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13


「クククッさぁて、仁王…君には光のような位置に居てもらおうかな?でもなー、もう一人いるしなぁ。そうだ、仁王は私専用の玩具になってもらおうかなぁ?ねぇ?前にも言ったけど私の玩具になってくれない?」

「嫌、じゃ!」

「ウフフフフ、どうやっておとそうかなぁ。甘やかすか、壊すか……ねぇ幸村クン、どっちがいいと思う?」

「…稀李の好きなように…すればいいよ。どうせ俺の意見はただ聞くだけなんだろ?」

「幸村クン分かってるぅ!まぁ?結局は両方使っておとすんですけどね!」

「助けっ!」

「フフフッ君が自らここに残ったのに、誰か助けに来るわけないでしょ?時間は…部活始まっちゃうから手短にしなきゃかなぁ。ずっと私のターン!ずっとずっと私だけのターン!まずは現実を付き付けようかな!結論から言うと、幸村クンはなぁんにも悪くありませぇん!」

「…ど、ういうことじゃ?」

「あれ?私をバカにしないの?何言ってんだ、テメェとか言って。」

「……ッ。」

「あぁ、ただ単に情報処理が追いついてないだけかな?でもこのまま続けよ。んー…えっと、証拠は今見せることは出来ないんだけどぉ。証言は出来るかなぁ?ねぇ、よく考えて?幸村クンが悪事を働いてるところ見たことある?誰かを虐めてるとこ見たことある?見たこと無いよねぇ。」

「な、い…。」

「だよねぇ。だって幸村クンは何もしてないもん!あれ?でも幸村クンが悪いって言う噂があるんだよねぇ。でもどうやってその噂の発信源さんは幸村クンが悪いことしてるって言うシーンを見たんだろう?不可能なはずなんだよねぇ。だって誰も幸村が悪いことしてるとこなんて分かるはずないんだもん。なんせ幸村クンは悪いことしてないからね!その噂、調べてみたけどねぇ…なぁんにも信憑性のあったもんじゃなかったねぇ。『友達が友達に聞いたらしいんだけど、幸村ってそいつの友達を殴ったんだってよ』『同小の奴が他の学校の奴に聞いたらしいんだけどそいつの学校のテニス部を脅して常勝とか言ってるらしいぜ』『幸村君ってさクラスの子からカツアゲしてるらしいよ、友達の友達が言ってたんだって』その他諸々、友達の友達情報。都市伝説より嘘っぱち情報じゃん?見たって言う人の固有名詞が入ってない時点で噂は嘘がほとんどなんだよ。ねぇ、君はどんな噂を聞いたのかな?参考までに聞かせてくれよ。」

話し尽くして、仁王の顔色を伺ってみると仁王は大量の汗をかいていた。稀李に言われ気が付いたんだろう。自分が直接幸村のことを知っていただけでもなく、自分が知ってる噂に固有名詞が入ってないことに。

「あ、じゃって…参謀が……。」

「柳が言ってることが100%正しいって言いたいのかな?君は柳が『明日原爆が落ちてくる確率100%』って言ったら大人しく地方へ疎開するのかな?ああ!なんて素直な人なんだ!!愚直すぎる!でも嫌いじゃねぇよ。さてさて、ここで問題が出てくる。君は、君たちはどんな人に、どんなことを今まで仕掛けてきたのかな?」

「俺は、なんも悪ぅない…幸村にッ。」

「そう!全く何も悪くない幸村クンに一方的に暴力をふるって、罵って!そしてそれを庇っていた私にも手をかけた!何ていうことだろう!君たちは悪役じゃあないか!これが世間に明るみに出てみろ?君たちに弁解の余地なんてないよ?」

「や、じゃ…俺は、悪くないッみんなが、!」

「うん、そうだね。悪者にはなりたく無いよねぇ。それが人間だ。自分の保身を一番に考える。人間らしいよ仁王雅治。そう言った醜い部分をひけらかしてくれるお前が大好きだ。」

稀李は顔を捕えていた両手を離し仁王の背中に腕を回す。ポンポンと背中を叩き、まるで子供を慰めるようだ。

「俺は、俺は参謀に言われたことをやっただけで、本心じゃのうて、でも俺は幸村が悪い思うて、じゃけど、あれ?違う、俺は悪くない!」

「…その葛藤から助けてあげようか?君は何も悪くないって私が言い続けてあげようか?君の罪の意識が消えるように。」

「…ホンマか?」

「うん、ホンマ。ただし、私の玩具になるならね?」

「………ッ。」

「ただで助けるわけないでしょ?慈善活動じゃないんだ。幸村だって私が面白いと感じなかったら助けるわけないじゃん。ギブアンドテイクは大切だよ?で、どうする?君の欲求を満たしてあげるよ?ホラ私って優しいから。だぁいじょうぶ、死にはしないから!ただ私のお遊びに付き合ってくれればいいんだから!」

飴と鞭を巧みに使って稀李は甘く囁く。仁王は揺れる。あの時の幸村の様に、甘い言葉が思考を蝕む。メリットデメリットが頭の中をグルグル回る。

「幸村…俺は、俺は……。」

思考的に追い詰められて、今まで敵だと判断していた幸村に助けを求める。幸村としては仁王が自分が無実だと分かってくれたと言うことで、満足はしている。しかし幸村は復讐が目的だったような気がする。幸村は仁王が稀李に追い詰められているシーンを間近で見て仁王に同情したくなっていたのだ。

「…仁王、俺がどれだけ辛い思いをしてたか分かった?いや、分からないかな。俺はお前らに裏切られたと思ったよ。実際裏切られた。俺たちの絆はこんなものだったのかって、思ったよ?」

「すまんッ、すまんかった!」

「そこの外道にプライド売ってさ、本当にさ…。でも、許してあげるって思える位、仁王は遠野に散々怖い目に遇わされたんだろうね。」

「えー、遇わしてないよー。ただ可愛がってあげただけなのにぃ。」

「ッ…許して、くれるんか?」

「…それは保留にしておいてくれないかな。俺自身、展開についていけてないんだ。でも許してあげたいって、今思ってる。」


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