aereo;3──preludio


鳥が好きだった。
大地が嫌いだった。

食べることが好きではなかった。
酒も苦手だった。

趣味はなかった。
好きな人はいなかった。
紙飛行機を作るのは得意だったが、紙飛行機そのものは嫌いだった。

とても眠かった。
首の後ろから背中は生暖かかった。
手足の先は冷たかった。

操縦悍から手を離したくなかった。
フラップを上げたかった。
尾翼を確かめたかった。
振り返ることも出来なかった。

風防が割れていた。
そこから風が吹き込んでいた。
笛のようだった。

生きたかった。
倒したかった。
殺したかった。
愛したかった。

生きたくなかった。
倒したくなかった。
殺したくなかった。
愛したくなかった。

空の青さを見続けていたかった。
雲の広がりの行方を見定めたかった。
太陽の輝きを一番に浴びたかった。
風の声を聞きたかった。
大地から解き放たれたかった。

暗い大地にだけは戻りたくなかった。

まだ撃てた。
まだ倒せた。

まだ飛べた。



──もっと、飛んでいたかった。

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