aereo;3──settimo


 ミーティングといっても簡単な打ち合わせ程度だった。アクロバット飛行しかしないのだから、そうだろう。高度の限界と空域の指定、つまり見やすい場所で飛べという話だ。
 早くコックピットに収まりたいと思いながら、司令官の話を聞いていると、思わぬ言葉が飛び出した。
「簡単な模擬戦闘ならしてもいい」
「それは実弾で、ですか?」
 ミワが問うが、司令官は頭を横に振る。
「無論、そんなことは許されない。誰が来るかわかっているだろう」
 ミワはくすりと笑った。
「そうでしたね。失礼しました」
 わざとした質問だ。司令官は咳払いをする。
「最後に変更点が一つ。新機体が来るという話は聞いているだろう。当初は飛ばさない予定だったが、整備が早く終了したのでミワに乗ってもらう」
 アヤセは隣を見た。ミワが小さく頷く。
「お披露目も兼ねたアクロバットだ。見せつけてこい」
 偉そうな口振りに、アヤセの方が引っ掛かりを覚えた。ミワの腕なら、そんな必要はない。誰もが自然と目で追うような軌跡を描く。
「テスト飛行は各々、必要なら済ませておくように」
「あの」
「何だ」
 ミワがちらりとアヤセを見て言った。
「僕の機体に、アヤセが乗ることは可能でしょうか」
 司令官は二人を見比べる。見比べられても、アヤセにも予想外の話だった。心臓がどきどきする。
「整備は?」
「済んでいます。航行スケジュールにも問題ないはずですが」
「アヤセ側に問題がなければ構わない。どうだ?」
「大丈夫です」
 いつもより大きめな声で答えた。司令官は頷く。
「管制と式典進行には話しておく。整備には各々伝えておくように。二時間後にパイロットスーツに着替えて事務棟玄関に集合。以上、解散」
「了解」
 司令官が出るのを敬礼で見送ってから、二人はミーティングルームを出た。並んで歩きながら、アヤセはミワを横目に見る。
「なに?」
 アヤセの視線に気付いたミワが、前を向いたまま問う。
「どういうつもりだ?」
「なにが?」
「さっきの話」
「僕は新機体に乗りたい。だから君を僕のシルフィに乗せる。機体性能が同等ぐらいでないと、模擬戦も出来ないから」
「わかった。違う?性能は、やっぱり」
「少しは軽くなっている。回転はきっとそっちの方が速い」
「新しいのは馬力があるって聞いた」
「加速は早いよ。スタミナもある」
「強そう」
「強いと思う」
 玄関を出ると、少し温かくなった空気が体を包んだ。少し無言になり、格納庫に向かう。
 並んだ格納庫が見えてきたところで、ミワが軽く手をあげた。
「それじゃあ」
「先にテスト飛行させてもらうよ」
「うん」
 ミワは滑走路を横切って、向こう側の格納庫へ行く。この前のことを聞こうと思ったが、今はそんなことはどうでもよかった。
 空が少しだけ雲を連れて来ている。
 でも、最高の日だ。


fin

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