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「おまんは…氷帝の……ぐっ!?」 「滝萩之介だよ。」 滝は笑みを絶やすことなく、自己紹介をしながら、的確に仁王を沈めた。うずくまる仁王。それを無表情に汚物を見るかの様な目で滝は見下ろす。 「なッなにするんじゃ…!」 「何って、成実に手を出すから去勢?」 なんて恐ろしい言葉をすんなりと滝は言うんだ。まぁ、当たり前と言ったら当たり前か。滝は自分の役割を果たしただけだから。しかし、なぜそこまで深刻な攻撃を受けなければならないのか腑に落ちない仁王は滝を睨み続けた。それを若干不憫に思った成実はしゃがみ込み、仁王の耳元でギリギリ聞こえるだろう声の大きさで言った。 「萩之介は私の幼馴染み兼悪友兼護衛ですよ。」 「あいつか…っ。」 その一言で、仁王は全てを理解した。成実は元々立海を縄張りにしていたのだ。その辺りの事情は氷帝よりも立海の方が理解は深い。当然、氷帝に成実の護衛が居ることは知っていた。しかし滝だとは知らなかっただけのこと。 「…萩之介。仁王君を跡部のご子息と真田君が休息をとっている所まで運んであげて下さい。」 これで犠牲者は四人目。罪作りな女?だな。成実。 そしてこれで面白くないのは玖城。レギュラーメンバーからチヤホヤされる成実。成実によって引っかき回される練習試合。ちょっと視点を変えればあら不思議、まるで逆ハー美少女みたぁい。まぁ、そんな視点で見てるのは玖城だけなのだが。メラメラと嫉妬心丸出しの視線。 ある人の言葉を借りるならんーエクスタシー! さっき得点稼ぎらしきものをしてしまったからこれで敵対心復活を図る。 「さぁ、玖城さん。私達マネの邪魔をする人は居なくなりました。紫木さんの所へ行ってドリンク作りを手伝いに行きましょう。」 「え、えぇ…そうね。」 成実と玖城紫木が一人でドリンクを作っている所へサポートに向かった。三人寄って、着々とドリンクが精製されていく。一応ノビている奴らにも作ってやることにする。むしろ起きないと練習試合の意味をなさないのだが…そろそろ起こしに行くか? 「跡部のご子息達、起こしに行きましょうか?そろそろ起きないと…。」 「まだ私の攻撃でノビてるなんてだらしのない男子共ですね!」 「紫木さんその様なことを言ってはいけませんよ。」 「まったくよ。藤ケ院が原因で彼等が巻き込まれるなんて、信じられないわ。私が起こし――。」 「私が行って参ります。」 玖城が起こしに行くという申し出を遮るように成実は言った。 「我が君!?何故我が君が行かなければならないのですか!?」 「それは私が原因で、紫木さんが私の大切な人だからですよ。貴女は私のためを思って行動を起こしてくださいました。ですので今回は私が貴女のためを思って行動するのです。」 「ッ我が君…なんて慈悲深いのですか!」 「貴女の行動の責任は私にあります。分かってくださいますね?玖城さん、よろしいですね?私、間違った事は言っていないと自負いたしますが…。」 「…ッ、そうね。全部藤ケ院が悪い。さっさと土下座でも何でもして彼等に詫びる事ね。」 「はい、誠心誠意謝ってきます。ではお二人とも少しお時間お借りします。」 成実は二人を残し、一人だけで跡部達が横たわっている部屋に向かった。 そう言えば本性を暴く、とか言っていたけれど…本性ってあれでいいのか?ふむ…あれでいいなら後でお萩に怒られるのを覚悟で表してやっても良いが…よし、君のその悔しがる顔が見たいから一肌色っぽく脱いでやんよ。 |
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