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14


「わー、パチパチパチ美しい友情だねー。私には成しえないことだよー。尊敬しちゃうー。」

茶番を見たと言いたげに稀李が気怠そうに手を叩いていた。

「で?仁王は私の玩具になるの?ならないの?ならないなら、まぁ色々とその他復讐対象者の中に名前を入れといてあげるよ。元々はそういう取引だったからね。」

「俺は、もう仁王を――!」

「許した?許してないよね?まだ保留だよね?もしかしたらこれはグルで一度こっちの味方になってからもっと深いところまで突き落とす作戦かもしれないよ?だって向こうには達人って呼ばれる柳が居るんだもん!油断はならないねぇ!」

「ッ…!」

そんなことを言われると仁王を信じられなくなるじゃないか、と言いたげな表情。

「ンフフ、私はハッピーエンド主義者じゃないんだよ。無理やり作ったハッピーエンドなんて退屈すぎて反吐が出る。トゥルーエンドが私にとって望ましい!とっても見たい!みんなが幸せになれるわけないんだよ!こんな世界じゃさぁ!ね、仁王私の作る物語の中で幸せになってみない?人それぞれの幸せに沿って私は物語を作ってあげる。」

「……俺は、幸村に…許してもらいたいッ!」

「OK、分かった。幸村クンに許してもらいたい。それが君の願いだ。叶えてあげる。幸村クンの願いと共に、ね?そーだ、こうと決まったら君には口止めをしておこう!私の存在を他の人にばらすな。ばらしてみろ、後悔させてあげる。分かった?私の新しい玩具チャン?」

「…分かった。」

「ん、いい子。さて、君たちは部活に行けばいいよ?もう私がしたいことは終わった。じゃーねー私も暇じゃないんだぁ。」

稀李はくるりと背中を向け二人の前から去って行った。二人はその後言葉を交わすことなく、仁王はすぐに部活に行った。幸村は少し体を休めてから部活へと向かう。

稀李はその後どこに向かったかと言うと白石が居る教室。

「チーッス、白石。話に展開が出来たから伝えに来たよー。」

「…あぁ、展開なら幸村クンに仕掛けとった盗聴器で全部聞かせてもらったわ。」

「あぁ、なら話すまでもないか。仁王は私の、私だけの玩具だからね。壊さないでよ?」

私が壊すんだから、と稀李はケタケタ笑う。

「なぁ、最近幸村クンと仲良しすぎるんやないか?」

「えー?そう?味方だからこれぐらいの関わりは無いと変じゃん?そんなことより、柳による遠野稀李探索は第三者から見てどんな感じ?」

「…あぁ、独自に調べまわっとるわ。やけど進展は無さそうやからそろそろ一年のクラスに聞き込みに行くんちゃうか?」

「始めからそうすればいいのに。」

「データマンのプライドでもあるんちゃう?聞き出すような真似はしとぅないみたいな?」

「無駄無駄、プライドなんて邪魔なだけなのになぁ。」

「…そういう割には稀李のプライドめっちゃ高くないか?」

「…私のことはいいんだよ。私がプライド高いからって物語に支障は出ない。むしろ、楽しいものになっていくんだからさ!嗚呼!楽しみ、新しい玩具はどんな遊び方があるのかなぁ!フフフッたぁのしぃ!」

「……………。」

新しい玩具にお熱な稀李。そんな展開は白石にとって面白くない。
まったく、
おもしろくない。


そして次の日、白石が言ったように柳が一年のクラスを虱潰しに稀李という生徒を探し回っていた。しかし発見できなかった模様。遠山金太郎と言う存在が稀李であって遠野稀李という存在が金太郎ではないのだから。生徒登録も金太郎の名前なのだから。

「すまない、このクラスに遠野稀李と言う女子生徒は居ないか?」

「え……っと、すみません。聞いたことがありません。」

「…そうか、突然すまなかったな。」

クラスの誰かに話を聞いていた。しかし、誰に聞いても稀李という存在を知るものはここには居ないのに、
稀李のクラスで最後だったのか、困った顔を一瞬だけ見せた。勿論その顔を稀李は見逃さない。学校では目立つことが出来ないから落書きだらけの机に伏せって顔を隠して笑うことにした。

今日は幸村クンと帰ろう。

そう唐突に思い浮かんだ稀李は白石にメールで報告。理由は幸村と金太郎がどれだけ仲がいいか知らしめるためだと言う。放課後、稀李は幸村を捕まえて、部活をさぼらせて帰宅することにした。

稀李のメールを見て白石は一人自分のクラスに残っていた。

「……願っても無い、チャンスや。」

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