番外編 Previous×Prologue
暇つぶしに聞いたクチだろうが、生来の性質らしく、確かな答えを得るか、自分なりに納得しない限りは引き下がらないのがギレイオである。サムナは少しだけ逡巡した後に答えた。
「おれはお前がいないと、動くことが出来ない。だが、おれがお前に返せるものはごく僅かだ。この機会に少しでも多くのものを返しておこうと、思っていた」
「……えらい、ややこしい考え方するのな、お前」
めんどくさそうに顔をしかめて、岩から体を離し、じっとりとサムナをねめつける。
「はっきり言って、俺は俺の都合をお前に押し付けてるようなもんだぞ。お前、ちょっとは怒ったっていいんだからな」
「そこまでは考えていない」
「考えろ、タコ。んな不健康なことじゃなくて、もっと建設的なことを考えろ。お前の頭はそのためにあるんだ」
ギレイオは自分の頭を指差して言った。
「死ぬまでに使い切ってやれ。それがお前のやることの一つだ」
しばらく相方の顔を見ていたサムナだったが、やがて、口許に微かな笑みを浮かべると、「わかった」と答えた。きっとそれは難しいことに違いないが、それを何ら躊躇なく言い切ってしまうギレイオの考え方が好きだった。
ようやく自分なりに納得したらしく、ギレイオは背中を岩に戻して仰向けになった。光は見えなくても、そこに広がるのが本当の暗闇かそうでないかはわかる。夜空はこの場合、後者だった。弱弱しい星の光が、ガラスの左目に反射した。
「まあ、そこまで気にするなら明日から全部お前に任せてやるよ。目が治るまでな」
「……一つ聞いていいか」
「なに」
ギレイオは体をずらし、眠る体勢に入った。サムナは構わずに問う。
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