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幸村が乱暴に扉を開け部室に入ってきた。

「あぁ、なんていいタイミングなんだ。さぁ、ここで問題。皆さんここに転がってるのはだーれだ?ヒントそのいちー。幸村クンではなーい。ヒントそのにー。変装しているー。ヒントそのさーん。最後ね!、今ここには立海テニス部レギュラー陣が全員居まぁす!」

「なんで……ッ、だったら……その人、は…仁王、先輩…ッ!?」

「切原だぁいせーかぁい!データマンよりも早く答えるなんてやるじゃぁん!この転がってる幸村クンっぽい人はコート上のペテン師仁王雅治ぜよぉ?あ、仁王もう好きに喋って良いよぉ。あぁ!そう言えばさっき切原、仁王に何したっけ?左腕、やっちゃったよねぇ?左って、仁王の…利き手だよねぇ?フフッ。」

「あ…ぁ、あぁッ…俺ッ俺はッッ!」

「そう!君達は全く無罪の幸村を制裁した挙句、関係の無い仁王にまで手を挙げた!しかも仁王の腕を壊してしまうと言う暴挙までしてくれた!誰が許そう!誰が許してくれよう!神様か?違う!神様は仁王を憐れんでくれるだろう!だって仁王は幸村クンを守ろうとした!守ろうとしての結果がこれだ!だったら学校か?違うね!学校は君達の揉め事さえも闇に葬ってくれる機関だ!期待するだけ損ってものだよ!最終的に親か?ちっがーう!被害者が出てしまったんだもん!君達加害者の親は被害者の親に頭を下げなくちゃならないからね!責めることはあっても憐れんでくれることは無いね!さぁ!考えよう!君達を許してくれる人はこの世界に、居るのかなぁ?キャハハハハハハッハはアハ!」

稀李は笑う。とても楽しそうに、嗤う。

「仁王、仁王!なんで、何でこんなことをッ!」

稀李の笑い声に反応できない立海メンバーを尻目に幸村は倒れて顔を歪めている仁王に近づいた。それから泣きそうな声で仁王に訴えた。

「幸村、か…良かったな、おまんの無実、証明されたぜよ…?」

「腕、壊されたって!」

「俺、おまんに許してほしくての、どうやったら許してもらえるじゃろうかって遠野に相談したんじゃ。そうしたら身代わりになるのが速いって、言われてな。許して、くれるか?許して、許して許して―――……。」

「ッ遠野!なんで仁王をこんな目に遇わせた!」

「え?私が怒鳴られなきゃいけないとこ?私なにも悪い事してないよね?ちゃんとこの方法はお勧めしないって言ったもん。」

「ぬけぬけとっ、そんなこと言えるな!」

「君こそ、私があの時、仁王が私の一番の玩具になる理由を録音してた録音機を聞かなきゃ、今ここに居ないよね、仁王を、助けようとはしなかったよね。まぁ、一足遅かったけど。」

「それは、…そうだけどッ。」

幸村がここに来た理由。本来なら来ないはずだった。もう見捨てたし、稀李の手によってこいつらがどうなっても構わないとさえ思っていた。しかし、帰ろうとして靴箱に行くと自分の靴の上に無機質な機械、録音機が置いてあったのだ。何だろうと思い聞いてみると、あの時、幸村が仁王を裏切り者呼ばわりしたシーンの物だった。これを聞いて、仁王は自分の為に犠牲になろうとしているのだと、瞬時に理解した。
そして、ここ部室にまで来た。と言う訳だ。

「それに君は私にみんなを地獄に、と言った。それは勿論仁王だって含まれていた。そして、その仁王は幸村クン…君に許してもらいたいと言った。もしあの時の君が誤解していなかったら仁王はこんな目に遇わずに済んだっているのに、つまり、仁王がこんな目に遇った責任は君にあるっていう事だよねぇ!」

「ッ……ごめん、仁王ッごめん…ッみんな、ゴメンっごめん…!」

幸村が仁王に、皆に謝り始めた。部室ないが混沌とし始めた。
俺は、と自分を責める赤也に、
許して、と訴え続ける仁王、
そして謝り続ける幸村。

部室の中が騒がしい。

「さぁて、私を黙らせる奴もう、居ないのぉ?皆壊れちゃったのぉ?」

「「「「…………。」」」」

その他の人も押し黙るだけ。

「ふぁーあ、つまーんない。みーんな壊れちゃった。じゃ、私壊れた玩具って興味ないんだ。壊れかけなら直すんだけどねぇ。壊れちゃったら直せないよー、ゴメーンね?君達がそれなりに仲良くなれることをなんとなーく願ってるよん。」

稀李はお気に入りだった玩具さえも捨てて部室から出た。


何処まで君達の仲が修復できるのか、楽しみに観察させてもらうよぉ?




P P P …

「あぁ、白石?終わったからもう自由にしてもいいよ。私も許すし!」


「え?あぁ、ちゃんと二人の要望も叶えたし、後は私の知ることじゃないもーん。後私がすることはー、立海生をどうにかすること。まぁ、方法はこいつらにやったやり方でいいと思うけど。」


「…うん、あ、そうそう、二つとも壊れちゃったから今テニス部の部室に置いてきたとこ。」


「フフッ事の顛末は教えてあげるよ。流石にそこまで私は酷くない。それに誰かと見た方が面白いしねー。あとこれからのことは流石に私一人じゃ裁き切れないからー。」


「ん?自惚れてもいいかって?勝手にすればぁ?私は壊れた玩具には興味ないもん。ねぇ白石?」


「――君、簡単には壊れないんでしょう?」


「クス、期待しとくよ。じゃ、これから君の家行くから待っててね。」









「……フフッ。」

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