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俺が社長室のドアを叩いたのは、あれから三時間後だった。
「おや、瀬川さん。なにか用でも?」
背広を脱いでYシャツに作業着の上を引っ掛けた須田がデカイ机の向こうで笑ってる。
俺はそれに愛想笑いを返す余裕はないし、する気もない。
「なにか、じゃねえよ」
「顔色、悪いね」
「誰のせいだよっ、もういいだろ?」
机を回り込んで須田の前に立つ。
「ウンコ出た?」
そう言って、須田は俺の尻を撫でた。
「触るな、出してねえから便所行かせろって言ってんだよっ」
「まだ我慢してたの? オムツつけたんだから出しちゃえばいいのに」
「出来るかっ!」
「出しちゃえばいいのに」
俺の怒鳴り声など聞こえなかったように、須田が繰り返す。
つまりそれは、出せということか?
俺はぎりぎりと痛む腹を押さえながら、にこにこと俺を見上げている須田を睨む。
「……だから、トイレで」
「せっかくオムツあるのに」
「お前、そんなに俺が糞漏らしたオムツ見たいのかよ?」
「いやあ、オムツが見たいわけじゃなくて、オムツにウンコ漏らしてベソかいてる遼平君が見たい」
「……っこの、変態ヤロウ」
どうせそんなことだと解ってはいたが、こうも堂々と口に出されると呆れるしかない。
「もう、いいっ」
俺は尻を撫でる須田の手を払って、部屋を出ようとする。
「あ、勝手にトイレで出したらまた閉じ込めるからね。わかってると思うけど」
俺はドアに向かいかけた足を止める。
以前、尻にバイブを突っ込まれたまま仕事をさせられた時のことだ。須田が指示した昼休みまで我慢しきれずに自分で抜いたのがバレた。
そしてその後、休日の二日間、縛られたままケツにバイブを仕込まれたり、コックリングをされたりと散々な目に遭った。あんな生き地獄はもうごめんだ。俺はまた踵を返して、須田に歩み寄る。
「この、変態」
目で射殺せるならそうしてやりたいと睨むが、須田は澄ましたもんだ。
「そんな色っぽい目されたら、興奮するじゃないか」
「黙れ、クソ豚」
「あはは、子供の頃もそう言って亮平君にいじめられたっけね」
さらりと言われた言葉にちょっと怯む。そういえば、ガキのころはこいつはただのデブだった。そして俺はいわゆるいじめっ子の悪ガキだった。
「お前、いまさら仕返ししてるつもりか?」
「いいや。今はただ亮平君の可愛いとこ見たいだけ」
いい年した男がクソ漏らすのが可愛いってか? まったく、どうかしてる。
だが、俺は諦めて須田の足元に膝をつく。
どう抵抗したところで、結局は従うまで追い込まれるだけだ。
冷や汗はいつの間にか脂汗に変わっていたようだ。顔を拭った手がぬるつく。
「亮平君、亮平君。僕のしゃぶって」
須田が嬉しそうに俺の頭を引き寄せる。
俺は、須田の膝に手をついて須田が股間のモノを取り出すのを腹痛に震えながら見ていた。
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