番外編 Previous×Prologue



 凄みをきかせているのだが、言っている内容がどうもピントがずれていて、間抜けに聞こえた。ギレイオ自身も治りかけでどうでもよくなってきている一方、八つ当たりせずにはいられない、というところだろう。
 事の始まりは二週間前、とある機械工場で、動かなくなった工作用機械の整備をギレイオは頼まれた。特殊な技術が必要だとかそういうものではなく、ギレイオ自身も気楽に構えていたのである。それが、整備中に誤って溶接の光を見てしまい、目に火傷を負ったのだった。
 丁度、溶接工と受け答えしながら機械の点検項目をチェックしていた時で、慣れた者ならゴーグルはせずに、溶接工と溶接のタイミングを合わせておけば大丈夫だった。それが運悪くタイミングを間違ってしまい、しかし幸いにも、火傷はそう深いものではなかった。
 怪我をしてもなお、治療費と損害費と称して代金を割り増しにし、懐が暖かくなるように仕向けたギレイオのやり口は、さすがというかあくどいと言うべきか。必死に謝っていた工場長と溶接工を見ながら、サムナは逆に申し訳なくなったのを覚えている。
 とりあえず点眼用の薬をさしておけば大丈夫、との医者の言葉を頂き、それ以降、ギレイオは極力、火傷した片目を使わないようにしており、車の運転もこのようにサムナが代わってしている。
 元々、片目が義眼なので生活に不自由はなかった。ただし、大事なもう一方が火傷で赤くなっているを見ると、サムナはやりきれなくなる。
「昼食を取るか?」
 ギレイオの腹の虫を思い出して、問うた。
「いや、いい。夜までに安全な場所を見つけるのが先だ」
「あるといいんだがな……」
「確か、あった。アクアポートの近くに、小さな岩山があったはずだ。そこなら身を隠す場所くらいあるだろ」

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