Piece13



Piece13



 ガイアへ着く頃には、ギレイオとサムナはまともな会話が出来るまでに日常へ戻りつつあった。初めは事務的な会話から、徐々に雑談も交えて状態回復に努めたが、二人はあえて「ダルカシュ」に触れないことで、無理矢理にその状態にまで持ち込んだのである。はっきりとした壁が二人の間に横たわったことは間違いなく、それでも、それを見ないフリをして動き回らなければ本来の目的を果たせない。
 ピエシュの家に寄ったことで、予定していた行程が二日ほど遅れていた。この一日で「機構」の幹部だったソランの足跡を見つけなければ、エインスたちがここへ追い付いてこないとも限らない。これまでが静かすぎるだけの話で、自然と何かしらの策なり罠なりの存在を疑いたくなる。
「……よく見つからなかったもんだと思うね」
 車の側面に寄りかかり、ギレイオは言う。その隣で往来を見つめながらサムナは応えた。
「おれが彼らに対して誘導灯の役割を果たしていると言っていたな」
「そこまではっきりした言い方はしてねえよ」
「だが、通じるものがあるからこそ、こちらの居場所がわかったということは、そういうことだとおれは思う。……今のところ、そういった機能の存在を感知することは出来ないが」
「それが目的の機能じゃないんだろ。通信だの何だの、共鳴みたいなもんでたまたま見つかったってレベルだ。まあ、これまで静かだったのはあっちにも何かしら問題が発生したと考えておくべきだろうが……タイタニアで襲撃くらって結構経つ。もうそろそろ動き出してもおかしくねえと思うんだよ」
「異論はないが、肝心の彼の足跡がわからないのではどうしようもない」
「まー変態的にしつこく自分の足跡を消しまくってたみたいだもんなあ……」
 ギレイオは腕組みをし、呆れたように溜息をついた。
 辛うじて残っていた、ソランのものと思われる足跡があったのは、ガイアの近くにあるマトアスという小さな街だが、そこからさして遠くないガイアにも何かしらの痕跡があってもいいだろう、と踏んでの聞き込みだった。マトアスが小さい街である分、不便な部分も出てくるはずで、その場合はガイアを頼るぐらいしか方法がない。その僅かな接点を狙っての聞き込みを開始したのだが、数年前の事だけあって、人の記憶をあてにしていたわけではないにしろ、影すらも掴めないことに驚きを隠せなかった。ガイアではソランの姿はいくらか目立つだろうと思ったのである。
 ガイアは他の街に比べて平坦な土地が多く、それが古代においては利点となったのか、かつては首都であった街である。その為に遺跡も多く、日常の中に古い石造りの建物や、建物の遺構などがちらほらと交じり、道を歩けば何かしらの云われがありそうな遺物も当然の顔をして鎮座している。現代と過去が混然一体とした街はどこか浮世離れした雰囲気があり、ここを訪れる者もそれを目当てにした人間が全体の何割かを占める。それは観光客であったり、盗掘屋であったり、学者であったりと様々だが、ソランのような研究職についていた人間が身元を隠すとなれば、遺跡に関連した人種を選択するのは自然な流れだろう。

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