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17


「!?…何の事や?」

「何の事?ハン、しらばっくれるつもりか。いいさ、いつまでその態度が続いて行くか見ものだわ。」

「…さっぱりや、何のこと言っとるん?」

「いいさ、崩してあげるよ。その態度、謝ってもう遅いと思え?…まず最初。貴様はテニス部に接触した。私にばれない様に、私が幸村と帰り始めてから。こう言ってあいつらに近づいたんでしょ?『金ちゃんの目を覚まさしてあげたい』って、向こうは私が騙されて幸村についてると思ってるから、幸村の味方はいなくなればいい。幸村は一人ぼっちになってしまえば良いって思っている奴らだから二つ返事で承諾した。」

「なん――。」

白石が何かを言おうとしていたが、稀李は構わず続けた。

「そして君は今回のことを作戦にあげた。少し怖がらしてやろうって、私を怖い目に遇わせて幸村といたらこんなことがこの先たくさん起こる、だからその位置に居るのは止めようって、君は言いたかったんだろ?私に、」

「なんで、俺が計画したって言うことになっとん…?」

「だってそうでしょう?私の拘束の仕方と幸村の拘束の仕方、似てるようで一緒じゃない。なんでわざわざ違う拘束の仕方にしたか。しかも私の方が頑丈に。それは簡単、私…金太郎の怪力の存在を知らなくちゃそんなこと出来ないんだよ。私は立海に来て怪力を披露してない。テニス部に入ってる訳でもないのに。暴行を受けってるときだって受け身に徹底してるって言うのに。なんで私の潜在能力のことを知っているのか、それは君がテニス部に言わないと成立しないんだよ。柳のデータ?私はまだ公式試合に出たことも無い西の超ルーキーだぞ?試合に、出たこと、無いんだ。どうやってデータを集めることが出来る?」

「…俺がそんなことする、メリットが…あるん?」

「メリット?ハハハッ私が気が付いてないと思った?君、私が好きだろう。好きで、好きでたまらないだろう。私が幸村と行動を共にすることが気に食わなかったんだろう?私の隣を歩くのは自分の役目だって自惚れたんじゃないの?」

「ッ……俺がそれを計画したっていう証拠は無いで?」

「証拠?クク…ッアハハハハハハハ!証拠か!証拠が欲しいか!だったら見せて…いや、聞かせてあげるよ。」

稀李はポケットからイヤホンを取り出し、それを耳に付けるように白石に命令した。そして稀李は白石のネクタイピンに手を伸ばした。ピンを外して、口元に持っていく。

「聞こえるよねぇ私の声。これなーんだ?」
『聞こえるよねぇ私の声。これなーんだ?』

「!?」

目の前から稀李の声がする。しかし、イヤホンからも稀李の声がする。

「気が付いたぁ?」
『気が付いたぁ?』

つまり、白石がつけてたネクタイピンには――

「盗聴器……!」

白石は恐ろしい物を持つような手つきで耳からイヤホンを外す。

「せぇかい!私はこれを使って貴様の行動は丸分りだったんだよ。」

「なんで…俺にまで!?」

「ん?なに?君は私と同等で、私は君を玩具にはしないとでも思ってたのかな?それは大きな間違いだよ。私以外の人間、生物、無機物はみーんな私の玩具なんだよ。特別扱い?そんなことするって言った覚えはないね。もとより私はこの世界のことを私とそれ以外。そういう風にしか見れてねぇよ。」

「っ………。ふざけるんやないで!稀李自分が今どんなことしたか分かったんのか!?」

「図に乗るな身の程知らずが。君こそ私にしたこと分かってんの?完璧なる裏切り行為だよ。何?私が『白石、怖かった。助けてくれてありがとう、好きになっちゃった!』とでも少女漫画にありがちな、つり橋効果みたいなことになればよかったのかな?」

「ッ…。」

「アハハハハ、私、君のことは評価してたのに、過大評価だったかなぁ?それとも何か?私から離れたくて、そんなことをしたのかな?」

「そんな!ことは思ってへんわ。……謝るから俺から離れるとか言わんといてや…?」

白石は懇願した。稀李の怒りは流石に恐ろしかったようだ。同族と言っても、稀李より白石の方が遥かに生易しい。それに、本当の感情を見れたからそれだけでも大きな収穫だ。稀李から離れるといったメリットの一切ないことになる前に謝っておこう、ごめんなさい。



「まぁ?私は心が広ぉいから君を許してあげるよ。本当に、私は優しいからね。でも、二度目は無いって考えてねぇ?」

「……分かった。」

「そう、だ!罰っているよねー!どんなのがいいかなぁ?んー、迷うなぁ。そう思えば君をこんな風に扱ったのは初めてかなぁ?だねぇ、君はそつなく私の傍にいていつもいつも、飽きないのかなぁ?って思ったけど。まーさか、私のことが好きだったなんて稀李ちゃんビックリィ。モノ好きが居たもんだ。あぁ!そうだ、罰はこうしよう!…私に関わるな。」

「なん!?」

「そのままの意味だよ?私に関わるな、私と関わる物すべてに関わるな。幸村にも、仁王にも、テニス部にも、生徒にも、立海にも、誰にも関わるな。それを破ったら…んー……私が貴様の前から消える。そして二度と会わないようにしてあげる。」

「そんなん、無理に決まっとるやん!立海に関わらんてッ無理や!」

「無理なことは私は命令しないよぉ?もっとよく考えなよ、逃げ道はあるよぉ?教えてあげようか?」

「どう…やって?」

「貴様が引き籠りになればいいんだよ。そうしたら誰にも関わらないで済むよ?」

「そんな…い、いやや!この先ずっとやなんて!」

「だぁいじょうぶ、幸村の話が終わったらその罰も撤回してあげるよ。私が言いたいのは貴様がこの物語に関わることを禁止したいだけだからね。嗚呼、これからクライマックスなのに関われないなんて可哀想な白石クン、まぁ?仕方ないよね。自分で蒔いた種だもん。で?結局この罰受けるの?受けないの?」

「…その罰、謹んで受けさせてもらう…わ。」

「うん、良い返事。」

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