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10


――が黒色の長さが腰のあたりまである女子だ。これで見つけることが出来る。』

「フフフフッ女子かぁ…フフ。」

見事に勘違いしてくれた。稀李は仁王のネクタイに新しく付けた盗聴器から柳のその言葉を聞き判断した。

「あ、オーイ白石ぃ!」

稀李の目の前を白石が歩いていた。

「ん?なんや………て…どしたんやの恰好!?」

白石が振り向いて発した言葉。これが正論である。

「すごくなぁい?このヅラ、本物みたいでしょ!?」

「…せやなぁ。」

そう、稀李は今女装をしているのだ。メイクもして、勿論スカートも履いて、どっからどう見ても女子だ。金太郎だとは金太郎としての声を聴かなければ誰も気づかないだろう。

「クラスに演劇部の子がいてさぁ、ちょっとでいいからさせて!って言われて女装してみた!」

「まぁ、女装…なんよな。…まさか、その格好で校内練り歩いたんか?」

「そう!仁王と接触してきた!んで一触即発?してきちゃった。んんーっ楽しかった!」

「なんやて!?」

「大丈夫だってちゃんと声も甲高くしたし。バレてないバレてない。」

「そういう意味やない!俺もそのシーンに立ち合いたかった!なんでそないに楽しそうなこと独り占めするん!?」

「あぁ、大丈夫。撮った。最近カメラを忍ばせて歩くのが癖になっちゃってさぁ。」

「流石、稀李や。」

「ありがと。
じゃ、また後で、これ着替えてこなきゃだし。」

「おう、行ってき。」

稀李はクラスに戻って着替えた。その後白石と合流して、誰も居ないことを確認してまた幸村を手当てしに行った。
幸村は心底驚いた顔をしていたが稀李が「壊れる前に修理することが長持ちさせる秘訣なんだよ。」と言ったため色々と複雑な気持ちになったようだ。それでも相手にされることが嬉しい幸村。少し顔を綻ばせた。


そんな二人の様子を見ていた白石が抱いた感情は、 面白くない。

この感情は、何の感情なのか。二人にとっての玩具のはずの幸村を独り占めされているからだろうか。
もやもやと考え込む白石。

「ねぇ!白石、君もそう思うでしょ?」

「………え、あ…せやなぁ。」

全然稀李の話を聞いていなかった。聞いていなかったのに、適当に答えてしまった。それが運のつき。

「だよね!やっぱ白石分かってるぅ!ってことでこれから物語に関わっていこうか!白石はあちら側。私は幸村クン側で当分を過ごすよ。」

「…へ、や……もっぺん言ってくれへん?」

「だーかーらぁ、これから物語に参加するにあたってどちら側で参加するべきか、それを決めたんだよぉ。で、私が幸村クン側で、白石が柳とかそっち側。なんか異論ある?」

「え、え…や、別に無いんやけど……。」

「ならいいね。幸村クンはもちろん異論、ないよね?」

「ない。」

「じゃ、けってぇい。嗚呼!傍観も楽しかった!これからは存分に被害者ヅラしていくぜぇ?クスクスクスクスッここの生徒は金太郎の演技でどのくらいの人が気づくかなぁ?楽しみだなぁ、楽しみだなぁ!」

「………………。」

楽しみだなぁと言っている稀李はまるで子供の様。敵対している人にはとても冷たい大人に見える。白石は惹かれていないと言ったら嘘になる感情を抱いていた。それが妥当だろう。自分と同等の価値を持った人がすぐ近くに居るのに、惹かれない方がおかしい。

金太郎は男だが稀李は女だ。

何の問題があろうか?
何もないだろう。


だから、盗られたら取り返して、
盗り返したら二度と盗まれないように、
教えて、おとして、上がれないように、

「…仕掛けても、ええよな?」

「ん?なんか言った?」

「いや?なんも言うてへんで。ただ…楽しみやなぁって。」

「だよねぇ!アハハハハハハ!」

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