Hetalia Axis Powers | ナノ


02


「神聖ローマァッ!?」

イタリアは寝ていたのだが妙な夢により覚醒した。神聖ローマの夢を見たのは数年振りだった。神聖ローマとフランスの激戦をイタリアは夢で見た。神聖ローマが斬られ倒れてしまうところも余すとこなく、これがただの夢であってもイタリアの心を乱すには十分すぎるものだった。

「神聖ローマ…あんなに血まみれで、傷だらけで、痛そうで、それで、それで、背中を斬られて血がいっぱい出て、動かなくなって…ッゃ…やだよ、神聖ローマ…会いたいよ、何で会えないの?何で会いに来てくないの?もう会えないの?そんなっ…そんなの、やだよ!ゃやあぁああぁぁぁああぁっ!!」

今まで神聖ローマに会えない悲しさ、寂しさを我慢して過ごしていたイタリアだったがイタリアにとって恐怖でしかない物を見てしまった。イタリアは枷が外れたかのように泣き叫んだ。
その声を聞き付けたハンガリーとオーストリアがイタリアの所にやってきた。

「どうしたと言うのです。お馬鹿さん。今の時間を考えてから大声を出しなさい。」

「どうしたの、イタちゃん。怖い夢でも見たの?」

「ぅえ、神聖ローマが、フランス、兄ちゃんが、…っぇ、き、傷だらけ…で、血、まみれで、神聖ローマが…ふぇっねぇ、神聖ローマ、は、また僕に会いっ、に来てくれるんだよね、ね?」

イタリアの涙ながらの話を聞くとオーストリアとハンガリーは顔を見合わせた。イタリアの見た夢は、ただの夢ではなく。実際、昨日の戦いそのものだったから。

「…イタちゃんっ。」

ハンガリーは動揺を隠しきれない。どのように声をかければいいのか分からず、言葉を紡ぐことを躊躇った。

「神聖ローマは先日の戦いで行方不明になってます。あなたの見た夢は現実で起こったことです。」

ハンガリーは躊躇したものの、オーストリアは躊躇う事無く事実を伝えた。それが最善だと、オーストリアは判断したからだろう。

「オーストリアさんっ!何故そんな事を言うんですか!?」

「お黙りなさい。私は真実を述べただけです。」

「オーストリアさん、貴方はっ…イタちゃん!?」

イタリアはオーストリアとハンガリーの方を向いていた。厳密に言うならオーストリアとハンガリーの方を向いていたがイタリアの瞳にはオーストリアもハンガリーも映ってはいなかった。
目もとは泣いたために赤く腫れ、目は虚ろだった。目は何処を向いているのか焦点はあっていなかった。

「そんな、神聖ローマが、神聖ローマが…嘘…嘘嘘嘘嘘っ!約束したもん、また会いに来てれるって、約束したんだもん!会いたいよ、寂しいよ…神聖ロー…マ……し、せ…マ…。」

そう言うとイタリアは気を失った。緊張の意図が切れたように、心の支えがなくなったように、ベッドに伏した。そんな様子に慌ててハンガリーはイタリアに駆け寄った。

「イタちゃんっ!熱っ。」

咄嗟にハンガリーがイタリアの額に手を当てると、信じられないぐらいの高熱を発していた。思わず手を引いてしまうぐらいに、イタリアは発熱していた。

「オーストリアさんっイタちゃんが、イタちゃんがっ…!」

「落ち着きなさい、貴女が慌てても仕方有りません。医師を呼びましょう。それからは医師に任せるのが良いでしょう。我々が出来ることはありません。」

「……っはい。」

イタリアから離れオーストリアとハンガリーは廊下で二人きりとなった。ハンガリーは先ほどのオーストリアの発言がどうしても納得がいかないようでオーストリアを問い詰めた。

「オーストリアさん!貴方があの時あんなことを言わなかったら、イタちゃんはあんな風にならなかったのにっ!どうして神聖ローマは死んだとっ!」

「…ハンガリー、貴女、勘違いしていませんか?行方不明になったとは言いましたが、死んだなんて一言もいっていませんよ。」

「えっ!?だったら、生きているんですね!」

「そうとは限りません。死んでいるかもしれません。しかし、死亡を確認できてない今、まだ希望があるというだけの事です。今プロイセンに確認に行って貰っています。」

「可能性が微々たる量でもあるなら、帰ってくると信じます。神聖ローマはイタちゃんに会いに来てくれると、帰ってきてくれると、私は昔からあの二人を応援していますから。」

「そうですね、よい心がけです。」

「だったらイタちゃんにも伝えに行きます。」

ハンガリーはイタリアの所に行こうとしたがそれはオーストリアに止められた。

「今はお止しなさい。熱で苦しんでいるのですから聞こえないでしょう。熱が下がったらお伝えなさい。」

「はい!」

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