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白石はあの後、意見を変えて自分はもう少し傍観していたいと言い出した。なんでも傍観の楽しさに気が付いたんだとか。稀李は元々傍観推奨派だったため深くは考えず、OKのサインを出した。むしろ自分が話に登場することでどのような変化があるかも知りたかったから。

本日の制裁施行者、赤也、仁王、ブン太。
制裁対象者、幸村、稀李。

「なぁ、お前遠山っつったか?なんで幸村なんかの味方してんだ?なんでお前なんかが!味方なんてしてんじゃねーよ!」

「グッァ!やって…幸村、はワイにッ。」

「それ騙されてるって言ってっじゃん?お前、学習能力無いわけ?」

「ッ、ワイは、ッ幸村が嫌われとるとか思えへんねん!」

「最近転校してきた癖に!お前と転校してきた白石ってやつは正しい判断してんだぜ?お前もそれにくっついとけばよかったのになぁ。」

「……白石ぃ、う、う、うぅぅッウェ……ッ!」

稀李が泣き始めた。拭いもせず、子供の様に泣きだした。白石に助けを助けを求めるように。

「おいおい、泣いてんじゃねーよ。汚ねぇ。ね、先輩色々萎えたっす。今日はもう終わりにしません?こいつがいない時狙って続きしましょ。」

「あぁ、そうだな。そろそろ部活もしねぇと真田に怒られる。行こうぜ、仁王。」

「…や、俺はもう少しこいつらを精神的に追い詰めてから部活に行くぜよ。じゃから先に行っときんしゃい。」

「うへー、仁王先輩おっかねぇ!そう言うことなら部活も遅れてもいいんじゃないっすか?ね、丸井先輩!」

「だな。じゃ、後でなぁ。」

赤也とブン太がその場から離れた。残っているのは稀李と幸村と、仁王。
稀李は泣き続けている。幸村はそんな稀李を見つめてる。稀李が泣いていて、それを慰めていいのか悪いのか。仁王の前でどうやって行動すればいいのか分からない。
ヘマをして稀李が後からキレるのは避けたい。だから幸村は泣いている稀李をただ眺めるだけであった。

「ウェッ、じらいじぃ!ワイ、わるぅ無いもんんッ!」

膝を抱え込んでグスグスと泣く。

「……………。」
「………………―?」

仁王が何か言った。

「ぅえ?」

稀李が顔をあげた。

「…お前、稀李ちゅーやつを知っとらんか?」

「…稀李、?……幸村は知っとるか?」

「知らないよ。」

「白髪のにーちゃん、…幸村、知らへんて。ここの生徒なんか?直接見たことないわぁ…。」

「そうか、じゃったら質問を変えようかのぉ。自分、遠野稀李じゃろ?」

仁王は稀李の顔を両手で捉えて顔を逸らせないようにした。その行動で稀李は大きく目を見開いた。そして『?』マークを飛ばす。

「?」

「そんな顔をしても詐欺師の俺は騙されんぜよ。あの時の目じゃ、俺を玩具と見とる。正体を現せばええで?遠野稀李。」

「………クククッ。」

稀李の表情は驚いた顔から一転した。下がっていた口角が一気に吊り上り、泣いていた目は笑う。膝を抱えていた両手は仁王の頬を今、仁王にされていることと同じことをする。

「っ!?」

「キャハハハハハハッハッハハ!おめでとう!おめでとう!おめでとう!!仁王雅治!君が二人目だよ!ほぼノーヒントから私の正体を知ったのは!アーハッハッハッハ!」

「ッおまえッは!」

「挨拶をしておこう!挨拶は大切だからね!初めまして!遠山金太郎もとい遠野稀李!今後ともお見知りおきを!」

この答えにたどり着いてよかったものか。もしかしたら悪かったかもしれない。仁王さえ気づかなければ稀李から正体をばらすと言うことは無かったのだから。稀李ともこんなにも近く関わらなくて済んだのだから。

「参、ぼ……ッ!」

「柳になんてチクさせねぇぜ?ちょっとそれは困るもの!それに玩具は勝手に動いたらダメなんだよぉ?」

ニヤァと嗤う稀李。その表情に怯える仁王。幸村はこの展開をただ見ることしかできない。
この展開を傍観者、白石は奥歯をかみしめた。

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