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13


稀李が目を覚ますと白い天井だった。部室ではない。病院だろう。予定通り誰かに発見されて搬送されたのだろう。
個室ではなく、カーテンで仕切られた先に誰か居るようだった。稀李は確認してやろうと思い、軽く寝返りをうつと全身がボキボキっと鳴った。同じ体勢で長い時間動いていなかったからだろう。体が軋んだ。

「イッタァ…。」

思わず声を上げてしまった。すると隣とを隔てていたカーテンが誰かの手で開けられる。

「おはようさん稀李。」

「…はよ。」

隣には白石が居てバナナを食べていた。どうやらバナナは両親がお見舞いの品として持ってきた物らしい。

「白石はいつ気が付いた?つか今あれから何日?」

「先に日付から言うとあの日から三日が過ぎて今は午後5時。俺は今日の朝、気が付いた。」

「そっか…あー…頭痛い。」

「後遺症や。俺も頭がクソ痛い。あ、さっきナースコール鳴らしたから看護師さん来ると思うで。」

「あー了解。」

白石の言う通り、程なくして看護師がやってきた。簡単にバイタルサインを測られて、詳しい検査は明日することとなった。取り合えず今日は絶対安静。

「……暇だ。白石なんか面白いこと言って。」

「なんやそのむちゃぶり勘弁してや。あ、そういや俺らの誤解はその日に解けたそうやで。」

「へー、やっぱPTA会長に頼んだのは正解だったね。…そうだ謙也達が来たらどうする?満面の笑みで迎える?それとも拒絶する?」

「どっちも捨てがたいな…病院にお見舞いに来たら拒絶して、その他は満面の笑みから突き落とそうか。」

「ナイス発想力。つまりは謙也達がお見舞いに来たら一番美味しいことになるんだね。」

「せや、まぁあの謙也のことや。来るやろ。俺らが目ぇ覚ましたことはどうせ親経由ですぐ知ることになるしな。」

「さっさと来ればいいのに。今すぐ。暇だから。」

「速くて明日やない?もう遅いし平日やしな。」

「…そうだね。スピードスターの速さを信じとくか。」

次の日稀李は検査だ、なんだと午前中は忙しかった。解放されたのは午後になってから。

「あー、疲れた。」

そう言いながら白石のベッドの空間にある椅子にドカッと座る。白石はベッドをギャッジアップして暇を持て余していた。そしてこれから二人で雑談でもしようと意識を向けた。

「お疲れさん、俺は昨日済ませた。」

「…謙也とかは?」

「まだや。」

「間に合ったー。」

コンコン、と病室の扉がノックされた。そして病室の扉が開き、視線を向けると白石の母親が居た。

「どうした?オカン。」

「お見舞いしたいって子が来とるんやけど…どうする?」

きっと謙也達だろう。
ついに来た。
白石はにやけてしまいそうになる顔を引き締め、稀李と顔を見合わせる。少々怯えるそぶりをしながら唇をギュゥッと噛む。

「…ええで?…通してや?」

「ホンマ、無理せんといてや?あないな目に逢っとるんやから、無理して会わんでも…。」

「オカン、心配してくれてありがとうな。けど、やっぱり話がしたいんや。」

「…分かった…それじゃ母さん今日は帰るで。明日、また来るから。」

「分かった。」

母親を見送り少しの間が出来る。入ってこない御見舞客。
いい加減、退屈なんですけど。そう思っていると意を決したかのように謙也が入ってきた。謙也の他にもテニス部レギュラー陣。もちろん財前も、暗い顔をして病室に入ってきた。


最終章を始めよう。


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