■ 3
用意したグラスにワインを注ぐと、床で差し向かいに座った不動が手に持ったグラスを差し出した。
「ほら、乾杯しよーぜ」
「ああ。……何に?」
「あー、友情に」
チン、とグラスを触れ合わせて一口含む。
凄まじく辛口だが、悪くない。
「うまいな」
「だな。まだ全然若いヤツだけど、風味がいいなあ」
そう言いながら、不動は嬉しそうに二杯目を注いでいた。
「お前、少しは遠慮しろよ」
「生きてる頃よか酒がうまいんだよなあ、なんでか知らんけど」
「ああ、そう。肉と酒と、あとは何が食えるんだ?」
「んー、精かな」
「精?」
「そう。まあ食えるっつーか、肉と精を取らねえとダメなんだよ」
「だから、精って?」
「まあ精子だわな。つーことでちょっと飲ませてくれねえか?そろそろ補充しねえと動けなくなっちまう」
ははは、と大口開けて笑う不動に俺は口に含んだワインを噴きだした。
「あーあー、もったいねえな。何してんだ」
「お前がっ妙なことを言うからだっ」
口元に垂れたワインを手で拭うと、不動が俺ににじり寄る。
思わず身を引くが、不動の手が俺の手首を掴み、濡れた指を舐めた。
「よせよ! 気持ち悪いっ」
振りほどこうとしたが、不動の手は俺の抵抗にはびくともしない。
「まあまあ、眼ぇ閉じて女のことでも考えててくれりゃいいからよ。俺も最初はちょっと抵抗あったけどよ、だいぶ慣れたからうまいもんだぜ?」
快活な笑顔で、不動は俺を押し倒した。
「ふざけるなっ、よせっ!」
不動は片手で俺の両腕を封じて、足に体重をのせて俺の動きを止める。
「大丈夫だって。ちょっと気持ちいいだけだからよ」
「男にのし掛かられて気持ちイイ訳あるかっ」
「ははははは、まあ同感だ」
「ならやめろよ!」
「そうもいかねえのが、俺も辛いとこだ。なあにすぐ済む」
済まされてたまるかっ、と押しのけようとするのだが、不動の体はまるで岩のようにびくともしない。おまけに冷たい。
触れられているところから体温と共に力を奪われるような気さえして、うまく力が入らなくなる。
不動は器用に片手で俺のベルトを外し、ズボンの前を寛げて下着をズリ下げる。ひんやりとした指が萎えたモノを摘んで握りこむ。
「不動っ! お前っ、恩を仇で返す気かっ!」
「恩には奉仕で報いるのがモットーだ」
「ただの嫌がらせだ、バカっ!」
顔を真っ赤にして叫ぶが、不動はやわやわとペニスを揉む。
武骨で冷たい手に捕まった俺のモノはひたすら身を縮めている。
「んー、シャイだなあ、お前のムスコは」
「お前に触られてるのが気に食わないだけだっ」
「手コキは嫌か。じゃあ口で」
言うが早いが、不動は俺の股間に顔を寄せてぱくりと咥えこんだ。
「ひっ! やめろバカ! 生温いんだよっ気持ち悪ぃんだよっ!」
両手は離されたが、不動がしっかりと俺の腰を抱え込んでいるから、逃げられない。悔し紛れに、不動の髪を掴み、ぐいぐいと引っ張った。
「吸うんじゃないっやめろっ、このっ」
焦って掴んだ髪を思い切り引っぱった途端、べりっと髪が剥がれた。
不動が俺のを咥えたままもごもごと文句を言っていたが、俺は肉片ごとごっそりと取れた髪を片手に再び卒倒した。
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