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ついに登校する事となった朝、二人は寄り添うように登校した。稀李は怯えるように白石にくっついている。周りからの目線はとても心地いいものだった。混乱と罪悪感と、その他諸々人間の弱く醜い感情が周りの人からの視線で読み取ることができた。周りの人達の感情の混乱は大変なものだろう。なにせ自分達は無実の人物をあれだけ虐めてきたのだから。 謝ってくる人た達もいたが白石はそれらを上手に避け二人は保健室へと向かった。まだ病み上がりで精神状態も不安定ということで保健室登校だ。 保健室には先生が居たが、出て行ってもいいですよ?と声をかけると保健医は迷うことなく出て行った。当たり前だ。あれだけ自分も加担していたのだから合わせる顔が無い。むしろ逃げ出したいだろう。だからすぐにどこかに行った。 「フフッ面白い学校だな、ここは。」 「せやな、みんなのあの目、おもろいなぁ…。」 「どうしてみんなは気づかなかったんだろうね?」 「それはあれや、皆が虐めとくから自分も参加しとく。皆やってるからそれが正しい。間違いなんてない。多数決でも多い方が可決、正義や。そんなもんやろ。」 「真理だね。確かに多数決だ。民主主義はこれだから有耶無耶になって、いいことには繋がらないんだ。」 「だからと言って軍国主義もいややで?」 「ある意味でそちらの方が合理的ではあるけれど、国に縛られるのは厄介だ。さぁ白石、賭けをしよう。」 「…なんや?突然。」 「四天宝寺で最後の賭け事だ。謙也が私達の本性を知っての第一声はどんなものか。それを予想しよう。」 「そんなん賭けにならんやろ。」 「やっぱり分り易過ぎるか。」 「どうせあいつは――。」 「「騙しとったんか?」」 「―――って言うでしょうね。」 間違いない。 「ホンマ、単純な奴は可愛げが有るんだか無いんだか…。」 「両方でしょ。」 「やな。」 「じゃ早速、今日の昼休み部室に来るように連絡してよ。テニス部部長さん。」 「嫌味なやっちゃなー。」 白石はブツブツ言いながらもメールで連絡をする。返信は要らない。 「楽しみだ。」 「同じく。」 4時間目の途中、二人は保健室を抜け出し、部室へと移動。 「久しぶりだね。」 「せやな。」 「ここで自殺したっていうのにその痕跡が一個も無いのは悲しいな。」 「リスカの方がよかっんかな?」 血の海になって良かったかもな、と。 「んー…でも痕残るじゃん。お嫁に行けない。」 「稀李は今、金ちゃんやろ。男子やで。」 「あ、そっか。」 「まぁ安心し、いざとなったら俺が貰うたる。」 「いや、私今男だし。」 「スウェーデンでも行こか?それともアメリカ?」 「ハハッ良いよ、別に。」 どうでも。 キーンコーンカーンコーン――。 「嗚呼、チャイムが鳴った。」 「そろそろやな。」 「待ちに待った物語の終焉ですね。」 「待ち遠しかった。」 「では最終章、四天宝寺の失墜始まり始まりー。」 |
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