二人の少年が外に飛び出したとさ、 | ナノ


04


コンコン、

朝、静かにドアを叩く音が聞こえ、三日月が先に覚醒した。まどろみの中、先ほどの音は幻聴かと思い崇雷にしっかりと抱きつき二度寝をしようとした。

コンコンコン、

しかしノックの音は幻聴ではなく、再び音が聞こえてきた。

「…崇雷。崇雷。」

「んー…んー……。」

崇雷はまだ寝ぼけていたため、三日月がベッドから這い出てドアを開けた。開けた先には人当たりのいいおばちゃん職員が起こしに来たのかと思ったが、そうではなく、屈強な体格をした黒いスーツを身にまとい表情の分からなくする黒いサングラスをかけた男が立っていたのだった。

「…はて?…あ、新聞は間に合っておるぞ。」

何故このような男が訪ねてきたのか分からない。頭をポリポリとかきながら三日月はとりあえず、自分の中にある知識でお断りを申し上げた。

「んー…三日月?どうした?」

やっとのことで崇雷も覚醒し、目をこすりながら三日月に話しかけた。

「新聞の押し売りが。」

「違う。」

「違うらしいから、では宗教の誘いか!残念だったな、俺が神だ!」

「違う。歴史修正主義者対策本部のものだ。八重桜家嫡男。付いてきてもらおう。」

「んーその苗字を出されたってことは…拒否権はないんだろうな。」

しっかりと覚醒しないながらも黒スーツが言っている内容は把握できたのでその発言に従うことにする。スエットからフォーマルな服へと着替え、身支度を済ませて部屋を出た。それから黒スーツの後をついていき、施設の中にある面会室へと案内された。



面会室に通され、その先には更にスーツの男が一人といかにも真面目そうな女性が一人ソファーに座っていた。
その対面にあるソファーに座るように促され崇雷は向かい合う形で三人のスーツ集団と面接体勢となった。なにこの圧迫面接。
しかしそんなことでは臆することはない崇雷。ふんぞり返った姿勢で座ると、傲慢に口を開いた。

「で、俺はなんで本部の奴に目を付けられた。昨日から俺はこの先暫くはニート生活を謳歌する予定なんだが。まさかその予定をぶっ潰すような事、言わないでくれるよな?ん?」

「そんな物言いを出来る身分ですか貴方は。」

「できる身分だ。最低成績を総なめにしていた俺を舐めるな。既に開き直ってるよ。」

「ハァ。これだから落ちこぼれは。」

「…テメェこそ、俺様に頭を下げねぇといけねぇ事案を持ってきてるんじゃねぇのかよ?おばさん。」

「おばっ…ん、ん。失礼。少々頭に血が上りました。申し遅れました。私は毘荊栞子と申します。」

「おばさん、なに名乗ってんの?馬鹿なの?」

「勿論偽名です。仕事上名乗る字名です。貴方も使っているでしょう。なんでしたっけ?恵でしたっけ。」

「ああ。」

「それでは本題に入らせていただきます。単刀直入に言いますと、『ブラック本丸の審神者が殺されました。貴方にはブラック本丸の後任をしていただきたい』というものです。」

「…。」

こりゃ驚いた。新しい本丸が思いのほか作れたので着任してくださいとかそう言った以来かと思っあら予想の斜め上を言っていた。ブラック本丸に着任しろだとかそんなこと言われるとは思わなかった。思わずふんぞり返った姿勢から、前かがみとなり縮こまった。やるせないこの感情の昂ぶりをいったいどうしろというのだ。崇雷は頭を抱えてそのまま会話を続けた。

「…はは、冗談。無能な俺がブラック本丸の後任だぁ?頭湧いてんじゃねぇの?」

「いいえ、大真面目です。貴方の審神者能力には期待していません。貴方の強いメンタルが必要なんです。」

「……知ってる。知ってるよ。説明すんなよ…これでも養成所は出てんだよ。そこまで無能じゃねぇよ。ブラック本丸の定義もその対処も…嘘だろ…審神者として無能だからそんな面倒くさい役回りは回ってこないと思ってたのに。」

「無能だからこそ必要とするときもあるんですよ。」

「そんな説明、教科書にはなかった。」

「でしょうね。今、この事例が例外としてあがりましたから。今までは玄人審神者をブラック本丸へと派遣してましたからね。」

「何故その例外を俺にした…!昨日卒業した新米の中の新米そして無能と銘打ってもいいような審神者だぞ。」

「だから言ってるでしょう。貴方のメンタルだけを欲していると。とりあえずその資料に目を通してください」

机の上に置かれていた分厚い資料を目を通せと言われた。こんな読むと眠くなるような物、放り投げてしまいたい衝動にかられたが、それをして後悔するのは数分後の自分であるためそれはぐっと我慢した。表紙を捲り、目を通す。
こんな分厚い資料を全て読み終わるのは何時間かかるんだ。概要だけでいいかなと妥協が頭を過ぎったが、チラリとスーツ達の方を見ると、すべて読むまで待ちますオーラが出ていた。
了解しました。すべて読ませていただきます。
数時間後やっとの思いで読み終えて男審神者は目頭を押さえた。


要約するとこうだ。
「ブラック本丸の審神者は何者かによって殺されました。」


ブラック本丸と称される本丸には黒審神者がいる。その黒審神者が殺されるなんて無茶苦茶な結末ではないむしろ当然の結果とも言える。神が鉄槌を下すのだ。
男士達の疲労は無視。軽傷は傷でない。手入れもせず、出陣は強要する。そんな無茶苦茶な扱いを付喪神にするのが黒審神者だ。そんな審神者を何故今まで政府は黙認していたのか。それはその黒審神者がとても有能だったからだ。存在するすべての男士達を本丸の中に存在させていたからだ。そんな美味しい力を持っている審神者を失うのには政府にとって、とても大きな痛手だったのだ。だから取り締まることなく甘やかし黙認していた。だからこのような大事にならない限り、ノータッチの姿勢をとっていた。
それを黙認できるのはまったく関わりのない政府だけ。その黒審神者の下にいる男士達にとっては黙認なんてできるわけがない。しかし力の弱い男士達は黒審神者からの扱いを甘んじて受けなければ存在すら危うかった。契約をしているため、勝手に本霊に戻ることができない。さらに謀反を起こすことができない。黒審神者はそれをいいことに虐げた。反面、このブラック本丸の三日月は己の価値故に大切に大切に傍に置かれたらしい。象徴の様に、そこにあるだけを強要された。力の弱い男士たちが虐げる様子を一緒になって嗤う事を強要されたらしい。なんて性格の悪い黒審神者だったのだろう。同じ神をぞんざいに扱う黒審神者を同じ神が黙っているわけがない。
だからこそ、黒審神者は殺された。何者かによって。
黒審神者は自身を自身で守る力は一切持っていない頭脳派だったらしく、抵抗することなく息絶えた。それから定期連絡が途絶えたため、この本丸の全貌が明るみに出たのだ。

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