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嘘から始めた真実 04

「はい、解散」


長かった一日に終わりを告げる先生の声を聞いた途端、崩れるように机へと突っ伏す私に隣のヤッくんから「お疲れさま」と声がかかる。

今日も今日とてみんなの話題は研磨くんで、アレコレ聞かれる前にある程度会話してから逃げるという一日を過ごしていた。


「まーそのうち皆も飽きるでしょ」
「明日にでも飽きてほしいわー」


普段はいいのだが、こういう時には無駄に仲が良くてノリのいいクラスって困るよね。彼氏ができたってだけでこれはどうなの?
他にも付き合ってる子なんてたくさんいるのに…。やっぱりテッちゃんが大声で叫んだりしたからか。

問題発言した私が悪いんだけど(しかも嘘だし)、何となくムカつくのでテッちゃんをにらむ。そんな私にテッちゃんは意地の悪い笑顔で返すんだから全く効果はないんだけどね。上手にフォローしてくれるヤッくんだけがこのクラスで唯一の救いだよ。


「そういえば研磨が部活に高宮連れてくかもって言ってたけど来るの?」
「あ、、、うん。良ければちょっと見に行こうかなと…」


半分強制的な目力でしたけどね。でも研磨くんに多大な迷惑をかけているのは私だし、このくらいはしないと。運動部ってのの中に行くのは、ザ・文化部の私には気が引けるけど…頑張る。
一人気合を入れていると「そんじゃー行くか」と知らぬ間に近くに来ていたテッちゃんに頭をグリグリされる。


「ちょっ!!やめてよね!キューティクルが痛む!!」
「ぶひゃひゃ!お前心配どころ変だろソレ」


なんでよー!このサラサラ艶々ヘアーは自慢なんだから!
お父さん、お母さん、しっかりとハリのある艶やかな髪をありがとう。


「確かにすげーキモチーな」


そういって人の髪を触り続けているテッちゃんをちょっと変態チックだと思ってしまった。

とりあえずあえて何もツッコまず、待ってくれてる2人の為に急いで身支度をする。私のせいで練習に遅れましたとかシャレにならない。そう思うのに、テッちゃんの髪をいじる手は止まらず、「そんなにか?」とヤッくんまで触りだすのだからただの邪魔でしかない。
両側から髪をいじられ、もはやオモチャだな、私。


「・・・ちょっと・・」


準備も終わったし、いい加減止めてもらおうと明らかに不機嫌な声を出した時だった。
急にクラスが今までと違うざわつきを見せたかと思うと、入り口近くの席の友達が慌てた様子で私の所へ駆け寄ってくる。


「ちょっと!葵、彼氏来てるよ!!」


あんた達も馴れ馴れしすぎるわよ!と2人の手を叩いて立ち去っていく友達をいまいち理解できないまま入口を見ると、すごく呆れた顔をした研磨くんがこちらを見ていた。


「おー研磨じゃん。わざわざお迎えか〜」


ニヤニヤと研磨くんに近づくテッちゃんに続くように席を立つ。
途中で友達に「バイバーイ」って言ったら「修羅場んなよー」と返ってきて首を傾げた。あれ?これって修羅場ポイントだったの?

改めて考えてみたら、髪とはいえ恋人が異性に触られまくってるってあんまりイイ光景ではないよね。研磨くんは嫉妬ととかするのかな?ちょっとだけ想像してみたけど、事実恋人ではないのだから嫉妬もなにも無いか。
案の定、テッちゃんにからかわれ嫌そうにしているけど研磨くんに怒った様子は見受けられない。それでもヤッくんは調子に乗りすぎたって謝っちゃうんだからホントいい人。
でも研磨くんの拗ねるところ可愛いから見てみたかったかな。


「ところで・・・まだ行かなくても大丈夫なの?」
「あーん?・・げっ」


さっきからのんびりしてるけど、結構時間たってるよ??
私が指さす先の時計を見てテッちゃんがかなりまずいって顔をしたので大丈夫じゃない事は伝わった。急ぐぞと走り出す彼らに、後ろからのんびり行きまーすと手を振った。だって廊下走るとか優等生で通してる私には無理だもん。


「・・・研磨くんは走らなくていいの?」
「いい・・・疲れる」


なんとも研磨くんらしい返答に笑ってしまう。
前にもこっそり逃げようとして捕まったって言っていたし、疲れること嫌いなんだろうな。ホント、運動部っぽくないよね。
そんな研磨くんのバレーをしている姿が見られるって思えは、今日はちょっとラッキーなのかも。

人の多い下校時間帯にゲームの話題はできないので、他の他愛無い話をしているうちにすぐに体育館へと着いた。中からはすでに楽しそうな話し声やボールの音が響いている。


「とりあえず…舞台にでも座って見てて。おれ着替えてくる」


そういって立ち去ってしまった研磨くんに、舞台は目立つから嫌とも言えず立ち尽くす。2階でもいいかなとなるべく目立たないようにそろりと中へ入れば、体育館独特の匂いがした。
どうやらまだ顧問とかコーチとかは居ないみたい。ついでにテッちゃんとヤッくんの姿も見当たらない。

お陰様で私を知っている人はおらず、バレることなく2階へ上がることができた。しばらくしてテッちゃん達に引きずられながら研磨くんが登場。マイペースに着替えてたのに急かされたな、あれは部室でのやり取りを想像して一人で笑ってしまう。

舞台にいない私を探すかのようにチラチラと周りを見渡す研磨くんにココから叫ぼうかと思ったがやめておく。そんなことしたらきっと練習の邪魔になっちゃう。
観客席があるわけでもない2階は窓の開け閉め用のスペースのみだからかあまり目立たないようで、結局見つかることなく練習が始まった。

運動とは無縁の私は、久しぶりに真剣にスポーツに打ち込む男達を間近で見て、次第に気持ちが昂る。基礎練習だけでも音とか声とか匂いとか、とにかくドキドキした。休憩に入るとちょうど研磨くんが私の下の方まで来てくれた。


「研磨くん!お疲れ!みんなすごいね!」


気持ちか高ぶっているからか何だか急いた話し方になっている気がするが声は控えたつもりだ。それでも急に降ってきた声にビクッと肩を揺らしていたので驚かせちゃったかも。


「そんな所にいたんだ…下りてくれば?クロも探してたし」


そういわれテッちゃんを見てみると、なぜか舞台の下の物入れを見ている。いやいや、そんなところに人は入れませんから。どうやら居るはずの私が居ないので、やっぱり3人にしか見えない幻なんじゃないかって話になっているらしい。

それほど研磨くんから声をかけて付き合った彼女ってのが意外なのか…。その彼女が嘘ってのが心苦しい限りだが、これ以上3人が変な目で見られても申し訳ないので急いで下りる。舞台袖の階段を下りれば、先程まで舞台周りを探していたテッちゃんとヤッくん、それと迎えに来てくれた研磨くんにが待っていた。

このメンツでコートへ戻れば…まぁ一発でバレますよね。目立ちますよね。


「うぉぉぉぉお!じょじょじょっ女子!!」
「幻じゃなかったのか」


なんて次々に後輩たちが駆け寄ってくる。そんな彼らに「な!マジでビビるだろ」となぜか自慢げなテッちゃんの先に、元クラスメートを発見。


「よ、研磨の彼女なんて物珍しいやつ誰かと思えば高宮だったんだな」
「おひさ〜海くん。1年の時からすごい身長伸びてて全然気づかなかったよー」


バレー部が意外と知り合いだらけ驚く。
おかげであまり緊張せず、持ち前の人当たりのいい顔が出来て良かったよ。


「研磨の彼女、美人じゃないけど笑顔可愛いのな!」


外人さんっぽい子に何やら褒められてるような貶されてるようなセリフを言われたが、ヤッくんがけりを入れてくれてるから良しとしよう。実際に美人じゃないしね。
それでも「女は愛嬌!」と教え込まれてるのでよくいい笑顔だと言われる。

まぁこんな大きな男たちに囲まれてると圧迫感がすごくて顔が引きつりそうになるが。よく一緒にいる研磨くんやヤッくんが大きくないから忘れてたけど、バレー部だもんね。自分の頭上で繰り広げられる会話とかはあまり参加する気になれないぞ。
だからちょっとぼーっと聞いていた。


「な!そうしろよ」


そういうテッちゃんに深く考えずにうんって答えたら、研磨くんにすごい見られた。
理由は聞けないまま練習が始まってしまい、そのまま帰るタイミングを逃してしまった私は結局最後まで練習を見届けることになってしまった。


「つーわけで、ハイ。さっき言ってたやつなー」


そういって手渡されたチケットをまじまじと見つめ、自分が何に頷いたかをようやく理解することができた。


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ちょこっとバレー部が出したかったのですww
夜久さん好きだ―
あと、ゲームしてる時以外の研磨を見ることで何かが変わる…はず!


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