青春Wonder | ナノ


跡部と惚れ薬を飲まされまして


立海との練習試合中。
真夏の暑い日差しの中、撫子はせっせと働いていた。

「滝も幸村君もいるんだ。妄想したら私死ねる。ここは仕事に集中して雑念を吹っ飛ばすんだ。」

「ねぇ撫子これ飲んでくれない?」

「……………。」

せっせと働いている中、滝から差し出されたドリンク。撫子はそれを見たままフリーズ、先ほどまで行っていた仕事を止め滝に向き合う。

落ち着け俺。良いかよく考えろ。滝様が今までに私なんかにドリンクを作ってくれたことがあろうか?いや、無い。ということは何か裏があるわけで…。

「撫子なら裏があっても飲んでくれるよね?」

笑顔を貼りつけ、ズイッと撫子の顔に近づける。

「うッ、……死には…しませんよね?」

「うん、死ぬわけないよ。流石に殺人者になりたくないし。」

撫子は滝からドリンクを受けとり一気に飲み干した。


「わー、撫子良い飲みっぷりだー。」

「…うぇッ……何この味?」

何とも言えない、甘いようなでも甘すぎないよな?砂糖水の様な?

「惚れ薬だよ。」

「へ?」

滝が信じられないことを言った。惚れ薬などという二次創作では定番の。そして三次元にはあってはならないものの単語である。

「これ、僕と幸村君が調合したんだけどね。成功したかどうか実験したかったんだ。」

「何故、私を実験台にした!惚れ薬なら忍足とか跡部とか仁王とかさぁ!私がテンションあがるようなやつらに飲ませてランデブーさせてよ!むしろあいつらに飲ませてやってください、お願いします。」

「やだよー、男同士が絡んでてもむさいだけじゃないか。」

「身長デカい私が絡んでも同じようなもんでしょうがぁ!」

「大丈夫、撫子黙ってれば結構いい線いってるから。」

「なっ、……ん?なんかすごい心臓バクバクしてきた。」

「あ、効果が出てきたみたいだね。ってことは幸村君も跡部に飲ませるの成功したみたいだ。」

「え…跡部?」

なんだろう、跡部って聞いた瞬間、鼓動がよりリズミカルにはねた…?

「そう、撫子が飲んだ惚れ薬Aは惚れ薬Bと対になってて飲んだ者同士しか惚れあわないっていう便利な仕掛けになってるんだ。」

「何故跡部にしたし!赤也君とかの方がよかった!」

「跡部の方が絵的に面白いもん。ほら、コートの方に行ってごらんよ。跡部が撫子を探してると思うよ?」

「面白さだけを求めないでッ……っ、つ…跡部!」

跡部のところになんて行くまいと、その場に踏みとどまっていたのだが、その場に踏みとどまることなんて出来なかったらしい。撫子は跡部のいるコートの方に駆け出した。そしてコートの方に到着。

「椿崎!いや、撫子!」

跡部が撫子の姿を捕えたようで撫子に駆け寄る。因みに跡部と練習試合をしていた仁王はポカン。

「景吾ぉッ!」

撫子も跡部に向かって駆け出す。そして二人はあつーい抱擁をみんなが見ている中で披露した。

「「「……………え?」」」

その光景を見ていた氷帝メンバーと立海メンバーはそれぞれ試合中にも関わらずその場に固まった。幸村と滝は端の方でハイタッチをしている。どうやら実験成功でテンションが上がっているようだ。

「どうしちゃったんですか!?それ跡部さんですよ!」

「そうだぞ、撫子さん。跡部はあなたの守備範囲外のはずだ。」

「うわぁああ!そんな跡部に抱き着いてる撫子なんて見たくないC!」

ジローが撫子に後ろから抱き着こうとした。むしろ跡部と撫子を引き離そうとした。しかし撫子は体を翻しジローのハグを避けた。いつもなら避けないはずなのに。よりメンバーの間には戦慄が走った。

「「「!!!?」」」

「私に触っていいのは景吾だけなんだからね!ねぇ?景吾ぉ。」

「あぁ…ジロー、俺の女に触んじゃねぇ。」

「跡部が……壊れた…壊れたC!!」

慌てるメンバー。無理もない。あんな俺様な跡部が、撫子に対しては辛辣な言葉ぐらいしか与えていない跡部が、「俺の女」と言い放ったのだから。
跡部は仁王とのゲームを放棄し、撫子も仕事を放りだし、二人とも観覧席へと移動してイチャラブしている。
二人共それなりの容姿をしているから絵になる……のだが、のだが。撫子と跡部の性格を知っているメンバーにとっては…何とも言えない恐怖があった。試合にもろくに集中できなくなるぐらいには。練習試合どころではなくなってしまったら、みんなは早めの昼食を摂ることにした。


「「「…………。」」」

「……こうなる確率100%だったぞ。」

メンバーは自分達の行動の浅はかさを思い知らされた。お母さんが作ってくれたお弁当が全く美味しくない。むしろ味がしない。極度の同様のせいかもしれない。

「はい、景吾アーンして?」

撫子は自分の弁当からから揚げを箸で掴み跡部の口元に持っていく。

「あー…ん。美味ぇなこれ、撫子の手作りか?」

「違うの…これ冷凍食品なんだ。景吾に私の作ってきたお弁当食べてもらえると思わなくって、手抜きしちゃったの…ゴメンね?」

「そんなの問題じゃねぇ。撫子に食べさせてもらえるだけでその辺の生ごみでもご馳走だ。」

「やだ照れるじゃないッ!」

「ホラ、俺様も食べさせてやる。」

「…ん、おいひぃ。」

「……あかん、この空気耐えれへん。」

忍足を始めメンバーは衰弱している。

「忍足さん、ラブロマンス見るんですよね?その耐久性を利用してあの空気をぶち壊してきてください。」

「無理無理無理、俺無理、無理。」

どうしようかとメンバーは作戦会議。
シリアスな空気とイチャラブな空気がこんがらがって部室の中はカオスだ。そしてもっと混沌とする出来事が起きた。最も恐れていた事態が起きた。

チュゥ―――。

「「は…?あああああああああああああああ!?!?」」

「椿崎と跡部がチュウしよった!?え、これなんなん?なんていう乙ゲの類なんじゃ!?わあああああああああ!?」

「落ち着いて下さい!ヘタレ君!いえ、仁王君!むしろ、あああああカメラ。カメラは何処ですか!?この際ケータイカメラでもいいです。絵になるんで一枚!一枚だけ!」

「仁王先輩も柳生先輩も落ち着いてくだい!撫子さんの唇がー!ヅイッターで言ってやる!『#拡散希望 あの笑顔動画の神撫子さんの純潔がナルシストに奪われたー!ぁああああああああああああああああああああああああああ』」

「赤也も落ち着け、撫子さんは今度の小説の為に体を張っているのかもしれない。流石撫子さんだ。」

「たるんだらああああああああああああ、ゴフッ!」

幸村が裏拳で真田を沈めた。

「うるさいよ真田。皆も落着きなよ。もう効力切れるから。」

幸村と滝が言う。

「皆、なんで跡部と撫子が惚れ薬を飲んだって分かんないかな。こんなにキャラ崩壊してるのにね。」

「「「「…惚れ薬?」」」」

「そうだよ、ほらもうすぐ楽しいことになるよ。」

そう言われて視線を跡部と撫子に移す。チュウはもうしていなかったが、顔が極端に近かった。そして二人は目を見開いて、目玉が落ちるのではないかと言うぐらい見開いて互いの顔を見つめ合っている。

「ぎ、」

そして撫子は擬音語を口にした。

「「「ぎ?」」」

「ぎゃぁああああああああああああ!!??!?なんだなんだ!?何でこんな近くに跡部の顔なんてあんの?意味わかんない!覚えてないよ?なんで部室に居るの?私、コート……うわああああ!!あ、思い出したぁ!!でもや、思い出さなくてもいいよ俺の脳内、むしろ忘れさせてぇええええ!!いぃいぃぃいいやぁああああああああああああああ!!!」

「椿崎…テメェ……。」

「跡部のばーか!ばーか!すっとこばぁか!!なんで幸村君からドリンク受けとってんだよ!逆らえよ!キングだろ!?」

「テメェはバカか!魔王に逆らえるわけねぇだろ!お前こそなんだよ!意味分かんねぇよ!」

「ッッわああああああああ!!!!!!跡部死ねぇええ!!」

勢いに身を任せ跡部を殴る。パニック故、撫子は自分の行動が制御不能となっている。そのまま跡部はログアウト。

「ジロー岳人マスター赤也君慰めてぇえええええ!!」

撫子は自分の萌えに抱き着き、傷を癒そうとした。そして名を呼ばれた人達は哀れみの目を込めて撫子の心のケアを行い、騒動はひと段落した。
そんな空間の中、滝と幸村は次誰に飲まそうか、と新たな作戦を練りだした。次の標的が撫子で無い事を祈るしかなかった。






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100000hit企画第2弾

紅姫様リクエスト『跡部とランデブー(惚れ薬ヒューチャリング滝、幸村)』でした。

gdgd感が否めない。といいますか、このサイトで初めてチューをしやがった!なんということだ!今までハグまでだったこのサイトについにチューという桃色展開が!しかし、描写は一切なし。だって詳しく書くのなんか恥ずかしいんだもん。たから擬音語だけ。大変申し訳ないです。

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