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簡単な挨拶をして柳生は第3コートへ向かった。 そこには既に滝が居て成実が視線を向けると、滝は軽く手を振ってきた。成実はそれに対し振り返し、視線を手元のボードに移した。 「フフ、やっと落ち着いて話せるね成実。」 隣には本部と称した机と椅子がセットしてある所の椅子に座りニコニコ笑っている幸村が一人。 「そうですね幸村君。今、紫木さんと玖城さんにはどの様な指示を?」 「紫木さんには一番端のあのコートの審判を任せてあるよ。そっちのマネには全体を見渡してサボっている人が居ないかの監視兼、コート整備だよ。」 「まぁ、ナイス指示ですね。」 成実と話すため紫木を遠ざけ、玖城にはナイス立ち位置をプレゼント。流石、色んな意味で成実をよく分かっている主将。成実のやりたいことを把握している。 「まぁね。今のターゲットは彼女でしょ?」 「えぇ。何でもこの練習試合中に私の本性を暴くとか何とか…。」 「へぇ…本性ってどこまで?」 「この私が本性を暴かれるようなヘマすると思いまして?」 「アハハ、今のは失言だったかな?で、その妙な他人行儀の口調、いつ直るの?」 「残念ながら私のテリトリーは氷帝学園になってしまいましたので、立海でフランクになることは…無いですね。露見すると後が面倒ですし。」 「へぇ、バレないといいんだ。じゃあ、今戻ってよ。何のために滝君を試合に入れたと思ってるの?」 「………。」 「ま、とりあえず座りなよ。」 幸村の隣にあった空席に成実は腰をかけることになる。そして小声で幸村に話を始めた。 「…ハアァァァ…ゆっきーナイス…ナイスアシストッ!」 「どういたしまして。窮屈そうだね。」 「全くだ。特に顔馴染みでしかないお前らに外面見せないといけないなんてな。苦痛でしかねぇよ。」 「こっちとしては面白かったよ。」 「クソ…だからマサはセクハラかましてきたんだな…!」 「だろうね。仁王は全力で楽しむ奴だからね。でも滝君が潰してくれたでしょ、大事なところ含めて。」 「まぁな。」 「それに、俺達にとってはその外面が新鮮だからね。良い物を見せてもらったよ。」 「俺の演技の希少価値!あ、そう言えばゲンゲンも心なしかテンションが高かったような?」 「あぁ、あれはただ単にテンションが珍しく上がったんだよ。ホラ、最近舞台上がってないでしょ?」 「まぁ、近々上がる予定はあるけどな。」 「その時はまた観に行くよ。」 「おう、魅せてやんよ!チケットはいつも通りゆっきーとゲンゲンとレンレンとマサとピロシとジャコーとぶーちゃんとで良いのか?」 「あ、今回から赤也もよろしく。」 「え?赤ちゃんも?赤ちゃんすぐ寝ちゃうとか言って去年一回も来なかったじゃん。」 「今年からは二年だから寝ずに観るんだって。」 「成長したなぁ赤ちゃん…。このあだ名も変えるべきかな…?」 悪意を微妙に込めたあだ名。 自分の演技を見た上で眠りこけるなんて顔潰しも甚だしかったからな。憎しみを込めt間違えた。哀れみを込めて赤ちゃん。 「いや、それは面白いから変えなくて良いよ。」 「え?そうか。だったら赤ちゃんで良いか…。」 「良いの良いの。そうだ。一度みんなの前で素に戻ってよ。」 「流石にそれはちょっと…。」 「俺の言うことが聞けないの?」 「まぁ…今回は叱られるのを覚悟で色々やらかしてるし。」 「ふぅん。楽しみにしとくよ。今回、あの女、成実と顔がそっくりだから悔しがる顔は見物なんだろうなぁ。」 「…あー、見せたくねぇ。が仕方ねぇか。多分帰り際、玖城は勝ち誇った顔で俺らの前に立ちはだかると思うよ。」 「そっか、だったら試合時間をまこうかな?あ、ホラ5番コート空いたよ。コールして。」 「へいへい……――コールします。」 |
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