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ジェンガ!ジェンガ! 04

しかしドアは開くことなく中途半端な位置で止まり、その変わりにゴンッと衝突音が小気味よく鳴る。


「痛っ!ちょ、痛い!」
「え?皆帰ったんじゃなかったの!?」


そこにはさっき出て行った3人の姿があり、その体勢から覗きか・・・盗み聞きをしていたみたい。
及川くんの頭にドアがクリーンヒットしたらしいが、自業自得だよね。

え?でも本当に覗かれてたらヤバイ。だって私岩ちゃんに抱き締め・・・・・・あぁぁぁ!恥ずかしい!思い出すだけでも恥ずかしい。


「お前等、帰るんだったらさっさと帰れ!」
「え?やだな〜岩ちゃん、二人きりで何するつもり?えっちー」
「うるせえよクソ川!黙れ」


一人で羞恥心と闘っている間に二人の言い争いがヒートアップしていた。
内容はともかくも、いつもの事なのでどうしようかと見ていると、楽しそうに笑いながら傍観している花巻くんと目が合う。

このままだと埒があかないし、からかわれすぎて岩ちゃんがプッツンしたら危ない。そう思って目でどうにかして、と訴えた。


「及川、もういいべ。帰るぞ」
「え?面白いのに・・・っ痛!暴力反対!」
「俺らが連れて帰るから」


ありがたい事にそれが通じたらしく、嫌がる及川くんを二人で半ば引き摺るようにして連れて行ってくれた。

ちょっと、俺の扱い酷くない!?なんて上がる声を華麗にスルーしてドアを閉める。
騒がしい声が遠ざかってようやく安堵の息を吐いたその直後。


「おばちゃーん!岩ちゃんに彼女が出来たから今日はお赤飯だよ!あ、今邪魔しちゃダメだからね」


一難去ってまた一難。とばかりに及川くんが誰かに向かって声を上げる。
ちょっと離れているからくぐもって聞こえるが、嬉しそうに答える女性は及川くんの言葉から、来たときには居なかった岩ちゃんのお母さんで間違いないだろう。


「はぁ・・・最悪だ」


力が抜けたようにズルズルと座り込んで項垂れる岩ちゃん。その後頭部を眺めながら慰めるように肩に手を置いて一撫でする。

やっぱり男の子って母親に彼女の存在とか知られるのは気恥ずかしいものなんだろうか。まぁ、岩ちゃんの性格からしてもペラペラと喋るような感じではないけれども。

あっ!?ちょ・・・重大な事に気付いた。お母さんが今居るってことは、帰るときに鉢合わせるって事だよね。うわ・・・岩ちゃんだけじゃなく私も恥ずかしい。
というか二人きりになってるこの状況をお母さんに知られているのが何かこう・・・居た堪れない感じ。

既に及川くん達は玄関を後にしたのか、もう何も聞こえては来ない。
先ほどから項垂れたままピクリとも動かない岩ちゃんの正面に座って声を掛ける。


「私もそろそろ帰ろうかな」


及川くんが邪魔しないで、なんて言ったおかげで変に勘ぐられても困るし、今日は帰ろう。
この数時間色々有りすぎたくらいにあったし、何より長年の片思いが実った。帰って部屋のベッドの上で振り返って噛みしめて浸りたい気分だな。


「あー・・・送ってく」


ようやく顔を上げた彼は何だか疲れたような顔をしていて、思わず笑ってしまった。


「ありがとう。今日凄く楽しかった」
「そうか?」
「うん。ジェンガ初めてやったけど面白かったし、人数増えても楽しそう。またやりたいな」


あ、罰ゲームは出来れば無しがいいけど。
今日のような心臓に悪いのはもう勘弁してもらいたい。そんな気持ちを込めていうとふっ、と彼が笑う。

たまに見せてくれるこの笑った顔は私の一番好きな表情で。その笑顔をこんなに近くで見れたことは初めてでつい凝視してしまったけど、残念ながら直ぐにいつもの表情へと戻ってしまった。


「でも、あんまり気軽に男の家に上がるなよな。今日だって男ばっかりだし」
「え?だって男バレの皆だし・・・あ、もしかしてお昼の時に不機嫌だったのってそれ?」


お昼休みに戻ったとき、岩ちゃんに鋭い視線を送られたのを思いだす。
あの時は私が最初に参加したいって言った事でこの集まりが決定してしまったようなものだから、それを怒っているんだと思ったけど。

男の部屋で、尚且つ男ばかりの中に混ざるのを怒っていた?
そっか・・・それでか。不機嫌な表情の意味が分かって、ダメだと思いながらもつい表情が緩んでしまう。だって、心配か嫉妬かしてくれたって事だよね。

それって凄く嬉しい。
でも、誤解が一つだけ。
今日のように誘われたから遊びに行くっていうのは、岩ちゃんが居るから。
誰とでもじゃないって事を分かって欲しい。


「でも、岩ちゃんが一緒じゃなかったら行かないし、岩ちゃんの家だから来たかったんだよ?」


お互いドアの前で座った格好のままだったので、膝立ちで一歩岩ちゃんへ近づく。誤解を解くように当初の邪な思いを白状すると、彼は照れたような困ったような表情を浮かべた。


「この状況で・・・煽るなよ」


小さな声で呟いたけれど、私には何て言ったかよく聞こえなくて。聞き返そうとしたその時。彼の手がスルッと腰へ伸びてきてそのまま力強く引き寄せられる。

急で驚いたけれど、その手に抗う事なく身を任せればギュっ、と抱き締められた。
わ、今日二回目だ。なんてドキドキはしつつも先程とは違い多少の余裕があったので、そっとその背中に腕を回して密着すると、私と同じように少し速い心臓の音が聞こえる。

岩ちゃんも私と同じ気持ちなんだって伝わってきて、どうしようもなく嬉しい。少しの間心地いい温もりを堪能していると、優しく肩を押されて離される。

そのまま自然と近づいてくる彼を受け入れる様にそっと目を閉じた。


fin.




一話完結で終わるはずだったのに、何故かここまで長くなりました。。
そして最後・・・お気づきの方もいると思いますが、名前変換がありません。

あぁぁ、終わってから気付くという失態です。
でも3年レギュのわちゃわちゃが書けて満足してます・・・主将の扱い酷くてごめんなさい(笑)


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