070.カラクリ(3)


「じゃあお前、その気もないのに人の気持ちを受け取れるのか?パロルが頑張ったって、それお前の主観だろ。俺はパロルがどう頑張ったのかなんて知らない。でも受け取っていいものと、そうじゃないものの分別は出来てるつもりだ。頑張ったからって何でもほいほい受け取る奴の方が、神経を疑うね」

「でも」

「それに、喧嘩するかしないかは俺の自由だ。奴らが俺を八つ当たりの対象に考えてるならそれで結構じゃねえか。八つ当たりしてくる奴の心情なんて斟酌してやるほど俺は優しくないし、知ったところで相手が止めると思うほどおめでたくはない。奴らがそうすることでしか怒りを表現出来ないなら、それも一つの方法だ。馬鹿だとは思うけどな。否定はしない。そこに、お前の考えを俺に押し付けて非難するのは筋違いだ」

 つらつらと飛び出てくるリドゥンの反論に、ヨルドは黙り込んだ。しかし、リドゥンを睨みつける目に諦めの色は見えない。

 ここ数日、自分を避けたかと思えば今度は癇癪か、といささか呆れもした。言葉は幼稚な罵りあいから成長しているが、中身は子供の喧嘩のそれである。

 リドゥンは仕方ない、と嘆息した。

「……手紙を受け取らなかったのは、その場にサジェインの馬鹿もいたからだよ。あの単純の行動見てりゃわかるだろ。パロルだって結局嫌っちゃいなかった。そこで俺が手紙なんか受け取ったらどうなる?確実に三人のうちの誰かが学都からいなくなる」

「……それだって、リドゥンには関係ないじゃん。理由は?あるの?」

「お前は泣くだろ、少なくとも」

「……パロルは五年卒組だったもん」

「俺らと喧嘩別れするのと自主的に出るのとじゃ話が違うって、お前でもわかるだろうが。過去形で言うってことは残ることに決めたんだな?ならそれでいいじゃねえか。それに、俺は自分が認めた人間を自分で貶めるようなことはしない。絶対」

 ヨルドはじっとりとした目つきでリドゥンを見る。

「……じゃあ私を馬鹿にするのは何なんだよ」

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