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「っふ、ぐ、ぅうっ! 畜生、あの野郎……っ!」
俺は自宅のアパートで呻いていた。
ふらふらになって帰り着いて、敷きっぱなしの布団に身を投げ出した途端に流れ出した涙が止まらない。
開きっぱなしの口からも涎が溢れて、鼻水まで垂らして、俺はすすり泣きながら毟り取るようにズボンと下着を脱いだ。
うつ伏せになって尻を上げ、足を開いて、両手で雄を握って擦った。
勃ちっぱなしのソレにはコックリングがハメられて、先走りでぬるぬるだ。
天井に向けて突き上げた尻の中は、凄まじい掻痒感で煮え滾り、指でもバイブでも突っ込んで掻き毟りたくてたまらない。
だが、充血した穴にはメタル製のディルドが突き刺さっている。と言っても、長さも太さも大したモノじゃない。ただ尻に栓をする程度のもので、勝手に取れないように腰からペニスの両脇を挟んで股下を通る金具と連結している。
そしてその大したモノじゃない大きさが、逆に俺を苦しめた。
中途半端に尻を開かれ、肝心の奥まで届かない長さなど、いたずらに欲情を煽るだけで満足させてはくれない。かといって取り去ることも出来ずに、俺はひたすら尻を振って悶える以外にどうしようもなかった。
器具の隙間から指を突っ込めないかと思ったが、ディルドに連結された金具が邪魔で、穴の淵にも触れない。そして俺をもっとも苛む痒みの原因は、ディルドを着けさせられる前に尻に入れられた座薬のようなものだ。
入れられてしばらくは何ともなかった。だが、午後の仕事も片付く頃に、違和感が生まれた。尻の中が熱くなり、むず痒くなった。そして帰るころには、猛烈な痒みに変わった。
慌てて、昼過ぎにどこかへ出かけた須田の携帯に掛けたが、夜にアパートに寄るからそれまで待ってろ、と一方的に告げられて切られた。
アパートまでは電車で一駅だが、その道のりは地獄だった。
帰る途中、何度も駅のトイレや公園のトイレに篭って、猿のようにペニスや尻を掻き毟った。そんなことをしても肝心の場所の刺激はこれっぽっちも治まらず、イクこともできずに体力を消耗するばかりで、アパートの階段に辿りついた時は、冗談抜きで這うようにして昇り、ほとんど意識は飛んでいた。
どうやっても治まらない痒みと共に過敏になった体がもたらす欲情は時間が経つにつれ増すばかりで、布団の上を転げまわって須田への罵倒を繰り返していた。
そして口汚く罵る気力も尽きたころ、須田はやってきた。
「亮平君、玄関開きっぱなしだよ、危ないなあ」
のんびりとした声とともに、大きな手が俺の肩を揺さぶる。俺は視界に須田の顔を捉えた途端、目の前に緋の幕が降りたような怒りに駆られた。
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