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14


入ってきた彼らが稀李達に向かって横一列に並ぶ。
いったいこれから何をするんだろう?と態とらしく首を傾げてやる。いや、それよりも怯えたほうが楽しいだろうか。何をどう動けば一番愉しい事が始まるのだろうか。
これから彼らが予想はついている。これから頭を下げるんだろう?謝罪をして許して貰いたいんだろう?
けれどそんなハッピーエンドの物語でよく見かけるような事はさせないよ。

「白石…金ちゃん……ホンマ――。」

「「「「すま―「ぃゃ…や、っいややいやや、怖いっ白石ぃいややいややまたワイ悪口言われるん?いややっ。」

言い終える前に稀李が狂ったように言葉を吐いた。そしてそのセリフに似合うように頭を乱暴に掻き毟り始めた。精神不安定を前面に押し出した。

「いややぁっ白石、白石白石、あっあ、ワイはっ…何もしとらん悪ぅないんやろ?なぁなぁななんで皆分かってくれへんの?」

続けて稀李は椅子から乱暴に立ち、白石が寝ているベッドのすぐ横でしゃがみ込む。身を小さくまとめていつも暴力を振るわれる時にとる態勢を稀李は謙也達に見せつけた。謙也達はその稀李の痛々しい姿を見て言葉の次を紡げなくなっていた。

「もう、もういやや、白石と一緒に逃げれたって終わったって思ったのに…っもう、殴らんといてっ、もう痛いんはいややぁっぁあぁ。」

「金ちゃん。落着き…。ほら、おいで。」

声をかけられた稀李は顔を上げ、白石のベッドに腰を下ろし上半身を白石の体にもたれさせた。不安そうに白石の服の裾を握っている。

「白石白石ぃっぅっふ、ぇ…。」

稀李は顔を白石の胸に押し当て声を殺しながら泣く。

「大丈夫や、大丈夫。俺が守ったる。」

「うんっ。」

白石は怯える稀李をあやす様にポンポンと背中を叩いてやる。

「ほら眠り?今日は検査ばっかで疲れたやろ?」

「うん…っ―――――――スゥッ…。」

心地のいいリズムを受け稀李は落ち着き、白石に身を任せて眠りについたようだった。

「で、謙也何の用や。謙也だけやない。お前ら全員や、何しにここに来たん。」

先程の稀李に向けていた慈愛に満ちた表情は何処に行ったことやら、白石の今の顔は睨みつけるよなものだった。その凍てつく視線を彼らにぶつけた。そんな表情に圧倒されながらも謙也達は自分たちの目的を伝えようと言葉を紡ぐ。

「俺らは――「分かっとる。謝りに来たんやろ?」

「…せやからホンマ――「今、謝らんといてくれる?」

二度も台詞を遮り白石はより目の鋭さを増していく。

「なんでっ…。」

「今謝れても俺はお前らを絶対に許せへん。許せる訳がないやろ。俺らは自殺して、やっと自分らから解放されたと思ったのに、目の前にいけしゃあしゃあ出て来よってから。こっちの身にもなってみぃや馬鹿共が。金ちゃんをこないに怯えさせて。そんなんも分からんかったんか。」

「っ……。」

「出てけ、早よ…出て行き。」

白石は入り口を静かに指差す。
謙也達はそれ以上無駄な足掻きはせず、大人しく出て行った。最後に出て行ったのは財前。出ていく間際、財前は病室内に振り返った。
白石と目が合う。そして白石が財前に向かって笑みを浮かべた。笑みを作ったまま手を握り親指を立て、それで空を切らせた。どうやら一人で戻ってこい、と言うジェスチャーを行ったようだ。財前はその動作を読み取り顔を青ざめさせた後、病室を足早に出ていった。

「っ!?」

財前も出て行き、再び二人きりとなった稀李と白石。稀李が上体を起こし、座っていた椅子へと戻った。

「最っ高、とってもいい夢気分!」

「せやなぁ!謙也ら最高で最上な顔しとったな!」

「フフッ長いこと耐えてきたかいがあったというものだよ。」

「ホンマこの時のために、俺らは耐えたんやもんな。」

「そうだよ。…そうだ。私はひとつ君に物申したい。なんで君は取り乱さなかった!私だけとか恥ずかしかったじゃない。」

「ええ演技やったで?それに俺はちゃんと謙也らを拒否してたからええやろ。結果的には同じや。ちゅーか寝たふりて俺の方に顔を向けてから…笑っとったんやろ。」

「あら、バレてた。もう我慢できなくてね!顔をいい感じに隠せて良かった!アハハ!」


「……失礼します。」

二人が談笑していると、言われた通り一人で戻ってきた財前が控えめに入室してきた。二人は傍観者を快く出迎えた。

「さて、傍観者…楽しかったかな?」

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