第二十五章 奪還
言いながら外套を外し、ベリオルの上にかけた。
今だ乾かない血が外套に滲み出る。
「……お前の『秒針』はベリオルの記憶を見せることも出来るのか」
微かに振り返ったイークに尋ねられ、アスはしばらく考えた後に口を開いた。
「──…私が見せなくても、イークが覚えていれば彼も喜ぶよ」
そうか、と答えた声から緊張が解けていくのを感じる。
「……至らない王ですまなかった。ゆっくり休めと言いたいところだが、たまにはリファムの大地を見守ってくれると助かる」
屈み込んでベリオルを見る横顔に苦笑が浮かんだ。
「よくやった、ベリオル」
不意に、暖かい風が遠慮がちに吹く。
満面の笑みを浮かべたベリオルが答えたかのようだった。
あなたの為ですから、と。
二十五章 終
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