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「ところで実際やってみれば、いや、やられてみればわかると思うけど、キスにしても愛撫にしても、ただやれば良いってもんじゃない。そうだろう? 相手の反応をちゃんと見て何を望んでいるのか考えてそれに適してやらなきゃ。たとえばほら、君がこんなに腰を動かしてるのはなんのためだろう? もしかしてもっといいとこに欲しいんじゃないかなー。それはさっきからイイ声を出してるココかなー?」

 ごりっと音がしたかと思うような衝撃が直腸の内部から脳天に突き上がった。

「あっがぁ、っああああああっあぁっ!」

 仰け反っていた背を更に反らして力の入らない指でシーツを引っ掻く。

 痺れた体がもどかしい。自由が利けば、せめて自分の意思で腕を動かせれば、この内臓を焼き尽くすような快感を紛らわせるために何かできるかもしれないのに。

 いや、それよりも先にこの最低の卑怯者を殴ってやりたい。

「ははは、当たったみたいだね。わかっただろう? 教科書通りに手順を丸暗記してんじゃダメなんだよ。何にしても応用が少し足りないよね、君は」

 そういう貴様は基礎を疎かにしがちだろうが、愚か者め。だからテストでもつまらんミスがあるし、何にしても自己流だから協調性に欠けるんだっ。

 と、言ってやりたいが、舌が回らない。どころか、視界も思考もぶれていく。

 ああ、もう嫌だ、もうこれ以上快感はいらない。というか、違う、俺が、欲しいのは尻の奥から電流のように背骨を貫くこの強烈な感覚じゃない。

 もっと穏やかに高まって、一瞬で終わるような、普通の射精感がいいんだ。こんな暴力的な快楽はいらないんだ。何が相手の様子を見て適確に、だ。見当違いもいいところだ、早く解れっ、いや、もういい加減に終われよっ、薬も入れてないのにどうして男相手にそんなに持続できるんだっ、この色魔め!

 俺は、動かない首を必死で左右に振ろうと力を込める。歯を食いしばるほどの気力を込めているつもりなのに、実際は、口は半開きのままで、首だってぐったりとシーツにもたれたままだ。

 動きはしないのに、感覚だけはやけに鋭敏で、覆いかぶさってきた尾嵩の吐息が首筋に触れるだけで快感が滲む。

 尾嵩が俺の脚を離し、深く奥まで突き入れたまま、俺の体に手を這わせる。

 太腿から腰へ、更に脇腹へと撫でられるとそこからぞわぞわと逃げ出したくなるような快感が生まれて、涙が滲む。

 ひくひくと腹筋が痙攣して、ついでに突っ込まれているところの粘膜が蠢いて、脈打つ肉の塊を余計に意識して泣きたくなる。悔しくて仕方がない。こんなやつにされるがままだなんて。

「垣澤、辛そうだな? もっとイキたいか?」

 優しそうな声。だが騙されるものか。こいつは楽しみたいだけだ。その証拠に口の利けない俺に問いかけてどうしようってんだ。くそ、今度は何を企んでるんだ?

「イカせてやろうか? ほら」

 尾嵩の指が、胸を這う。そして尖った乳首を掠める。

「っひ、は、ひゃ、やぁ……っ」

 それだけで俺の声が上ずって、どくりと股間が疼く。

 胸は、薬を飲まされた直後に散々弄り回されてやたらと敏感になっている。それなのに、尾嵩はその過敏な場所を指で摘み、更に捩じるようにする。

「いっひゃ、あぁ、や、……めっ、はっぁあ、ああぁあっ、ひあぁっあっ」

 何度も脳裏に真っ白な光が弾け、同時に雄の先端を激しく擦られ、一瞬、意識が飛ぶ。




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