■ 2
「おかわり」
今度は逆の手を置く。
「お座り」
江西の正面に、犬のように手足を揃えて座る。
「おまわり」
その場でくるんと回ってみせる。
「ちんちん」
ひょい、と片足をあげた途端に、卯城の足が江西を蹴り飛ばす。
「ちげぇぞ、バーカ」
「えー、ちんちんはこうだろー?」
「そりゃションベンのポーズだ」
「そうだっけー?ちんちんどーやんの?」
「しゃがんだまま足開いて、ちんこ見せんだよ。で、手は胸のとこ」
「あー……こう?」
言われた通りにして笑顔を見せた瞬間に、腹を蹴られる。
「いてぇー、なーんでだよおー?」
「ちゃんとちんこ出せよバカ」
「えーっ……見せんの?」
「いやならいい。パンはやらん」
「ちょちょちょ、待て待て!ほらほら、ちんちん!」
あわてて制服のズボンのジッパーを下げてペニスを晒し、ポーズを取る。
周囲に人がいないとはいえ、呆れるほどの従順さだ。
「よし。じゃあ、シーシー」
「え?なにそれ」
「さっきやっただろ、ションベンのポーズだ」
「へぇ、そう言うんだ」
感心したように頷いて、片足をあげると、股間でペニスが揺れる。
「ははは、ばーか。ほらよ」
楽しそうに笑った卯城が、食べかけのメロンパンを一切れちぎり、ぽいっと投げる。
江西は慌ててそれを両手でキャッチし、手のひらに収まったパンに笑みを浮かべる。が、卯城の足がその手を蹴り飛ばす。
「あーっ!パン落ちた!なにすんだよー!」
「犬が手ぇ使うか、バカ」
卯城は落ちたパンをぐりぐりと踏みつける。
「だって急に投げるからだろー、ああー、もう食えねぇじゃんかー、ひでぇよ、ちゃんとやったのにー」
「やり直しだ。芸のレベル上げるからな」
「うぅー、鬼だ」
「服、脱げ」
「へ?」
「犬は服、着ねぇだろ?」
にっこりと笑う卯城の眼が凶悪な光を宿して輝いている。どうやらこの遊びが気に入ったようだ。
江西はその目に気づき、しぶしぶと制服と下着を脱ぎ、靴下と上靴だけの間抜けな裸身でお座りをする。
「じゃあ、シッポ」
「は?」
「振るんだよ、尻尾」
「えー、ついてねぇよー」
「無いならつけろよ、頭足りねぇな」
卯城は江西の脱いだYシャツを拾い、ポケットから出したナイフで右袖を切り取る。
「あー! なにすんだよー!」
「ほら、尻尾」
「尻尾じゃねぇよー、オレのシャツー……」
江西は差し出された袖の切れ端を手にしてうなだれる。
「それケツに突っ込んで垂らせば尻尾だろ。早くしろ」
「えー……」
嫌そうな顔をしながらも、シャツの袖を尻にあて、指で端を中に押し込もうとするが、なかなか入らない。
「無理だってー、痛ぇし」
泣き言を漏らす江西に、卯城が舌打ちする。
そして屋上のドア脇の壁に凭れかかっていた体を起こし、
「ケツこっち向けろ。入れてやるよ」
「えー……痛くしないでネ?」
媚びた語尾で無駄な念を押しながら、江西は四つん這いになる。卯城は中指に袖の布を巻きつけ、なんの容赦もなく小さな窪みに突っ込んだ。
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