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Target越前リョーマend


白石は微笑んだように見えた。

「でもなぁ、越前クン?その頼み方は無いんとちゃう?」

笑みは消え。厭らしく嗤う。

「な、にが?」

「あー!もう本性出したぁ!」

越前は何が何だかわからず呟いて、稀李は全て分かって叫んだ。

「え?あかんかったん?越前クン助けるんやったらこっちんがのちのち…。」

「だーかーらー、もう少し親しくなってからバラしたかった!驚いたあの顔は一度きりなのに…勿体ねー。」

「それは、それは悪いことしたなぁ。」

悪びれもせずシレっと言う白石。

「ん?君、わざとだな?」

「ありゃ、バレてもーた。」

「バレるっつーの私なめてんの?白石、アンタももう一回そっち側逝く?どういうつもり?」

「堪忍、俺はそっちの自分が好きなんよ?」

「アラ、告白?甘いじゃない。ま、でもその問題はおいといて…ハロハロ越前クン?ついてこれてますかぁ?」

越前は言葉が紡げず、意味の分からない単語を言うだけ。

「あっちゃー、ま、私は優しくないから話進めるよー。ホントもっと人にものを頼む時の礼儀ってモンがあると思うんだけどな?…ねぇ、本当に助けて欲しいの?」

「…う、ん。」

越前の中にはもう、この二人にすがるしか道はないと思っていた。思ってしまった。頼らないと言う選択肢もあったはずなのに、『助かる』と一瞬でも思ってしまった。越前はもう堕ちたくない、そんな一心で二人という蜘蛛の糸に縋っている。

「だったらさぁ…もっと誠心誠意込めて言いなよ。そんな頼み方じゃ、だーれも助けてくれないよ?」

「どうやって…?」

「分っからないのぉ?だっさぁー。」

「そんな意地悪せんと、教えたりぃな。めっちゃ簡単なことやん。」

「…だったら白石が教えてあげなよ。私は見とくからさ。」

「はいさ、なぁ越前クン?ホンマ分からんの?」

「ッ………。」

「ハァ…残念な脳味噌やな!仕方ないから俺が教えたるわ。土下座しい。土下座。」

「なんッ!?」

「え?まさかプライドの一つや二つ捨てなくて何も失わなくて、私たちが何の見返りも求めないで慈善活動で君を助けると思った?」

「そんなんするわけないやろ。俺らは、楽しみたいんや。」

「そーそー、たった一度、死ぬまで頭を下げろなんて言ってないんだからさ、たかだか一分だ。それで白石は助けてくれるって言ってんだぜ?本当に白石に助けてもらいたいなら、それぐらいしないとね?プライドを捨てるなんて、簡単デショ?」

二人が畳み掛ける。ニヤニヤとした顔つきで、越前を追いつめる。
越前は静かに膝をつき、手を膝より前に置き、頭を地面に近づけた。

「ッ…助けて、下さいッ!」

「キャハハハ!本当にプライド捨てやがった!ぶっざまぁ!ねぇねぇ今どんな気持ち?ねぇどんな気持ち?」

「ん、助けたる。」

白石はそう答えた。越前はその言葉を聞いて頭を上げた。ホッとした顔をする。

「私は、助けてやんねぇから!」

変わりに元気よく稀李は嫌だと言った。
これでは約束と違う。越前が力が無いなりにも抗議する。

「えー?何が違うの?白石は、土下座で助けてやるって言った。でも私はそんなこと一言も言ってなーい!」

「だったら俺は、白石さんだけを頼る!」

「ふーん…じゃあ私は君の敵になることにするよ。」

「そうすれば?」

自分は一人ではないと思って強気になる。

「あー…越前クン、俺だけじゃ助けれんわ。」

「え…?」

「やってなぁ…流石の俺でも勝てれへんねん。」

「どういう…こと?」

「俺も金ちゃんに出会う前は自分が一番どす黒い歪んだ感情を持っとると思っとったんやけど……負けたわ。」

「んふふふ、白石の分際で私に勝とうなんざ百回転生しても早いんだよ。」

「つー訳や、俺は助けてやってもええが…その末に待っとるんは越前クンにとって最悪な結末だけや。」

「ッ……。」

「さて、どうしよう?私に乞い願うなら、私は君をその立場から救ってやろう。さらには復讐もしてやろう。君が考え付かない最悪な方法を使ってね。」

復讐なんていう甘美な響き。越前の考えは揺れ動く。かしずくべきか…はたまた否か。

「助けて…下さい…。お願い、します…。」

「態度で、示して見せて?スニーカーなのが絵にならなくて残念だけど……。私の前に跪き私の靴に口付けろ。」

ピンヒールだったら面白いのにね、とケラケラ笑うそして片足を正座したままの越前の前にズイっと出した。

「…………。」

甘い、囁き。
甘い、誘い。
甘い、蜜。
その甘イモノは脳の思考を麻痺させる。
越前はフラフラとした働きで、ゆっくりと顔を靴に近付ける。そのまま、先に口付けをする。


「…アハッアーハハハハハハハハハハハハハハアハアハハハハァアア!本当にした!舌よこいつ!ようこそ底辺へ!君は自分の力でなく私たちの力を持借りて復讐した愚かな卑怯で卑劣で最悪なモノだ!君はそこまでしてこの状況から抜け出したいか!?そして復讐もしたいと?しかも他者の力を借りても?実に滑稽だ!君は鬼だ!人で非ず!私たちはやるからにはやる!止めたって無駄だよ?だって私は確認した!それでも君は承諾した!もう止められない!坂道を転がる石の様に!止まるときは意思が壊れるしかない!
そんなものに縋る君が私はたまらなく好きだ!」

アハハハハ、と耳残る笑い声。越前は耳を塞ぎたいとは思わなかった。
感情を抉られ、潰され、プライドだってぶった切られた。越前に残るのはもう、自分を虐めてきたヤツらに対して復讐したいという思いだけ。

「俺でアンタ達は楽しめばいい。いくらだって俺はアンタ達を満足させてやる。だから、アイツらに復讐を…っ!」

そんな言葉に稀李は微笑んだ。

「君を私は私が満足いくまで遊んであげる。そして君の望むことを一つ、叶えてあげる。それは青学に復讐…でいいね?」

「……はいッ。」

一瞬迷いはしたものの、決断は揺るがなかった。

「契約成立だ!君は私の下僕だ、犬だ、家畜だ。私に媚びろ。君は私のオモチャになることを誇りに思え。」

「は…い。」

「特別に君には渾名を付けてやろう。コシマエ、君はコシマエだ。オモチャに名前を付けてやったんだ。これ以上ない幸せでしょ?」

「…。」



「これから、…存分に遊んであげる、私を楽しませてね?コ シ マ エ 。」

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