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08


「え…?」

二人の味方になる。そう回答しようと思った矢先、稀李に遮られた。

「そんな答え私が望んでるものじゃないー。むしろ一番選んじゃダメな選択肢ぃ。どーしてこうも期待を裏切るのぉ?」

「や、やったら…何を選べば、」

「それは自分で考えてよ。私を満足させる答えは私しか知らないのだけれどもね!…ねぇ?因みに聞いといてあげるよ。さっきの答え、なんで選んだの?」

「それは…部長は何も悪うなくて――」

「それは違うやろ。自分は自分の身を守るためにこっち側に来ようとしたんやろ。」

「っ……。」

バレた。自分の考えなんてお見通しらしい。

「ビンゴっ、…それはそうだよねー。こんな腹黒い白石と敵対しようとは思わないもんねー。」

「稀李、自分も充ーっ分腹黒いで。」

「あら、そうだった。腹黒ついでに光をイジメてやろう。」

「じゃ、俺見とくわ。」

「っ!?」

稀李がぴょんと椅子から飛び降り、財前の元へ。財前は逃げようと腰を浮かせるがそれよりも先に稀李に捕まってしまった。そのままベッドへと倒れ込む。覆いかぶさるように稀李は財前の動きを制限する。

「なー…ぁ?光は、白石に暴力振るってた時どう思ってた?ん?私が当ててあげようか?
そーだなぁ、君は……気持ちよかっただろ。悪者白石蔵之介を成敗して、悪者をやっつけて、ヒーロー気取って、どこの戦隊モノですか?白石をさぁ…別に抵抗してる訳でもない白石を殴って蹴って罵って、それがそんなに楽しかった?……楽しいよねぇ!それはもう相手の言い分なんか聞く暇がないくらい快楽が連なってくるよね。何とも言い難い優越感、気持ちいいよねぇ!でないと無抵抗な人間をフルボッコにはできないもんねぇ?ましては先輩を、尊敬すべき部長様を!え?白石を始めから理由も聞かず訳も分からず雰囲気にのまれて殴ってたって?アレアレ?可笑しいな、小学校の時習いませんでしたかぁ?人の話をちゃんと聞きましょうって、あっれー?私は知ってろよ?何で何で?光の方がこの世界では年上なのに!おっかしーの!ママのお腹の中からやり直したらどうですかぁ?
ん?泣いてるの?アラー泣いてるの!若いねぇ。その泣き顔、私にしっかり見せてよ。見るの、だぁい好きなんだ。」

「っつ……。」

泣き顔を見せまいと両手で顔を隠そうとする。が、稀李は財前の両手を片手で掴み財前の頭上で押さえつける。薄ら笑いを浮かべながら少しずつ、少しずつ顔を近づけていく。
稀李の力で押さえつけられてはもう、動けない。動くところは頭が左右に動くだけ。

自分より年下なのに、自分より聡明で…簡単に自分の心の中を暴いてきて、
自分より小さいのに、自分を拘束していて、動けなくて、

「ぁ…あっあ……ッ。」

「んー…稀李に光。なんかその体勢エロいで。どっかのAV見とるようやわ。男同士なんが残念やけどな。」

見ていた白石が稀李によって重く形成されていた空気をぶっ壊した。

「うん、知ってる。ワザとやってた。」

「やろうな。」

気分も削がれた様で、稀李は財前の上から降りる。

「さて、君の心の中を推理してみてどうやらそれは図星だったようだね。あーぁ、ありきたりな理由でつまんないのーっと。ツマンナイのだーいーきーらーいー!」

「まぁまぁ、これからの行動をこっち好みで動いて貰ったらええやん。」

「当たり前だよ。始めからそのつもりさ、でないと私の正体なんて教え無いよ。」

「はー、やったら始めから光には選択肢なんて無かったんや?」

「んー?あったよ?自分の意志でそれをするか私たちに命令されて行動するか、ほら選択肢有った。」

「ハハハッ無いに等しいやん。」

「まぁ、どうでもいいさ。」

白石との会話を中断し、財前の方を向く。財前はまだ放心状態でベットの上に倒れている。

「さて財前光君。君にはこれから私が一番やりたかった傍観者の役目をあげるよ。羨ましいなぁ、羨ましいなぁ。これから頑張って、ネ?君はこれから見てるだけの、―――卑怯者に君は成り下がるんだよ。」

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