Piece13



 そして、そういった人間がいるならば、そういった人間を相手にした商売をする者がいるのは世の常である。遺跡関連の商売となると、街全体の商業の中では小さなコミュニティーになるだろう。当然、客の情報もその小さな輪の中でやり取りされることになる。ソランのように若い男の学者となれば、年寄の学者よりも息の長い付き合いをしたい相手になるはずだ。覚えている人間がいてもおかしくはない。
 一方で、ガイアは武術の街としての顔を持つ。これも平地が功を奏した部分が大きい。他に比べて広く平坦な土地を使うことが出来るため、多くの人間を一気に教えることが可能となった。そのために、ガイアには剣術最高峰の学校が存在する。
 無論、他の街にもそういった学校は点在するが、ガイアほどの規模を誇る所はない。古代の首都であったという点から、ガイアにはそもそも武術が育ちやすい環境が整っており、それは他の追随を許さないほどであった。そして他の街もそれほど武術を主眼に据えているわけではなく、ガイアの武術の街としての地位はごく自然に確立していったようなものである。
 そんな街であるからこそ、武人然とした人間も多く、学校の生徒らしい人間も多く見かけた。これから学ぼうとする者、ある程度の鍛練を済ませた者、腕に覚えのある者と段階は多くあれど、誰しも身のこなしが常人とは違う。ギレイオらのように冒険者ならば一目で、例え普通の人間でも何かしら違和感を感じるぐらいは出来るはずだ。その中にソランが混じれば、毛色の違う犬が混じった時のように、それこそすぐにわかりそうなものである。
 武術と遺跡、という対極の文化が一緒にある街で、ソランはどの立場にいても目立つ人間であることは変わりない。しかし、誰も彼のような人物を知らないと言う。
「変装していたという線は?」
 サムナが問う。
「ねえな。まあ可能性としちゃ捨てきれねえけど、ヤンケの所でわかっただろ? あいつはしつっこく自分の痕跡を消してったって。そんな奴が変装なんて俺はとても想像がつかないね。そこまで器用な奴にも見えねえし」
 最後に余計な一言を加えつつ、ギレイオは持論を展開する。サムナもその点には否定するだけの材料の持ち合わせがなかった。器用か不器用かは置いておいても、変装のような小手先の騙しを飄々と使い続けるような男には見えない。
 しばらく黙り込んで人の流れを見つめていた二人だが、ギレイオの盛大な溜め息によって沈黙は破られた。
「こんな所で油売ってても仕方ねえや。ガイアはついでに情報がありゃいいぐらいに寄ったんだし、マトアスに賭けよう。こっから近いだろ?」
「今から行けば夕方前には。だが人目はいいのか?」
 今も外套をすっぽり被って、顔をわからないようにしている。手練れの武人風に装っていれば誰も声をかけないし、サムナもギレイオも実際腕は立った。喧嘩を売られたら喜んで買うぐらいの気持ちでいたが、誰も敬遠して声をかけることはしない。
 ギレイオは腕組みをして答える。

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