお手伝いしたおかげでちょっと怖かった大きな後輩たちにも慣れた。なにやら何人かに懐かれてるような気もするし。

主に大型犬と、大型猫。大型犬こと犬岡君はまだその場で飛び跳ねてるだけだからいいが、大型猫ことリエーフ君は飛びかかって来るからちょっと厄介。避ければよいのだが、生憎並みの運動神経しか持ち合わせていないので毎回は不可能。避け損ねて潰れかけているところを誰かに救出してもらうって日々が続いていたりする。

今もすっかりやる気をなくしたところをテッちゃんヤッくんコンビに怒られ、私の後ろまで逃げてきたところだ。


「葵さん助けて〜」


そういって私の背中に抱き着くが、大きなリエーフ君が隠れきれるわけもなく。
容赦なくヤッくんが私から引きはがす。


「お前なー、前から言ってるが人の彼女にすぐ抱き付くなよ」
「だって葵さんチョー抱き心地いいんすよー!」


そういって再度抱き付こうとしたリエーフ君から逃げるように体をそらすと、隣の研磨くんに体当たりしてしまった。


「ごめん研磨くん!大丈夫?」


慌てて謝る私に、研磨くんは「別に…」とだけ返し勉強を再開してしまった。なんだか最近元気ない気がする…。
メールはいつも通りしてるし、たまに電話もする。話は主にゲームネタだけどね。

体調でも悪いのか気になって前に聞いてみたが「なんともない」と返されてしまった。疲れるの嫌だって言ってるくらいだし、部活漬けでお疲れなのかな。
黙々と勉強に励む研磨くんにこれ以上の追及はできず。また2人きりになれたら改めて聞いてみようと家庭教師の任務を再開した。




その日以降の何度か勉強会が行われたが、中々2人きりになれる機会が無いままついに夏休み最終日。この日になっても宿題が終わらないメンバーが発生し、先生のお達しで今日は部活無しの勉強会になった。

既に宿題の終わってる1.2年メンバーが終わっていない子を教え、3年生は私が受験対策をすることにした。研磨くんは早い段階で終わっていたので主に教える係を前からしてくれている。特に問題児のリエーフ君につきっきりでやっているような気がするけど…。
「葵さんがいいー」と喚くリエーフ君に「トス上げないよ?」という脅しをかけて勉強させる研磨くんが少し怖いです。

そんなやり取りを横目に、3年生たちには私が過去問でミニテストを作って来たので、ひたすら解いてもらって苦手分野を割り出している。
それぞれやっぱりミスしやすい問題の文章とかがあって、それを知ることも大切なのだ。


「ホント高宮様々だわ〜マジ助かる」


自分の答案用紙を見ながらしみじみ言うテッちゃんに貸しだからと返す。実際には人の間違いを解説したりしているとかなり自分の勉強になっているのだが、恩は売っておこう。


「けど、ほんと悪いな。あんまり研磨とのんびりできなかっただろ?」
「確かに…殆どバレー部に費やしてしまったな」


せっかくの休みなのにと気にしてくれるのは、ヤッくんと海くんくらいだ。
2人でのんびりできなかったことは実はかなり気にしてはいるが、全く会えない日が続くよりだいぶマシ。研磨くんがどう思っているかはさっぱりわからないし…。むしろ2人で会う約束をしたことないし。ゲームできなかったって思ってるくらいかな?


「まぁなんだかんだ続いてるみたいで良かったよ」
「で、お前らちゃんとヤルことヤッてんの?」
「なっっっ/////ちょっと!!」


せっかく母親目線で言ったヤッくんの温かみをぶち壊すテッちゃんの野蛮発言。予想もしていなかった問いに対応できるわけもなく、素直に真っ赤な顔をする私を満足そうに笑うテッちゃん。


「おーおー可愛い反応〜」
「うるさい!やめてよね!オヤジか!!」


まるで酔っぱらいのオヤジのようにグリグリ頭を撫で回して絡んでくるテッちゃんの手を払いのけ、ヤッくんや海くんに助けを求める。
そんな私たち3年のやり取りを後輩たちが「仲良しですねー」なんて笑って見ていたが、研磨くんだけは笑っていなかったのを気づくはずもなく。ふざけたじゃれ合いが日常となりつつある中で、研磨くんにも気持ちの変化があったと知るのはこの後。



何とか皆の宿題が終わった午後3時。
皆でアイスでも買って帰ろうかなんて話しているところに


「じゃ・・・おれたちは先帰るから」


そう言って急に私の手を引いて歩きだす研磨くんに皆がポカンと驚いた顔を見せる中、半ば引きずられるようにその場を後にすることになった。


「あ・・あの・・研磨くん??」


今の状況についていけず、研磨くんの名前を呼んでみるがそのあとの言葉が続かず。
いきなり二人きりで、しかも手を引かれている状態にドキドキが止まらない。だが、研磨くんの背中から感じる雰囲気は決して甘いものではない気がする…。むしろ怒っていませんか??


「・・・とりあえずこっち」


そう言って行先も理由も告げられることなく、いつも行かない道へと足を進める研磨くん。
その間も私が何か悪いことしたのではと必死に記憶を探ってみるが見当もつかず…。嫌われたのなら手を引かれているはずもないし…なぜ。


「ここ…下りるよ」


お互い無言のままどれだけ歩いただろうか。
そんなに遠くないはずなのにとっても長い時間に感じた沈黙のおかげで全く周りを見ておらず、研磨くんの声ではっと顔を上げる。
目の前には小さな小川と、一本の木。川沿いなのに木の下だけは芝生のように座れるスペースが出来ていた。
手を引かれるがままに芝生に座った研磨くんの隣へと腰を下ろすと、木陰特有の涼しげな風が吹いた。


「・・素敵!こんなところ知らなかった!」
「ここ・・おれのお気に入りの場所」


誰にも言ったことないけどねと、目の前を流れる小川を見つめたままつぶやく研磨くんの耳がほのかに赤い。

研磨くんの秘密の場所を私にだけ教えてくれた。それが嬉しくて私も小川を見つめたまま「私もここ好きだな」って返した。きっと私の耳も赤い。

さっきまでのあの重たい雰囲気はすでに無くなっていて、つないだままの手が熱かった。


back] [next




やっとちょっと気持ちが動き出した・・か?
どうしてもいろんなメンバー出したくて勉強会しちゃいましたww
でも受験生もいるし、宿題しない奴いるだろうし大事よね!きっと!


[ back to top ]