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そして卒業敷の日、周りの女子達は既に新たな本丸の審神者として派遣が決定していた。 どんな本丸にしようか。どんな庭にしようか。ワクワクとした空気が立ち込めながら、ゲートをくぐりそのまま自身の本丸へと移動を開始していた。リアルで門出のときであった。 反面崇雷は派遣先が決まっておらずこのまま卒業してプー一直線だ。それも仕方のないことだ。男審神者は在学中順調に最低記録を塗り替えて、ある意味でも伝説の人となっている。そんな底辺な人に更に、男に、誰が派遣先を用意しようか。そのため、同期で派遣先が決まってない審神者は崇雷だけになった。 もう一人の男子は?と言われると、体調不良で、一年留年してしまったのだ。だから崇雷と一緒には卒業できないらしい。その男子の話は今は全く関係ないからこれまでとしよう。 さて、派遣先も決まらず途方にくれているだろう崇雷は、 「ニートばんざぁあああい!夢のニート生活だぁあああ!!俺は審神者を辞めるぞ三日月ぃい!」 テンションに身を任せ、着ていた千早も投げ捨てて卒業証書を掲げながら高らかに叫んで空いた。 「それは困った。新たな主を探しに行かなければならないのか。爺は激ショボシュンシュン丸だ。」 「ああ、ごめんごめん。ついその場のノリとテンションで言っちまっただけで。辞めないよ。誰がこんな可愛い三日月を置いて辞めるもんか。」 「主は俺を可愛いという。俺としては綺麗と言われた方がしっくりくるんだが。」 「綺麗な爺は激ショボとか言わない。身内目で見てお前を可愛いと言わなくてどうする。お前は可愛い。」 「面と言われると照れるな。」 「照れたお前も可愛いから安心しろ。」 「爺安心した。して崇雷よ。ここで誰を待っているというのだ?」 「俺の行き先案内人だよ。」 後方はリアル門出をしている女子達で賑わっている。崇雷はそれらに一切目を向けず、ある機関の職員の到着を待っていた。するとジャージに白いエプロンを着た人当たりの良さそうなおばちゃんが崇雷に近づいてきた。 「待たせちゃって悪いわねぇ。これから案内するわ。ようこそって言っていいのか、悩んじゃうんだけど、ようこそ。審神者保護観察施設へ。審神者様の幸多からんことを。」 「ありがとうございます。俺なんかを受け入れてくれた貴女に神のご加護がありますように。」 崇雷はやってきたおばちゃんの後ろについてこれから当分お世話になるだろう施設へと向かった。 審神者保護観察施設。それは審神者となった人物が諸事情で審神者を続けられなくなったり、また、ブラック本丸となろうとしていたのを摘発された審神者が更生させられていたり、崇雷のように派遣先が決まっていない人達が入る、言わば審神者の為の施設である。審神者の力を持った人間がおいそれと一般生活に戻れるわけがないためこういった施設があるのである。 崇雷はどうせ自分は派遣先はないだろうからこの施設へと入ることを自らが希望していた。あの家に今更帰れるわけもなし、帰るつもりもなかったのだ。 施設を簡単に案内され、自身の部屋へと案内された。普通に生活を送る分には不便はなさそうである。 さて、今日も疲れた。もう寝ようとベッドに寝転んだ。 しかし気づいた。まだ自分のものが養成所の寮から届いていなかった。つまりぬいぐるみがない。結論として、寝れない。 「…クソかよッ!」 「主、主、よい考えがあるぞ!」 「悪い予感しかないが、一応聞こう。」 「俺を抱いて寝ろ!」 「だよな!それしかないよな!うん、知ってた!おやすみ三日月!」 「はっはっは、清くて良いぞ我が主!」 「自分の欲望に忠実になった結果だ。クソ、ぬいぐるみよりめっちゃ落ち着く…!」 「当たり前だ。主の霊力で保っている身ぞ。心地悪いわけがなかろう。」 三日月と共にベッドに入り、彼の柔らかい髪をなでなでしながら崇雷は安らかに眠りに入った。睡眠を貪ることは大好きだ。夜、しっかり寝れることは何よりの幸せだ。そんなことを崇雷は昔、他愛もない会話の中で三日月と話した。明日から安眠できなくなるなんてことを全く思わず、いつものように夢の中へと意識を投じた。 |
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