061.虹色キャンディー(4)
「……ほんと?」
「ほらな。馬鹿につける薬はないっていうから、親切な幼馴染が汚れ役を買って出たんだ。お陰で少しは考えられるようになっただろうが。なってないなんて言わせねえ」
呆気に取られてこちらを見るヨルドへ、リドゥンは指をさした。
「それ読んでもわからなければ、田舎に帰れ。そしたらお前にはただ、魔法の才能がなかったってだけだ」
じゃあな、と言ってリドゥンは図書室を出て行った。
一人残されたヨルドは、床にぺたんと座りこんだまま、膝の上で抱えたままになっていた本を開く。すると、しおりが挟まれたページがあった。ぱらぱらとめくっていくと、そこには小さなメモにリドゥンの字でびっしりと、ページの内容の解説が書き込まれていた。さっと目を通すと、ヨルドの課題に関するものであるとわかる。
ヨルドにもわかるように、ではなく、もう一手間かけて調べないとわからない具合が、いかにもリドゥンらしい。
──じゃあ、ずっとこれを書いてくれていたんだ。
ヨルドは机に戻り、気合いを入れなおして課題に取り組んだ。リドゥンの指摘通り、あの「気分転換」が功を奏したようで、それまでの不調が嘘のようにすらすらと完成へと近づいていく。
そうして翌日、ヨルドは校内でリドゥンを見つけ、声をかけた。
「あげる。昨日のお礼」
「なんだ。帰る決意でも固まったのか」
「違うってば!いちいち失礼な奴だなあ。これが課題の成果なの」
「これが?」
そう言って、リドゥンはヨルドから渡されたキャンディーの包みを受け取り、取り出した中身を太陽に透かして見た。
「へえ」
リドゥンの顔に笑みがこぼれる。
「綺麗じゃん」
五色に彩られた虹色キャンディーが、二人の顔を喜色に染めた。
終り
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