番外編 Previous×Prologue



「……わかった」
「……お前、今、むっとしなかった?」
 これには短く、「いいや」と答えておく。ギレイオは疑問を残しながらも、「そうか」と納得した。
 それから走行を続けること数時間、途中途中で、ギレイオが薬を点眼する時間を取る以外では止まることなく、走り続けた。そして大地の裾に夕闇が顔を見せ始めた頃、ギレイオが言った通りに小さな岩山が姿を現した。
 岩山の周辺には、山から落石したらしい巨岩が点在し、それらが上手く組み合わさって見えにくくなった一角があった。車から降りて、先にその場所を見つけてきたサムナが戻り、今度は車とギレイオと一緒にそこへ向かう。その頃には既に太陽は沈み始め、夜が訪れようとしていた。
 簡素な食事を終え、焚き火から少し離れた場所に座り、ギレイオは今日何度目かの薬を目に投与する。そうして乾燥を防ぐのが一番らしい。あとは強い光を受けるのも辛いようで、今もこうして焚き火から離れている。蒸し暑いからと、ゴーグルや覆っていた布は外していたが、義眼ではない方の目は閉じていた。
「……お前さあ」
 岩に寄りかかりながら、ギレイオは昼間のことを思い出して問うた。
「やっぱり、あの時ちょっと怒っただろ」
「……妙なことを蒸し返すんだな」
 剣を傍らに、車に寄りかかるサムナは表情一つ変えずに答える。
「いや思い出したから。お前が怒るのは珍しいし」
「戦闘中にお前が勝手に動いた時は怒っているぞ」
「ありゃ怒鳴るの間違いだろ」
「どちらも一緒だろう」
「違えよ。お前が怒鳴ったくらいで怒られたなんて思うか」
 それも問題だな、と、サムナは今度から怒鳴り方を変えるべきかと、検討項目に追加した。

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