■ 2


 既に命のぬくもりを失ったのっぺりと冷たい体に爪を立てる。

 俺を犯しながら、この男は何を考えていただろう。

 おそらく、かつて与えられた同じ刺激がもたらす気が狂うような快楽を思い出して興奮したに違いない。

 否定しても否定しても自我も理性も突き崩し飲み込む快楽の暴流に溺れ沈むあの感覚を、味わいながら俺を鞭打ち、辱め、犯したのか。

「っふ、ははは、あははっははははは! まったく! ははっははははは! さぞ尻が疼いただろうな? ええ? それとも自分でバイブでも仕込んでいたか?」

 きっとそうだ。そうに違いない。
 ここまでされた体が、欲情しても男を欲しなかったはずがない。

「俺が気を失った後は、ひとりで慰めていたのか? バイブを咥えてひぃひぃ言いながら! なあ、おい? 何とか言ったらどうだ、この牝豚が!」

 笑いながら、涙が落ちた。
 こいつは牝豚だが、俺は牝豚に仕込まれた牝豚だった。落ちた涙が、引き攣れた傷に溜まる。それを指で擦り、背中の文字を撫でた。

「さぞかし、男が恋しかったんじゃないか? 慰めてやるよ、淫乱な穴を」

 俺は、ベッドに乗り、彼の両足を広げる。重い腰を抱えて持ち上げ、三つの矢印が催促する穴を晒す。穴の周囲にも火傷の痕。そして何度も裂けた傷跡が残る穴は、やはりすこし広がっていた。

 乾いたそこに、指で触れる。冷たく柔らかい肉を掻き分けて押し込む。血が通っていたなら、即座に蠢いたのだろう。だらしなく広がった穴をひくつかせながら、貪欲に奥へ奥へ誘い込むように。

 俺は両手で広げた穴に口を寄せ、たっぷりと唾液をたらし、塗りこむ。

「濡れてれば、別に解さなくても平気だろう?」

 それもきっと俺と同じだろうから。
 男がしていたように服を着たままペニスを取り出す。
 それは既に興奮していて、軽く擦るだけで硬く上を向いた。

「ほら、久しぶりなんだろう? 生でやってやるから、たっぷり味わえ」

 滲んだ透明な体液を先端に塗り拡げて、竿に唾液を擦り込んで、俺は鬼戸の爛れた蕾に先端をあてがい、一気に押し込んだ。

 解れていない肉は緩んではいたが、血が通っていないぶんだけ堅く、痛みを覚えた。だが、構わず腰を振るうと、滲み出た先走りで徐々に滑りがよくなる。

「っはは、牝豚にしては、締りがいいじゃないか。どうだ? 久しぶりの雄の味は?」

 深く奥を突き、揺さぶるように激しく突き上げる。

「なぁ、なんとか言えよ? 豚らしくみっともなく鳴いてみろよ? それとも、聞く耳ないのか? 良すぎてなにも言えないか?」

 声が上ずる。呼吸が荒くなる。今、俺の体にはなんの戒めもない。
 自由に腰を振るって雄としての充足に身を委ねる。

「腹いっぱい、飲ませてやる。嬉しいだろう?」

 何度か小刻みに穴を抉り、脈打つ肉棒から熱い白濁を吐き出した。
 突き抜けていく快感に、胴が震えた。




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