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21


「「「!?」」」

「どうしたんや?そないに驚いた顔をして?」

「お前、そんな顔…。」

「顔?」

稀李は自分の顔に手を当て、確認。口角が上がってしまっているではないか。純粋な笑顔でなく。爛漫な笑顔でなく。人をあざ笑うかのような笑み。こんな笑みをしてしまったら、もう演技なんてしている場合ではない。
もう、おかしくて、面白くて、嗤うしかない。

「……フフッキャハハハハハハハハ!やっちゃったなぁ、バーレちゃった!もう少し先でばらす予定だったのになぁ!テンション上がりすぎて失敗しちゃったぁ!クスクスクス!」

地べたに座り込んでいた姿から立ち上がり、トロフィーなどが置かれている机に腰を掛けた。その時の衝撃で落としてしまったトロフィーなんて視界に入れない。ただ稀李の行動を妨げる一因の邪魔なものだったのだから。

「「「!?」」」

「初めまして!私の存在をやっと認識してくれたかな?諸君。」

「お前は、誰なんだ?」

「誰、誰って君達が散々探して自ら見つけることが出来なかった人物が目の前に居るんだ。もっと喜べよ。さぁ!」

「お前が遠野、稀李…なのか?」

「フフフっそーだよぉ?」

「え、柳さん…遠野稀李ってやつは女子なんでしょ!?」

「切原ぁ、仁王はいつもどうやって柳生になってんの?」

「そんなもん…っカツラ…ッ!?」

「気が付いたぁ?私はあの時カツラを被ってただけなんだよぉ?それに今の今まで気が付かなかった君達は、馬鹿…としか言いようがないなぁ。でも十分楽しませてもらったよ。いやぁ、君達のその馬鹿面を見たいがために私はよくやったなぁ、まぁ女装に抵抗あるわけじゃないけど。もう柳、君は最高だったよ!『これで見つけることが出来る』キリッ、ってか!?ハハハハハハ!バッカみたい今の今まで私に気づかなかったもんねぇ!!データマンの意味全くの0!私の教室まで君はやってきたのに、フフッ気が付くことすらできなかったもんね、むしろ…散々この私遠野稀李と接触してきて気が付かなかったことに脱帽するよ。それとも君達が脱帽しよう?私の演技にね!」

「ッ……。」

「でだ、前にも言った通り幸村は私の玩具で、私の玩具になる代わりに願いを聞き入れてるんだぁ!」

「精市は…何を君になにを…願ったんだ?」

「あのねぇ、君達を地獄に引きずりおろす事。君達に自分と同じ苦しみを味あわせること、君達が一生後悔すればいいって、言ってたよ?でもねー…君達をさっき見せた証拠を中体連に持って行って訴えれば簡単に地獄を見せることが出来るんだけど…。幸村は一応、一応、い ち お う 君達と三連覇したいらしいからねー。それはやらないことにしたぁ。感謝してねぇ?うん、地獄を見せてって言われたから、地獄を見せることにしたんだぁ。」

「地獄…だと?」

「そう、私は君達みたいに手をあげることはしない。だって傷害罪で訴えられたくないんだもん。あ、でも私の場合は名誉棄損かなぁ?精神的にぶっ壊すつもりだから、でも私がこれから言う事は事実だしなぁ。…うん、平気。そっちには真実すら分からなかった無能野郎だけどデータマンが居るんだし?常識的には考えてくれるんじゃないかなぁ?」

「ッ俺らは――!」

「悪くないってぇ?じゃぁ、誰がどうしてこうやって私や幸村を痛めつけてくれた?誰がこんな風に痣だらけにしてくれた?何を思って、私達を制裁してきた?根拠もない幸村の噂に踊らされて、制裁をして来たんじゃないのぁ?」

「だがっ…。」

「だが、これが真実。偽りなんて私は作ってないしねぇ。言い逃れなんてできないよぉ。可哀想な幸村、仲間だって信じてた君達に裏切られて、その上暴力まで振るわれてさぁ。信じてたのに、信じてたのに、信じてたんだって…さ?誰にも言わずに堪えてきたのに、こんな仕打ち酷過ぎるんじゃなぁい?ねぇ、君達どういう気分?今、真実を突き付けられて、今まで信じてたことが偽りだったってう今の心境はさぁ?私、君達みたいに外道じゃないから味わったことないんだよねぇ。詳しく、教えてくれるかなぁ?」

「…っ俺たちは悪くないっしょ!俺らだって騙された――。」

「騙された?誰に?どうやって?どうせ噂話を鵜呑みにして幸村に直接聞いた?真意を、事実を実話をさぁ?」

「ッ……。」

「…しかし、真実を言わなかった精市のせいでもある。」

「そうやって君は責任の転嫁を図るんだよね。よく考えなよ、君幸村に『なにも俺は悪くない』って何度言われた?漠然とした言葉だったから耳に入れなかった?じゃぁ、何故漠然とした噂は耳に入れたんだぁ?幸村の訴えを聞き入れなかったのは、誰?こんな関係ない人までもを制裁して、なんになる?」

「それは、お前の意思で…勝手に幸村君についたんだろぃ。」

「え?こんな関係ない人って私のことを差してるんじゃないよ。ここに転がってる人のことを言ってるんだよぉ?」

転がってる人、そう稀李が指差したのは幸村のはず。なのに…。

「ねぇ?私はさ、君達を地獄に落とすと言った。だから、精神的ダメージを受けさすと言った。そって親しい人を何かの手違いで傷つけるって言った事故が一番効果的なんだよねぇ。PTSD、心的外傷後ストレス障害、トラウマって言うの?テニスをする度に思い出してほしいって思うんだ。ここに関わる度に思い出してほしいって思うんだ。だから幸村以外にも全く無実の関係ない人までもを、君達は制裁したっていう事実をこの部室に刻んでおこうってね。
この人、本当に、幸村?」


そう稀李がみんなに問いかけた時に部室の扉が開かれた。

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