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女の様な甲高い声がイヤホンから響いてくる。 柳を始めとする三人はその声に恐怖を抱く、 抱いて身構える。 稀李は近くに居ないと言うのに。 「……誰だ?」 『えー?それ聞いちゃうのぉ?分かったって何にも面白くないじゃーん。柳ぃ、君の思考にはプラスな存在にならないのが、私だよぉ?』 「俺の思考にプラスになるかならないかは俺が自分で決める。そちでの勝手な判断をするな。」 『親切心で教えてあげるって言うのにぃ、ざぁんねん。でも君が良いなら教えてあげる。何?何が聞きたい?なぁんでも答えてあげるよぉ?』 「…君は、誰だ?」 『遠野稀李だよぉ?』 「偽名の確率88%。」 『何故?』 「そんな名前の生徒この学校には存在しない。」 『遠野稀李というモノは存在してる。現に私はここで話しているし、私の声は君に届いている。私の存在を否定するな柳蓮二。自称データマン。偽名でも何でもいいじゃない。君が私の正体を突き止めればいい話でしょ?』 「…そうだな。自称存在しているモノ。」 「待って下さいっすよ。柳先輩。俺、こいつに聞きたいことがあるんすけど。」 赤也が柳に突っかかる。 「焦るな赤也。俺も聞きたいことはまだある。」 『何かなぁ?君たちの声は皆聞こえてるから勝手に喋っちゃってぇ。』 「何故お前はこいつの味方をしている?」 『わぁお、もうそんな核心突いたこと聞いちゃう?えっとねー、幸村クンは私の玩具だからぁ!』 「玩具…だと?」 『そうそう玩具ぁ!君たちが捨てた玩具を私は拾って私の所有物にしたってことぉ!』 「ッ!?人を――」 『物の様に扱うとはたるんどる!ってかぁ?』 「「「ッ!?」」」 『キャハハハ!思わず声を失ったぁ?セリフ先に取られて驚いちゃった?畏怖した?戦いた?そうだよねぇ。君達は私の事をひっとつも知らないのに、私が一方的に君たちのこと知ってるんだもんねぇ!でも柳ぃ、君がいつもしてることだよねぇ!』 「なぁお前、俺らをバカにすんのもいい加減にしろよ!出てこいこの野郎!部長なんかの味方をしてる気ちがい野郎が!」 稀李の態度に痺れを切らした赤也が噛み付いてくる。 『…ハァ?お前ら私にそんな口のきき方してんじゃねーよ。お前らの今後は私の手に平にあんだよ。分かってねーならそのままでいいよ。理解しないならそのままでいいさ。けどな、納得してなくてもお前らの最後はサイテーなモノしか約束されてねぇんだよ。』 「何様のつもりだ!」 『稀李様のつもりだ。いいか?今回幸村クンに言わせた台詞は私からの宣戦布告だ。柳は私の正体を暴くところから始めればいいよ!その後に真実でも調べてみれば?そして自滅しろ。』 「真実だと?」 『そう真実!真実なんて誰でも分りきることだけど、此処の人達は誰も分かって無いらしい!バッッカじゃないの!?キャハハハハハハハハ――グシャッ 柳が持っていたイヤホンを握りつぶし、通話は終了した。彼らの耳には稀李の笑い声がこびりついた。 「…すまない。思わず手がかりを潰してしまった。」 「しょうがないっすよ。俺たちをバカにした笑いを聞いて平気な方がおかしいっす。」 「ふむ…俺たちをあれだけバカにしたんだ。少し本気を出さしてもらうか。」 「蓮二が本気を出すか…だったらもう俺が手を下すまでも無いだろう。」 「わー!柳先輩怖ッ!」 「赤也が怖がらなくてもいいだろう。精市、ソイツに会うのなら言っておけ、お前の味方をしたのが運のつきだと。」 「…………。」 幸村はこの場から離れる絶好の機会だと思って立ち上がる。 「ちょっと待って下さいっすよ。さっきの奴の腹いせに殴らせてくれねぇっすかね?」 赤也は幸村を逃がすわけがなく、去り際の幸村の腹部に拳をぶつけた。 幸村はやっぱりか、と言う感じて甘んじて受けた。幸村自身は全く悪くないのに、尻拭いだ。 グシャ――― 「……あーぁ、壊されちゃった。高かったのになぁ…。」 「……あー、笑うた。もうあっちの音声聞けへんのか?」 「まさか、壊されたのはこっちの音声があっちに聞こえる音声だけ。あっちの声を拾う機械は壊されてないよ。」 「用意周到と言うべきか、なんと言うべきか。流石やなぁ稀李。」 「ま、ね。今のところの一番のお気に入りの玩具は幸村だからね。扱いは最高級だよ!」 「………ふーん。」 『――イツに会うのなら言っておけ、お前の味方をしたのが運のつきだと。』 「…クスクスクス、はぁい!心得ましたでございまぁす。お前らも虐めって言う愚かな行為をしたことを後悔すればいいよ!そして私がそれを遊びと認定したことが運のつきだったよ。さぁ、最後まで敵としていてくれよ?」 |
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