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「そういやぁ、長く光に構っとって忘れかけよったけど、原作沿い派ってなんのことやねん。」

「アラララ、誤魔化すことが出来なかったか。」

稀李はポロポロと前世のことを仄めかしていたが詳しく話す気などなく、誤魔化してあやふやにしてやろうと企んでいた。しかしそれは通用せず、話が一段落した際白石の方から指摘を受けてしまった。

「誤魔化されるわけないやろ。俺は前から自分の正体が気になっとんやからこんな尻尾出したチャンス逃すわけないやろ。」

「…そーですね。仕方ないから答えてあげよう。」

「そーやなぁ、稀李の前世の記憶は明細に覚えとんか?」

「もちろん。昨日のことの様に、私の死に際の状況教えてあげようか?」

「いや、遠慮しとく。そこまで俺はデリカシーのない人間になったつもりはないわ。…でも何歳で死んでもうたんや?さっき光のことガキって呼んどったが…。」

「女性に年齢を聞くほうがデリカシーがないと思うよ?少年。義務教育は終わってたって言っとく。」

「俺よりも年上かいな。」

「当たり前。精神年齢ではもっと高いよ?金太郎として過ごしていた時間があるからね。前世から記憶を引き継いてんだ。精神年齢はリセットされないし。」

「そうやなぁ…………ぁー…。」

「…何?もう質問終り?」

「…いや、最後にもう一個。稀李は…もしかして生まれ変わる前から俺らの存在知っとった?」

先程の他愛の無い質問をしている感じではなかった。白石は稀李に、より真剣な目で質問してきた。
稀李はやっぱり気付いていたと言う気持ちと、ここまで話してしまったからさっさと事の顛末を話して白石の反応を見てみたいと言う気持ちでいっぱいになった。白石の質問を心待ちにしていた風に満面の笑みで返答した。

「……知ってた。」

「それは…何で?」

「漫画で、読んだ。」

「漫画?」

「そう、漫画。聞きたい?」

「……聞きたい。」

「私が今年の全国大会の結果も知ってると言っても?」

「それなら…なおさらや。今更この学校が全国大会優勝できるとは思っとらん。部活中は俺を殴るので忙しそうやからな。」

「良い判断だね。教えてあげるよ。私がなんで君たちを知っているか。『テニスの王子様』の存在を教えてあげるよ。」

この世界で言う週刊少年ジャンピの人気連載漫画、今はスキュエアジャンピにて連載中。主人公は青春学園中等部一年、越前リョーマ。四天宝寺は全国大会で主人公校の青学と準決勝と当たって負ける。

「簡略にいうとこんな感じ、どう?ショック?ベスト4で。」

「いや、別に。俺は個人的には勝てたんやろ?」

「うん、あの天才不二周助にね。」

「やったらええわ。そんな試合結果よりも俺は気になることがるねん。この俺の境遇は書かれてあったんか?」

「全然?むしろパーフェクトな白石蔵之介が虐めに遇うわけなんてないんだよ。だからびっくりー。」

「ふーん。やったらもうその原作沿いなんて無視してもええんとちゃうか?」

「あー…まぁ、確かに、ね。」

確かにこの世界はパラレルワールドと言うなら白石のこの境遇にも納得がいく。さらにこの先はまだ決まっていない未来だから稀李の意思でどうでもできる。もちろん白石も思う通りに行動すればいいと思う。

「でも、まだ白い俺でいこか。」

「え?なんで?」

いっそのこと、黒い面を前面に押し出して原作から離れてしまおうと思案している稀李に対して白石はまだ白いままで行くと宣言をした。

「稀李の考えを聞いておもろいと思うたからや。」

「へー、君が意見を変えるなんてね。」

腹黒いから自分の意見にまっしぐらかと思ったけど。

「面白い思うたら面白い方にした方がええやん?柔軟な考えしとらんと、謙也らみたいになってまうで。」

「それは…勘弁していただきたいね。」

「それに、俺が無実っちゅー証拠を集めんとな。」

「そうだね、後はあいつらの制裁を記録して後悔してもらおうかな?」

「怖いなー稀李は。」

「君も十分怖いんじゃないの?謙也達…いや、傍観者にとってはね。」

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