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嘘から始めた真実 05

日曜日の午後。
天気にも恵まれ絶好のお出かけ日和。

夏の日差しが身を焦がすぜ。
ついでに研磨くんの視線にも焼かれてしまいそうです。


「ほんと・・・よくうんって言ったよね」
「返す言葉もございません」


全然聞いてなかったでしょと呆れる研磨くんに素直に謝る。ごもっともだと思います。
まさかテッちゃんの「そーしろよ」がプールデートの話だったとは思いもよらなかったのだ。

あの日の帰り際に渡された、日付指定のプールの入場券。ちょうど部活が午前中で終わる日で、午後に行こうと思っていたらしいが「お前らの為だ!」と譲ってくれたのだ。しかも最近できたばかりの施設。その時はすっごい俺良いことしたー″って顔してたけど。

テッちゃんには悪いが、ちゃんと話を聞いていたら貰っていなかったと思う。だって、新しくできたプールなんて


「・・・・・・・人・・・・・・・多すぎる」


たかがプールでしょ!?
新しいとはいえ、他県の様に超大型スライダーとか、特殊なプールとかが何個もあるわけじゃないのにこの行列。
チケット売り場も入り口も人、人、人。しかも何、入場規制って。これで夏休み前なんだから、夏休み入ったらどうなるんだろうか。考えただけでも近寄りたくない。


「とりあえず、いまチケット持ってる人だけは入れるみたいだけど…行く?」


この人波かき分けて入り口まで行くのかと思うとUターンしたくなるが。人込みも暑いのも嫌いだって言っていた研磨くんにはさぞ辛い事だろう。かくいう私も人込みも運動も好きじゃないけど。引き返すか聞いてみたものの、クロに悪いしと律儀に行くあたり人がいいよね、研磨くん。

何とか入口までたどり着き前売り券を見せれば、並んでいる人たちからの羨ましげな視線を受けつつ中へ入ることができた。室内でもムワッと湿気がすごいが、日差しがなくなり少しクーラーのきいた室内は外よりもだいぶましだ。
これからだというのに、お互いにすでに少し疲れた溜息をはいてから「また後で」と更衣室へ別れた。当たり前だが更衣室も混んでいて、開いているロッカーを見つけるのも一苦労。もちろんカーテン付きの個室など空いているわけがない。

プールの鉄則。中に水着を着ておいてよかったよ。

去年友達と海に行くときに買った、まだ一度しか着ていない水着。ビキニタイプの水着にパレオを付けて、普段は結ばない髪をシュシュで結う。ポニーテールは恥ずかしかったので耳の下あたりで一つ結びだ。
本当はパーカーを羽織りたいところだが、室内プールでソレは許されておらず断念。知り合いの異性に水着姿を見せるってなんだかドキドキするのに隠せないなんて何かの試練ですか。

かなり抵抗があったが意を決してプールへと向かう。
お決まりのシャワーをあまり濡れないように通り抜けた先ですぐにプリン頭を発見できた。


「研磨くんお待たせ」


行きかう人の波を見つめていた研磨くんはやっぱり人の多さに後悔していたのだろうか。こちらを振り返った後、すぐに目線をそらされる。


「ん・・・とりあえず流れる?」


そういって借りてきた浮き輪を一つ持って歩き出す研磨くん。すでに最後の一つだったらしく、先に借りておいてくれたらしい。
しかし、泳ぐ?じゃなく、流れる?なんだ。そう問えば、いきなり泳いだら疲れると返って来たのでちょっと緊張が解けた。

流れるプールは人が流れ過ぎて水が見えにくくなっているが、何とか空いているスペースへと体を押し進める。ちなみに私が浮き輪に入り、外から研磨くんが捕まるという何ともカップルらしい状況になっています。

この状態ってやたらと距離が近いよね。時々流れや人を避けたりするせいで足が触れたりして、少し落ち着いたはずの緊張が復活してしまった。


「人多いね!研磨くんはプールよく来るの?」
「冬に体力作りとかで泳がされる・・・・あれは最悪」


少し考えれば研磨くんが好んでプールとか来ないのわかるのに、緊張して変なことを聞いてしまった。ずーっと泳がされるって楽しくないし疲れるよね、わかる。
思い出したのかとても渋い顔をしている研磨くん。


「外走るよりはいいのかな」
「・・・どっちもどっち。葵は来なさそうだよね」


さっきから浮輪あるのに危ないしと指摘されればその通りで反論できず。
実際に去年行った海だって、浮き輪で流されそうになり皆に呆れられて、結局波打ち際でのんびりしていただけだ。運動音痴ってほどではないはずだが、泳ぐのはどうも苦手だ。いや、浮き輪に入っているだけで泳いでもいないんだけどね。
そんな話をしたら呆れたように笑われる。


「じゃあ、おれのそばから離れないでね」


テッちゃんにでも仕込まれたのか、ニヒルな笑顔を浮かべながら言う研磨くんにさらに鼓動が跳ねた。きっと溺れたりはぐれたりしたら後がめんどくさいからって事だろうけど…。それでもこの至近距離でその言い方はずるい!

ただでさえ、いつも見ることのない水着姿でドキドキしたのに。
あんなにゆるりと動いているのに、やっぱり運動部だからか引き締まっていて男なんだって意識させられる。絶対顔が赤いと思うけど浮き輪にしがみついている状態なので隠すことも出来ず。


「うぅ・・・よろしくお願いします」


翻弄されているようで悔しいが私も下手すれば命にかかわることなので抗議も出来ず。


「ん」


頷いた研磨くんが絶対勝ち誇っている気がして、しばらく研磨くんの顔が見れないままゆったりと流れていた。
絶対草食系男子だと思っていたのに。ゲーム仲間の可愛い後輩って思っていたはずの感情が、少しずつ変わってきてるのを嫌でも自覚してしまう。

でも、これは嘘でできた関係。
研磨くんは私に合わせてくれて引っ込みがつかなくなったってだけ。決して恋愛感情で一緒にいるわけではない。

休憩タイムでプールから上がる時に捕まった腕が頼もしい。
流れてる間に見つけたと、人の少ない所へ案内してくれる時につないだ手が熱い。
さりげなくかけてくれるタオルが温かい。
休憩タイム終了後も、すぐに入るのではなくまったりと流れるこの時間が心地いい

いつか終わりのくるこの関係が、少しでも長く続けばいいのに。
そう思って、終わりを考えてしまった。

この関係に終わりが来るとしたらいつだろうかと。

研磨くんに好きな人が出来たら??
私が受験とかで忙しくなったら??
卒業??
自然消滅???
研磨くんにムリって言われたら?

思い当たる選択肢にどんどん気分が落ちていくのがわかる。

やばいな。
研磨くんに終わりにしてって言われたら絶対泣くな。偽りの彼女のくせに。


「・・・・なに?」


研磨くんを見つめながら相当変な顔をしていたのだろう。
不思議そうに尋ねる研磨くんに、これ以上迷惑かけちゃだめだと自分を奮い立たせる。


「あ、あのね!ムリかもだけど…あれがやりたくて」


実際にやりたいと思っていたわけではない、二人乗りの浮き輪スライダーを指さす。


「深刻な顔するほど自信ないの?・・・いいよ、付き合う。溺れられたら困るしね」


ちょっと意地悪に笑って見せる研磨くんに「生まれて初めてだからね」と念押しして列へと向かう。急にいなくなったら困るからと私を前に乗せ、後ろにまたがる研磨くん。
少し離れているとはいえ、研磨くんの股の間にいるみたいなんですけど!!

このドキドキはスライダーのせいだと思いながらも、研磨くんも私でドキドキしてくれたらいいなと願いながらスタートを切った。


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初デートにてやっと恋愛要素ー!
研磨って性格女々しくないよね、きっと。
皆さんが思ってる研磨くんじゃなかったらすみませんです。


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