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06


「ん?イカサマ?」

原作にはない設定だ。イカサマというと、既に立海大の仁王雅治がいる。キャラ被りもいいところだ。しかし、あのようなバラすイカサマでないところを見ると、幾分か白石の方が性根が悪い気がした。

「知りたいか?」

「うん。知りたいね。」

「やったら、教えて下さい白石様って言うんやな。」

「…はぁあ?」

白石がとても偉そうにふんぞり返りながら稀李の言葉を待っている。

「ほら、言いや。言おうや。対価やで。土下座をプラスしてくれても構わんで。」

「…君、ドSだね。」

「おん。俺はドSや。」

「だったらこっちも考えがあるよ。」

稀李は椅子に座っていた状態から白石の正面まで歩いて行った。一体何をするというのだろう。白石はその稀李の行動を静かに見ていた。それが後の祭り。稀李に悪態をついて、そのまま無傷で居られるわけがない。悪態を着いた瞬間、逃げてしまうことが第一選択肢であった。

「なん………ッ!?」

「私が教えてって言ったんだから教えなさい。君に拒否権なんてないの。って言うか、私以外の人間に私からの言葉かけで拒否なんてさせない。させるわけがない。何故なら、私がイイエ、嫌だ。やりたくない。そんな言葉が大嫌いだからだ。私の行動を妨げるなら、それは何人たりとも存在を許可しない。同類の君であってもだ。分かった?白石蔵之介。」

稀李は白石の新しく、先ほど治療を終えた傷をグリグリと押さえつけている。押さえつけながら、白石に先ほどの発言の撤回を求める。稀李という人物は、なんとも自己中心的、いや、自己愛の塊であった。

「イテテテテテテッ!?堪忍!教えるから、傷押さえんといて!」

「次からその足りない脳みそを活用して、私に対する発言に気をつけてねぇ?」

白石の傷からパっと手を離し稀李は元座っていた椅子へと帰った。

「おーイテ、キャラ崩壊も激しいで。」

「これが私の素だよ。ワイの性格は作られとるもんやってまだ白石は分からんのんか?アホやなぁ。」

「…止めや…その口調で罵られるんはなんか屈辱や。」

「うん分かった。今度からも活用していく。ほら、イカサマの話早く教えてよ。」

「…俺の思うた通りのところににボールが返ってくるよう回転をかけとるだけの話や。」

「ふーん、それ手塚ゾーンみたいなものだね。」

「なんや稀李、手塚君知っとんか?まだ会うたこと無いやろ。」

「まぁ…ね。色々と。」

「前世になんか関係あるんか?」

「んー、君の想像にお任せするよ。なんでそんな面倒くさいことしてるのさ。」

それが使えるなら手塚の様に動かなくてもよいのでは?動くことが無駄、になるのではないか?と聞く。
そして白石はニタリと嗤う。

「それはな、基本に忠実なテニスで負ける相手の顔が面白いからや。ホンマ、おもろいで?自分には必殺技があるからこんな基本しか極めとらん相手には負けん。そんな事思っとる輩はめっちゃ居るけんな。そいつらが俺のテニスに負けてみ?こんなしょぼい奴に俺は負けたんだって失望した顔してくれんねん。」

絶景や、とクスクス笑う。

「…でもそれとエクスタシーって関係ないよね?」

「いや、あるで?やって俺、回転かけとるから相手が右に打ったつもりでも中央に行ったりするし、勘のええ相手やったら気づかれるやん。やけど最後の一言、エクスタシーで全部のことが吹っ飛ぶやろ?」

「あー…確かに、問い詰めようとしてもそんなこと言われたら相手は怯んじゃうよね。」

「やから俺は基本に忠実なテニスをしてあのセリフを言っとるんや。んーエクスタシー。」

「嗚呼、君はなんて腹黒い。」

「腹黒いんはお互い様やろ。で、この先どうするんや?俺について、これから今迄みたいな虐めがあるとは思えんのんやけど。」

「んー確かに、金太郎が白石につくことによって意見変更する人も…居るかもしれないけど。なんたって天真爛漫純粋無垢な遠山金太郎が白石蔵ノ介についたんだからね。」

「自信過剰やなぁ、自分。」

「自信過剰?それ違うよ?それはただの事実だ。金太郎は純粋で周りの空気には敏感だ。それ故、人の本性というものが分かる…というキャラ設定。それを今まで私は演じきっているんだ。私の演技に文句はつけさせない。実際、私が白石側に行ったとき、怒りの顔じゃなくて何かに気付いたような顔した人が、一人居たわけだし。ねぇ?」

稀李は椅子から再び立ちあがり窓の方へと歩いて行った。

「あぁ、稀李も気づいとったんか。」

一歩、

「当たり前でしょ、私を誰だと思ってるの。」

また一歩。

「遠野稀李や。」

「ご名答、そう私は遠山金太郎のキャラを演じている遠野稀李だ。さて…これが私の、いやワイの正体や。…そこで聞いとる奴もいい加減入ってきたらどうや?」

どうや?と聞いた瞬間に窓の向こう側から物音が聞こえる。逃げようとしているのだろう。しかし稀李は既に窓際まで来ている。稀李は持ち前の反射神経で音を立てたその人の首根っこを稀李は片手で掴む。

「ッい!?」


「財前、光ぅ――。」

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