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「謙也!やめてぇな!」 「!?」 謙也の体は横に吹っ飛んだ。稀李に、金太郎の持ちうる限りのチカラで横から思いっきり突き飛ばされてしまったから。白石は支えられているものを無くしたためその場に座り込む。 「ワイ、白石を信じる!」 白石をかばうように両手を広げ、白石と白石以外のメンバーの間に立ちふさがる。 「何言うてんねん金ちゃん!」 「やって!こんな何の抵抗も見せん白石なんて可笑しいやん!変や!」 「それは白石が自分の罪を認識しとるから!」 「俺は…ッなんも……しとらへん!しとらんて、言ってるやんッ!」 「じゃかしい!黙ぁっとけ!」 白石は呻きながらも自分の無罪をきちんと言っている。遮っているのは彼方側。 「…謙也…謙也は白石と、仲良かったんとちゃうん?なんで白石を一番に殴っとるんやぁっ?」 稀李は泣きそうな顔で謙也に質問する。 「それ、は……っ金ちゃん…ホンマに白石の味方になるんやな?」 「遠山金太郎は白石の味方や。」 迷いのない目をメンバーに見せつける。 「ほんなら金ちゃんも俺らの敵や。せいぜい白石と仲ようしとくんやな。」 先ほどまでの稀李に対する態度と打って変わってメンバーは稀李を完璧に敵だ、とみなしたようだ。 「っ……白石…立てるか?保健室、行こ?」 「金ちゃん…おおきに…。」 稀李は白石を支えながら保健室へと歩いて行った。他のメンバーは何事も無かったかのようにテニスの練習を開始した。 一方保健室では、養護教諭は放課後のため不在。その為稀李が代わりに治療を行う。稀李は擦り傷には消毒を行い、打ち身には氷嚢をあてがう。すべての怪我の治療が終わ稀李が入口へと歩いて行った。そして入り口に『先生不在。用のある生徒は職員室へ』というプラカードを入り口に掲げ、ドアには鍵をかける。稀李は外部との繋がりを簡単に絶ち、再び白石の元へ。 「「フッ…。」」 「「フフッアハハハハ!」」 そして二人は狂ったように笑いあう。 「ねぇちょっとホンット面白いんだけど!なんであんなに自分の思考を信じて貫いていけるかな、なんてデタラメな思考なの!?アハッ!」 「ホンマ、謙也にはいっつも笑わせてもらうわ。なんやねんなんであのタイミングで毒手出さんとあかんのん!?金ちゃんのさぼりは俺と居ったからやで!俺、公認なんやで!むしろ俺もサボったしな!」 「毒手とか、私そんなの信じてないっつーの!しかも聞いた?俺らは白石にとっての毒手やキリッ…だって!なんてッなんて面白いことを言ってくれるんだあの子はッ。」 「俺にとってのあいつらはただの玩具やっちゅー話や。なんで俺が玩具に恐怖せんとあかんねん。」 「あ、そうだ白石、私の金太郎の演技であの時笑ってたでしょ!」 「バレてもうた。…せやで、やって稀李の本性を確認した後にあんな演技見さされたら笑うしかないやん?あれでも下向いたりして対策しとったんやで?」 「まぁ、確かに他の人たちにはバレてなかったようだけど…私、つられて笑いそうになったんだから!」 「持ち前の演技力でどうにかしぃ、それか本性出せばええんとちゃう?」 「…やだ、本性見せたらもうあっち、こっちを虐めてこなくなるじゃん。」 「なんや、ドМ発言か?」 「は?何言ってんの?私だって身体的に虐められる趣味ないよ。勿論精神的にもね。前にも言ったでしょ?この虐めてくる環境を楽しむ。」 「やっぱМなんや。」 「……だったら白石もМでしょ。散々殴られてたりしてるんだから、なに?もうエクスタシー感じちゃってる?」 「いや、それは否定しとくわ。エクスタシー感じるときは稀李も一緒やないと面白くないわ。」 「白石がエクスタシー感じるって言ったらなんかエロいね。」 「稀李の外見からエクスタシーって聞こえたらギャップが半端ないでぇ。」 「エクスタシーって言うの止めたら?」 「おん、そうする。もう言う必要なんてないんやもん。」 「あら?テニス辞めるの?」 「辞めへんで?稀李も俺のテニス=エクスタシーって認識止めてくれへんか?」 「あれだけ試合でエクスタシーって言ってたらいやでもそう認識しちゃうよ。」 「あぁ、実はな俺、テニスを基本に忠実に、完璧なテニスやっとるって言っとるやん?そんなん全くやっとらん。早い話、イカサマゲーム。しとるんや。」 |
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