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15


幸村とは時々一緒に帰る様になった。余計に稀李への暴力が増えて行っただけだった。ここに居る生徒は四天宝寺に残してきた玩具と同じぐらいの理解のある奴は居ないと見た。金太郎は天真爛漫純粋無垢な設定を学校中に広めてからのこの行動だったと言うのに。ここは四天宝寺以上に腐ってやがる。
それでも幸村は健気にもここの学校を愛していると言う。でもそれ以上に今は憎いと言う。
それもそうだ。稀李に復讐を手伝ってと言ったのだから。



「でな!幸村、今日はな教科書に落書きがしてあってん!でもワイ、アホやから漢字が読めんくてなんて書いとんのか分からんかった!」

帰り道誰が見てるか分からないから金太郎になっておく。幸村はその演技に始めは驚いていたけど、今は自然に話すことが出来るまで慣れた。

「…そうなんだ、分からない方が良いと思うよ。分かったところで意味のある文字じゃないから。」

「へー、そうなんや!幸村は頭ええなぁ。」

「そうかな。」

「絶対そうや!ワイにもその頭の良さ分けてくれぇや!」

「んー、ちょっとそれは無理かな。」

「……ケチー!白石がって言ってたねんで、頭のええやつのおでことワイのおでこをくっつけると頭ようなるって!」

稀李はそう言うと両手で幸村の顔を掴んで自分のおでこにくっつけようとする。いきなりの行動で幸村はバランスを崩しかけたが何とか持ちこたえて転倒することは無かった。

「ちょ、遠山君なにすッ!?」

「――後をつけられてる。」

「!?」

稀李はその状態のまま幸村にしか聞こえない音量で話を始めた。

「数は6人位。感じたことのない気配だから他校の誰かだと思う。そこの曲がり角に今身を隠してるよ。どうしたい?」

「どう、したいって…逃げたいに決まってるだろ!」

「だったら逃げようかな。ここの土地感覚は私には無いから幸村クン、案内は任せたよ?」

「え、そんな…。」

「別に私はいいんだよ。逃げ込んだ先が同級生の家でも、行き止りの所に逃げ込んでも。私はそんな展開になっても自分ひとりが逃げ切れる自信はあるからね。それに…この後の展開を私は分かるし。」

「…分かった。だったら俺の後についてきてよ。」

「りょーかい。」

稀李と幸村はせーのっでその場を駆け出した。まいてしまえばこっちのもの、とでも言うのだろう。突然走り出した二人を見失わない様に、忍ぶことを忘れて追いかけてくる人達。馬鹿なのだろうか。

鬼ごっこの開始である。

「ここを曲がればッ!」

「ダメや!あいつ等と同じ気配がそっからするねん!」

「また!?」

もうこんなやり取り何回しただろう。相手はバカだと思っていたのだが、稀李達の行く先々で待ち構えている。完璧に二人の行動を読んでいる。誰かが示唆しているのだろう。

「俺、もう疲れちゃったな…。」

「言わんといて…ワイも疲れてるから……。」

日頃の疲れのせいで思うように体力が残っていなかった様子だ。稀李に至っては少々素が出てしまっている。
もう何十分走っただろうか。制服のまま、鞄を持ってローファーを履いている幸村は今にも倒れそうだ。

「ぅわッ!?」

案の定、幸村は道にあった石ころに足をとられ転んでしまった。

「幸村クン!?」

稀李もいきなりの転倒で驚いてしまった模様。稀李の意識が周りの状況から幸村の方へ。それがいけなかった。その展開を待ってましたと言わんばかりに鬼さんたちが二人を一斉に取り囲んだ。

「「!?」」

身体が仰向けになる様に四肢を押さえつけられた。そして稀李と幸村の腹部を思いっきり押さえつけてきた。簡単に言うと、数人が体の上に腰を掛けてきたのだ。
お腹から、肺から吸っていた空気が押し出されて新しい空気を吸うことが出来ない。

「カッ……ァッ。」

「ど、け…っ!」

四肢をそれぞれ押さえつけられているため足掻くことも出来ないし、息を吸えないから叫び声も上げることが出来ない。

「ワリィな、立海テニス部に頼まれてんだ。」

案の定。刺客はあいつらが頼んだようで、幸村は強くショックを受けているようだった。稀李はショックなど受けていないが、この拘束から逃れることが出来ないから、助かりようもない。

相手をバカだと思っていた初期の自分を責めたい。簡単に意識を飛ばさせる方法知っていやがった。稀李が悔やんだって遅すぎた。気付いたところで対策が立てれなかった。稀李と幸村は結局、意識を飛ばしてしまった。

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